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竜を従え王と成る  作者: 水亥
第七章 魔法師団編
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第86話 刀刃

 僕は水道で頭を冷やしていた。


 先輩の勝利に対して怒りをぶつけてしまった。

 子供じゃないんだから……僕自身の事が嫌になる。

「どうした? 刀刃」

 髪の毛から滴る水をタオルでふき取り先輩を見る。

「ディアス先輩……僕は……」 

 こういう時、先輩はいつも優しく話を聞いてくれる。

「僕は、ドレイク先輩が苦しんでいる時も何もできなかったんです……」

 悔しすぎて自然とこぶしに力が入った。

「まあな、俺も同じ気持ちだよ」

「せめて、先輩たちと肩を並べられるようにならなきゃ……僕は戦場にいても足を引っ張るだけ……」

「それで?」

「早く認めてもらいたくて、遂焦ってしまいました……」

「俺はお前らに十分救われているぜ?」

「え?」

 僕は何もしていない……。

「ワーグルの事も守ってくれただろ?」

「あれは……」

「十分な活躍さ、仲間を守って無事に帰還する。それ以上に何がある?」

「……」

「感謝してるぜ刀刃、これからも、今までだってそうさ。お前には仲間を守れる力がある」

「先輩……」

「誇れよ、自分の事を。それが、今のお前を強くする」

 !!

「少しは元気出たか?」

「ありがとうございます!」

 僕は泣きそうな顔を隠すため、深くお辞儀をした。

「先行ってるぜ」

 そうして先輩は修練場へと戻っていった。


「すみませんでした!!」

 修練場へ着いてすぐに皆に謝った。

「もう一本! お願いします!!」

 僕は不器用だ……こうやって一歩一歩前に進んでいくしかない。

 憧れの先輩たちに追いつけるように! 進むしかないんだ!

「私が、相手になってやろう」

 !!

「フラム副団長……!! お願いします!!!」

 僕はボコボコにされながらも、心はいつも以上に晴れ渡っていた。


「ま、参りました……!」

 もう、何本やったかも分からないほどに、僕はフラム副団長へと挑んでいた。

 結果は惨敗、以前よりは粘れるがそれでも全然かなわない。

 乱れている呼吸を整えようとするが、今日は限界のようだ。

「では、後十本行くぞ!」

 !!

 もう限界だ。

 だけど、ここで立てなかったら僕は明日の自分に満足できないだろう。

 よろよろの身体に喝を入れる。

「後二十本! お願いします!!」

「そうだ!! 死ぬまで立ち上がれ!! 死んでも一撃入れてこい!!」

「はい!!」

 周りで見ている人達は若干引いている。

 フラム副団長は容赦なく僕の利き腕を魔法で狙ってくる。

 防戦一方……握力も武器も限界だ……!!

「これを使え! 刀刃!」

 ドレイク先輩が何かを投げてくる。

 それを無意識に受け取る。

「これは……!!」

「武器が変わったくらいで! 私の魔法から逃げれると思うな!! フレイムバレット!!」

 百を超える炎の弾丸が刀刃を襲う。

「せああああああああああっ!!!」

 斬る、斬る、斬る!!!

 斬り損ねた魔法が僕の身体を焦がしていく。

「うおおおおおおおおおお!!!」

 前に! 前に出るんだ!! 今!

 爆風で押され続けていた僕は決死の覚悟で前に出る。

 ここで死んでもいい、負けてもいい、一撃入れる!!

「気合いだあああああああ!」

 もてる全ての力を振り絞って駆け出した。

 そして、フラム副団長へと斬りかかる。

 ギィイイイイイイン!!!

 激しい火花を散らして杖と刀が激突する。

「フッ」

 今、一瞬、フラム副団長が笑ったような……。

 あれ? 僕は……駄目だ……限界……。

 そこでバタリと僕は倒れた。


「おおおおお!!」「近接戦に持ち込めたな!」「よかったぞ!!!」


 皆が騒いでいるけど心臓が爆発しそうで聞こえない。

 立ち上がる気力さえも残っていない……。


「大丈夫ですか?」

 ナーシャが僕を抱えてハイポーションを飲ませてくれる。

「ゴホッ!! ゴホッ!!」

「ゆっくり呼吸してくださいね。エルダーヒール!」

 火傷の痛みが徐々に和らいでいく。

「ポーションも全部飲めたので休んでてください」

 僕は修練場の端へナーシャに運ばれていく。

 女の子に運ばれるのは結構恥ずかしいな……。


「よかったぜ、今の試合」

「ディアス先輩……」


「刀刃」

 !!

「ドレイク先輩……」

「よく、前に出れたな。フラム副団長もお前の事を褒めていた」

 僕の横へとドレイク先輩は座る。

「ありがとうございます、なんか吹っ切れちゃって……あはは」

「悪いな、さっき刀を壊してしまって」

「いえ、本気で相手してくれたんだなって嬉しいです」

「またメイルに刀を造ってもらうから、出来たらそれを使え」

「メイルさんの刀か……また凄いのが出来そうですね」

「ああ、メイルのスキルにな……」

 ドレイク先輩と鍛冶や武器の話をする。

 また楽しそうに笑う先輩を見れてよかったな……。

 あの旅から帰って来た日は誰が見ても落ち込んでいたから……。

「そうだ、今度の休み家に遊びに来いよ。メイルに剣を教えてやってくれないか?」

「是非! 楽しみにしときます!!」

 そうして僕達は色々話しをして昼休みの時間まで笑いあっていた。

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