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竜を従え王と成る  作者: 水亥
第七章 魔法師団編
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第94話 背中

 昼休憩も終わりまた修練場へと集まる。

「ミュフィス、これを使え」

 フラム副団長の以前使っていた長杖だ。ワーグルが羨ましそうな顔をしている。

「ありがとうございます、グレース様」

 ミュフィスは長杖を受け取り観察している。

「よしっ! 刀刃君! お願いします!」

「何本でも良いですよ、互いに満足いくまで」

 刀刃は既に一軍入りしてもおかしくない力を持っている。

 Lvも98、そろそろ100を超えそうだが皆一度はここで止まるようだ。

 試合が始まる前にフラム副団長がミュフィスに何かを教えている。

 互いに距離を取る。

「では、始め!!」


「アイススピア!!」

 合図とともにミュフィスが十を超える氷槍を宙に生成する。

 そして氷槍の射出と共に自らも駆け出す!

「魔法は効きませんよ!」

 素早い斬撃で氷槍を砕き、前進する。

 刀刃は鞘からまだ抜いていない、つまり間合いに入れば居合切りが来る。

「アイスベール!!」

 長杖に氷の膜を付与する、そして互いが攻撃の間合いへと入った。

 刀刃の口角がかすかに上がったのを俺は見た。

「僕の方が早い!!」

 十八番の居合切りで仕留めるつもりだな……。

 鞘に手をかけて神速の居合切りを放つ!

 だが刀刃の腕はミュフィスの首まであと一歩のところで動かなくなっていた。

「!!」

「せあああああああああああっ!!」

 長杖が刀刃の肩を捉える!

「ッ!!」

 あまり威力は無いがそれでも一撃をくらった刀刃はよろける。

「そこまでだ!!」

 フラム副団長の掛け声により試合は終わった。

 じっと腕を見ている刀刃。

 なんだ? もしかしてあの瞬間に凍らされたのか?

 俺は近づいて刀刃の腕を掴む。

「感覚はあるか?」

「はい、さっきまでは凍りかけていましたが……」

 それが本当なら近接戦殺しだな……恐ろしい魔法だ。

 またミュフィスにフラム副団長が何かを教えている。

「いいなー、僕も指導してほしいなー」

「お前は結構観てもらっているだろ」

 ワーグルが若干拗ねながら愚痴を漏らす。

「よし! ミュフィスを一軍へと入れる!」

「!!」

「お前らは、ジノとバアルを中心に観てやれ」

「「はっ!」」

 ミュフィスが一軍入りか、早かったな。

 そしてジノとバアルか……あいつらに足りないのは何だ?

「まあ、そこはこのディアス様が見てやろう」

「久しぶりに心を読まれましたよ……心臓に悪いんで止めてくださいよ」

「読まれる方が悪い、まだまだ訓練が足りないな」

 そう言ってジノとバアルの方へ歩いていくディアス先輩。

「おーい! 俺とやるぞ!」

「はぁっ……はぁっ! お願いします!!」

「よろしく頼む」

 ジノとバアルは今試合が終わった所か。

 離れて俺は試合を観察することにする。

「じゃあ、一対二でいいから俺から一本取ってみろ」

 ……え?

「いいんですか? 舐めてると怪我しますよ?」

「面白い冗談だ、後悔させてやるよ」

 こうしてディアス先輩とジノ、バアルの二対一が始まる。

 皆が注目している。

 流石に二対一はきついだろうと、ただ、ジークさんだけはディアス先輩を見る目が違っていた。

「じゃあ行きますよ……試合! 開始!」

 刀刃の合図とともにジノとバアルが駆けだす!

 対するディアス先輩はクレイモアを地面に突き立てて動かない。

「死ね」

 ……死ね?

 舐められていることにキレているらしい、先輩に行ってはいけない言葉だが、まあディアス先輩も悪い。

 ジノの槍の間合いに入りディアス先輩の右肩目掛けて槍を放つ!

 だが……。

「な……!?」

 槍が突き刺さることは無く、寸前で素手に捕まれた。

「惜しいな、お返しだ」

 槍を引っ張り、ジノの胴体に蹴りが叩き込まれて後ろの壁まで吹き飛ばされる。

「ガハッ!!!」

「ジノ!!! てめえ!! 悪魔か!!」

 悪魔?

 ディアス先輩の形相が変わっていた。

 二つの捻じれた角が生えて牙と翼が出ている。

「ああ、俺は魔人族に種族変化した、ベルセルク様の傘下に入って昇格をしたんだ」

「!!」

「ディアスもLv.100になったか……」

 フラム副団長も驚いている。

「傘下に……てことは悪魔種か……!!」

 バアルが警戒を高めた、大丈夫なのか……? 悪魔種なんかに進化したら……。

「心配は無用だぜ、俺は精神異常に陥らない固有スキルを持っているからな」

 それは……強いなんてもんじゃない、悪魔種の桁違いの力をコントロールできるなんて……。

「どうだ? バアル、まだ俺に勝てそうか?」

「くそがっ! 諦めてたまるかよ!! 鬼の怒りよ!!」

「狂神の加護よ、俺に破壊の力を寄越せ」

 バアルが無理やり斬りかかるが……。

 ディアス先輩は素手で剣を掴み、そのまま砕いた。

「……嘘だろ!?」

「そこまでだ!!」

 勝敗は決した、ディアス先輩の圧勝だ。

「ふう……久しぶりに先輩の威厳を取り戻せたぜ」

 皆絶句している、無理もない、格が違いすぎる。

 Lv.80になってから積んできた熟練度が俺達とは差がありすぎて飛躍して強くなっている。

 俺も正直勝てるか分からないほどに……いや、今戦っても確実に負ける。

「ディアス、強くなったな」

「グレース様……俺は魔法師団の古株ですから」

 ニコっと笑うディアス先輩。

 これは面白くなってきたな……俺は武者震いした。

 追いかける背中がデカい程燃えてくるってもんだ、流石、俺が尊敬している先輩だ。

「先輩」

「なんだ? ドレイク?」

「今度俺と一対一してくださいよ」

「いいぜ? 負けても泣くなよ?」

 そう言って肩を組んでくる。

 だが目は真剣そのものだ。

「泣きませんよ、自信がついて早々悪いですが、折らせていただきます」

「はっ、可愛くない後輩だこと」

 そうして今日の訓練は自主練へと変わり、終えた俺達は解散をした。

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