第79話 魔王
怒りのままに城門を砕き場内へと入っていく。
「ちょっと待ちな! あんた! 変だよ!?」
「何もおかしくない、怒りを抑えれていないだけだ」
「一回戻るよ! メイルが待ってるよ!」
「俺は先に行くぞ」
ゼラの忠告を無視して俺は玉座の間の前まで辿り着いた。
場内には人や魔族もいたが非戦闘員らしく見逃しておく。
「ここか」
重たい扉を開けると奥に玉座に座った一人の男がいた。
前へと歩いていく。
「ようこそ、魔王の城へ」
俺は斧を生成する。
「へえ、やる気みたいだね。そしてその眼、竜族か?」
「だったら?」
「だったら? 決まっている! 竜を殺せば私の格も上がるというものだ!」
「お前がこの国の王で合っているか?」
「そうだ、魔王ググドア、それが私。貴様はどうだ?」
「ドレイク・ランドロック、今からてめえを殺す!!」
「そうか! 竜の加護を持つ者よ! 受けてたとう!」
魔王は何もない空間から長杖を取り出して構える。
「神竜の加護よ」
斧に加護を付与する。
「氷竜の加護よ」
魔王は長杖に魔法を付与する。
俺は駆け出した。
「まずはその余裕の態度からだ!」
「来るといい! 英雄気取りの略奪者め!」
斧と杖が激突する。
余波で壁にひびが入るほどの威力だ。
「ぐぅっ!!!」
押し負けているだと!!
一旦後ろへ飛び距離を取る。
「綺麗ごとで世の中を救えると思うなよ!!」
魔王の長杖が剣に変わる。
「綺麗ごとだと?」
「そうだ、貴様は善悪を判断によって決めている」
「どういう意味だ?」
「私達魔族は生まれ落ちた瞬間から悪だという事だ。悪事に手を染めてでも理想を叶える生き物だ」
「それで? 俺達人間は善人ばかりだとでも?」
「いいや、貴様は竜だ。暴君のように支配し、奪う権利がある」
「ならいいじゃねえか」
「だが、心のどこかでまだ自分を人族だと思っている」
!!
「一つ教えてやろう」
「何を?」
「悪魔種でもない貴様は、私にはどう足掻いても勝てないという事だ」
「はっ! だったら! 試してみろよ!!」
俺は全力で駆けだした、棒立ちの魔王目掛けて。
魔王の口元がニヤリと笑っていた。
身体が凍てつくほどのおぞましさだ。
だが! 俺はこいつをここで殺す!!
ザシュッ!!
首を確かにはねた、そう、首を……。
それは、メイルの首だった。
地面に落ちたメイルの首がゴロンと転がる。
目が合った。
その顔は涙に溢れていた。
「メ、メイル……?」
フラム様が言っていた。
誰でも命は一つしかなく、死んだ者は生き返らない。
「おい……メイル!! なんで!!?」
既に死んでいる者が話すことは無い。
「嘘だろ……お前!! メイルに何をした!!」
「クックックックック」
またあの笑みだ。
「何をした? 貴様こそ何をした? 彼女の忠告を無視して! 怒りに身を任せ一人私に挑み! 最愛の者の命を自ら奪う! 笑われに来たのか!!」
「違う! お前がメイルを!!」
「ああ、ここに連れてきたのは私だよ」
「ふざけんなよ!!」
「ふざけるな? これは戦争だ。遊びに来たなら帰るといい。少しは骨のあるやつかと期待したが、興ざめだ……」
「お前!!!」
前に駆けようとしたが身体に力が入らない。
既に戦意を削がれてしまった。
「出直してこい若造、魔王はいつでも、貴様の挑戦を受ける」
……駄目だ、このまま戦っては結果は目に見えている。
俺はメイルの遺体を抱え、玉座の間を後にした。
王城から出ると外は雨が降っていた。
「あんた!! メイルはどうしたんだい!!」
ゼラ達が駆けよってくる。
「俺が、俺が殺したんだ……」
「な! 何を馬鹿な事を!!」
「待て! ドレイク、何があったか全部話せ」
ロディスは話すように言ってくれた。
俺は正直に起きたことを全て話すことにした。
「そうかい……魔王の奴め……!!」
「お前は悪くない、いいか? 自分を責めるなよ?」
背中を叩いて励ましてくれる。
ああ、ディアス先輩みたいだ……。
俺はメイルの遺体を抱きしめながら膝から崩れて大声で泣いた。
泣いた、声が枯れるまで、メイルを抱きしめながら。
墓を建てた。
ドラゴニアまで遺体を放っておくことはできない。
最後まで俺はメイルに何もしてやれなかった。
遠く離れた地で、一人にしてしまう。
俺は……最低な男だ……。
「弔いは済んだか?」
ロディスが俺に聞いてくる。
「ああ……。さようなら、メイル。また、来るよ……」
「ドラゴニアまでは俺も着いていく。まあ、お前の金だがな、一人にしておけねえ」
「ありがとう……」
「いいって、さ、行くぞ」
最後に俺はメイルの墓をもう一度見る。
「行くよ、メイル。今までありがとう。」
俺達は一度盾の国へ行きゼラ達と別れ、ドラゴニア王国へと帰還した。




