第80話 帰還
俺達は真っ先に行くところがあった。
コンコンコン。
「おう、ドレイクじゃねえか」
「グラド……悪い……」
「まさか……!」
「メイルを死なせちまった……!! すまない!!」
ドガッ!!
俺はグラドに殴られて店の外まで吹き飛ぶ。
「てめえ!! ふざけるな!!」
「親方! 落ち着け!!」
弟子達に抑えられるグラド。
「何があったんですか……?」
前に会ったことのある獣人の男性だ。
「俺から話す、ドレイク一人を責めないでやってくれ」
「誰だ、てめえは?」
「ロディス・ブルーグだ。訳あってドレイクと一緒にいた。話を聞いてくれないか?」
「……いいだろう、おい! 全員集めてこい!」
グラドの工房の全員が集まり、ロディスが一から話をしていく。
「そうか……魔王が!!」
グラドは怒りを抑えるために必死でこぶしを握り締めていた。
工房にいた皆も同じく悔やんでいる。
「俺が……安易に戦争に加担しちまったから……」
「メイルは、死にかけの所を俺が拾って来たんだ……。目に光がねえガキだった。がむしゃらに鍛冶だけを繰り返してた頃よりも、お前と出会えてメイルは幸せだったはずだ……。そっかぁ……! あの、メイルがなあ!!」
泣き出すグラド。
「ドレイク一人を責めちまった! 俺の事も殴ってくれ!!!」
「グラドは……」
「殴ってくれなきゃ、天国でアイツは笑えねえ……頼む!!」
……俺はグラドを殴ることにした。
ドガッ!!
派手に吹き飛ぶグラド。
「親方! 大丈夫か!!?」
弟子たちも心配している。
「ああ、良いパンチだったぜ……」
額から血を流し、よろけながら立ち上がってくる。
「これでメイルの事はチャラだ。あいつも、仲間同士で言い争っている姿なんざ見たくねえはずだ」
「グラド……!!」
「ただし!!」
!!
「お前の残った家族は絶対に守れ、いいな!!」
拳を前に出してくる。
「ああ!!」
俺は痛いほどに握り締めたこぶしでグラドの拳を叩く。
「墓はエルンにも建てる。お前も墓参りはエルンに来てやってくれ」
「ありがとう……」
「さあ! お前ら! いつまでも悔やんでても仕方ねえ! メイルを超える働きをしろ!」
「おう!!」
俺とロディスは工房を後にして王都エストアへと帰還する。
エストアにある家にたどり着く。
時刻は夜だ。
ふぅ……息を整えて家に入る。
「ただいま」
「おかえりー!」「おかえり!」
ミュフィスとライラが迎えてくれる。
俺は二人の顔を見たとたんに泣き崩れてしまった。
「ミュフィス……!! ライラ……!! 俺は!!」
ライラが抱きしめてくれた。
「メイルちゃんに、何かあった?」
優しくライラは聞いてくれる・
!!
「え……嘘だよね?」
ミュフィスが驚いている。
「メイルを、死なせちまった……!!」
「うん、レイの顔を見たら分かったよ」
ライラが俺の事を強く抱きしめ、背中をさすってくれる。
「……メイルちゃん」
ミュフィスも抱きしめてくれる。
「辛かったね……でもっ! レイが生きて帰って来て安心したっ!」
ミュフィス!!
「うん、きっとメイルちゃんが守ってくれたんだよ、レイの事を」
ライラ!!
俺はミュフィスとライラへ事情を話して、皆で涙を流し、メイルの死をいたわった。
翌日。
俺はロディスと待ち合わせをしていた。
「よう、少しは元気出たか?」
「ああ、なんとかな」
「そうかよ、じゃあ俺ともお別れだな」
「いや、ロディス。言ってなかったか? あんたの弟を探すって」
「いや、お前はそれどころじゃないだろ? 弟は自分で探すさ」
「ディアス・ブルーグは俺の先輩だ。今も騎士団にいるよ」
「……は?」
「会いに行ってみるか?」
「ほ、本当にいるのか?」
「本当だよ」
「ああ! 会いに行くさ!」
「じゃあ行くか!」
ロディスと共に王城へと歩いていく。
守衛の騎士へ挨拶をしてロディスの事情を説明していると……。
「よう、随分早い帰還だな。何かあったか?」
ディアス先輩だ。
「先輩……家族を亡くしました……」
「そうか……俺も両親と兄貴を幼い頃に亡くしている。もっと頼れよ? 俺たちの事を」
「ありがとうございます」
ロディスは守衛の騎士とやり取りをしている。
「先輩の兄貴ってどんな人だったんですか?」
「そうだな……頼りになる、自慢の兄貴さ」
「そこにいるロディスみたいな?」
「ああ、ロディスっていうんだ。よく知ってるな……って」
ディアス先輩はロディスをみた。
「あ、兄貴……?」
「ん? 俺か? ってディアスなのか?」
「本当に、兄貴なのか!?」
「ディアス!! 大きくなったな!!」
抱き合う二人。
「お前が無事でよかった!!」
「兄貴も……!! 良かった!」
俺はその光景を微笑ましく見守っている。
「何でドラゴニアに?」
「話せば長くなる……」
ロディスは今までの事を話した。
「そうか……兄貴も苦労したんだな」
「お前にも苦労かけたよ……駄目な兄貴で悪いな」
ははっと笑いあう二人。
「そうか、ドレイクが連れてきてくれたのか……ありがとな、ドレイク」
「じゃあ今度焼肉奢ってくださいね?」
「ああ! 行こう! 兄貴も来るか?」
「いいのか? じゃあ三人で食いに行くか!」
そう話してロディスは用事が住んだので仕事探してくるわと言って戻っていく。
「先輩、良かったですね」
「ありがとよ、お前のおかげで家族と会えた……」
「じゃあ、訓練しに行きますか!」
「おうよ!」
俺はこのタイミングでディアス先輩の兄貴を会わせられたことができて良かった。
いつまでも悲しんでいられない。
前を向いて、メイルの分まで笑顔で生きていくんだ。




