第76話 魔王国
俺達は最果ての荒野へ行く為に、一番近い魔王国へと辿り着く。
ここには獣人とは違った魔族という、知性のある魔物が進化した種族が多く住んでいる。
「気を付けてね、魔王国は法があって無いようなものだから」
ジェイドの忠告を受けて俺達は魔王国へと入った。
そこは意外と普通の街並みだった。
「案外普通だな」
ロディスはそういう感想を抱いたようだ。
そして俺も同感だ、もっと荒れているかと思ったが他の街と比べても遜色ないくらいには発展している。
メイルは珍しい建物っすねーとキョロキョロと街を観察している。
すると足音が聞こえてくる。
……足音?
巨人族達が木材を運んでいる。
「うわー!! 大きいっすねー!!」
初めて見たな……4mはあるか?
すると鞭を持ったゴブリン族が現れる。
「遅い! のろまが!! さっさと歩け!!!」
巨人族に鞭を振るい歩かせている。
「……奴隷か」
どこに行ってもやはり暗い部分はあるようだ。
俺はメイルにあまり見るなと注意し、これからの事に着いて話始める。
「ここから王都まで行くのに二週間はかかるよ、道中魔物との戦闘は避けられないはずさ」
「そうだね……僕たちはこの街で出来るだけ準備を済ませよう」
「そうだな、じゃあ二手に別れて買い出しと行くか」
俺とメイルとロディスはゼラ達と別れて食料や必要なものを買いに行く。
なんでもヴァンに乗っていけばと思うかもしれないが、領空権を犯すと魔王が動くらしい。
そのためここからは徒歩と馬での移動となる。
もちろんヴァンはやることが無くなったので、近くの山に向かって去っていった。
さあ、この国には何が売っているのかなと店に入る。
「いらっしゃい」
アリゲーターか? ワニの頭をした店主が立っていた。
この店の野菜はくたびれていて肉は干し肉しか売っていない。
フルーツなんかも置いていない。
「仕方ないか……干し肉はいくらだ?」
店主にジロリと見られる。
「そこの獣人の雌と交換でどうだい?」
メイルはビクッとし、俺の後ろに隠れる。
「俺の女だ、侮辱するなら許さないぜ?」
「若くて良い、子供を沢山産めそうだ」
そう言ってゲラゲラ笑いだす店主。
「死にたいのか?」
「それほど困っているという事さ、特に若い雌は少なくてね」
「なんで少ないんだ?」
ロディスが店主へと質問する。
「雌なんて皆奪い合いさ、種族の繁栄には必要不可欠」
「それはどこも同じじゃないか?」
「この国では強くならなきゃメスは貰えないんだ、俺みたいな奴に雌の縁なんてないのさ」
なんか可哀想になってきたな……。
「確かに外では女性の姿が見当たらなかったな」
言われてみれば……俺も見ていない気がする。
「この国の女はどこにいるんだ?」
「魔王の城さ、街中なんかにいたら近くの雄に犯されるからね」
確かに無法地帯だな……。
「昔はもっと活気のある良い所だったんだけど、今の魔王は駄目だね」
「というと?」
「戦いしか能がないのさ、街の治安や食糧問題なんかは国民に丸投げなんだ」
「最低な国王だな……」
「せめて第二王子が魔王になってくれたら良かったのに……」
そう言ってシュンとしてしまう店主。
「なんか可哀想っすね……」
「そう思うんだったら俺の子供を産んでくれよ、朝まで可愛がるよ?」
「い、いや、遠慮しときます……」
メイルに振られるワニの店主。
「はあ、こんなに可愛い子は久しぶりに見たよ」
「どうもっす……」
「昔はよかったなあ……」
これは無限ループという奴か。
これ以上は話すこともないので干し肉をマナ金貨一枚で買って店から出た。
「なんか、深刻な問題っすね……」
「そうだな……俺から離れるなよ?」
「はい!」
メイルはピタッとくっついてくる。
「で? 兄貴、これからどうする?」
「干し肉だけではキツイな……周辺の野生動物が知りたいな」
「だったら冒険者ギルドか?」
「そうだな、行ってみるか」
とりあえず冒険者ギルドへと向かう事にする。
冒険者ギルド。
中に入ると意外と賑わっていた。
やはりどこの国でも冒険者はしぶとく生きるものだ。
受付に行き周辺の地図と情報を貰う。
「近くには鹿、野兎、鴨なんかの食べれる動物が多く生息しているらしいな」
「なんだ、結構自然豊かなんだな」
「お腹空いたっす……」
「少し早いが飯にするか」
冒険者ギルド内では肉料理が注文できたしワインなんかもある
「本当に強い奴らしか潤ってないみたいだな」
「この国じゃあLv.40以下は生きるのさえ大変だ」
「なんで40?」
「近くにアーマードファングが出るからな、魔素の濃さから観ても40は無いと挑んでも死ぬだけだ」
「アーマードファングがLv.40!? 流石、最果ての荒野に近いだけあるな……」
他の国のアーマードファングは高くてもLv.30だ。
成人男性が少し鍛えれば二人で倒せるくらいの魔物。
それがこっちじゃ三人以上は必要になる。
魔素の濃さはより強い魔物を産み出すのだ。
届いた飯を食いながら酒を飲む。
メイルはあいかわらず美味そうに食べている。
「とりあえず、明日ゼラ達と合流したときに方針を決めようか」
「賛成っす!」
「だな、ビールおかわり!」
後は夕飯を楽しみ、宿に帰ってその日は眠りについた。




