第88話 休暇
星歴3020年9月。
夏が終わりかけの季節、魔法師団は長期休暇へと入った。
俺はミュフィス、ライラ、メイルを連れて実家へ帰ることにする。
それとマシュアとアイルースさんも一緒だ。
両親への手紙は結構マメに送っているが、メイルの事件は伏せておいた。
恋人を自ら手にかけたなんて手紙で言うようなことではない。
あまり心配させたくなかったから今後も伏せておくことにする。
ジノとバアルは既に昨日の夜に出発しているから今回は六人での帰省となる。
「準備できたかー?」
「はーい!」
ライラは準備が出来たみたいだ。
「メイルは―?」
「出来たっす!」
軽装でメイルが玄関前に来る。
「メイルちゃん、水着持った?」
「水着なんてもったいないし、裸でいいっすよ!」
「ダメだよ!! 絶対にダメ!! 私もう一着持ってるから今取ってくるね!!」
ライラが今度は家の中に戻っていく。
でもライラの水着か……今のメイルは結構アレが大きいから入るのか??
「楽しみっすねー! レイの御両親に会える日が来るとは!!」
「そうだな……途中でエルンにも寄るからグラドの所にも挨拶していこう」
「うん!」
ライラが戻ってきた。
「エルンに着いたら渡すからね? ちゃんと水着は着なきゃダメだよ?」
「はーい!」
そう、夏だしせっかくだからプールへ行こうと予定を立ててある。
バーセラルの街にある大きな遊泳施設は結構人気で、昔は家族でよく遊びに行っていた。
目玉は魔道具で水流を加速させて滑ることが出来るウォータースライダーだ。
かなり広くて一日、いや、三日くらい居ても飽きることは無い。
流れるプールなんかも楽しかったな……懐かしいな。
そんなことを考えているとミュフィスが大きい荷物を持ってやってきた。
「お待たせ~~、準備で疲れたよ~……」
既にヘロヘロになっている。
「よーし! エルンの街に向かいましょう!!」
「おー!!」
メイルの元気な掛け声で一同は馬車ギルドへと向かっていく。
「おーい!」
「レイ!」
馬車ギルドでマシュア達と合流する。
「今回は大人数だな」
「レナイゼル様への結婚報告を考えると緊張してきた……」
「なんとかなるって!」
そう、おめでたいことにマシュアとアイルースさんは、婚約届を王都の役所で受理され見事に結婚したのだ。
帰ったらバーセラルの結婚式場に親族を呼んで結婚式を挙げる予定だ。
ゼイルースさん達アイルースさんの親族もエルフの森から来る。
そこにはもちろん俺達も行くしフラム副団長も来る予定だ。
父さん母さんの休みも聞いて空けておいてと言っているから式には参加できるはず。
もしかしたら俺の結婚式か? と思われてそうだが俺はまだ結婚はしない。
もっと落ち着いた年になってからしたいのだ、と考えてはいるが、三人の事を思うと早めに結婚してもいいかもしれない。
「まもなく出発しまーす!!」
「行こうぜ? 馬車の中で悩みとか聞いてやるからよ?」
「助かるよ……」
そうして俺達は馬車に乗り込み、エルンの街を目指す。
三日後の夕方、無事にエルンの街に着いた俺達はグラドへと挨拶をしに行く。
「親方ー!! 帰って来たよー!!」
「おー! メイルか!!」
いつものようにテーブルに座りコーヒーを飲んでいたグラドが嬉しそうに出迎えてくれる。
「ゆっくりしていけ! おーい! ワインを持ってこい!」
ゾロゾロと仕事を止めて奥の工房内から人が出てくる。
「少しは飲んでいってくれ! 話も聞きたいしな!!」
「うん! 皆! ただいま!!」
「おかえり!」「待ってたぜ!!」「成長したんじゃないか? 特に胸が……ゴフッ!!」
一人盛大に殴られていたがまあいいだろう……。
「メイルの帰還を祝して! 乾杯!!」
「乾杯!!」
ちなみにメイルは十六歳になったので酒は飲めない……可哀想に。
「親方!! あたし強くなったんだよ?」
メイルが最近強くなったと自慢話をしている。
「へえ! 剣を習っているのか!! そりゃいいな!!」
そうこう話しているうちにあっという間に時間が過ぎて行った。
「じゃあな!! また帰るときに寄るよ!!」
「おう!! 楽しみにしているぜ!!」
午後の十時近くまでグラド達と話して俺達は帰路に就く。
酒を一滴も飲んでいないメイルが一番酔っぱらっていたのは、グラド達に会えてよほど嬉しかったんだと思う。
幸せそうなメイルを背負いながら俺も幸せな気分になる。
「メイルちゃーん! 次わたしーー!!」
「ずるーい!! その次わたしだから~~」
何故か歩けるミュフィスとライラも背負うハメになったが、順番に背負いながら宿へと帰っていった。




