第73話 謎の男
黄金の麦。
カランカラン。
「いらしゃいってロディス!! あんた! この前の代金は!?」
「悪い! 兄貴!! 立て替えてくれないか!!」
「はぁ……早速か」
店主のお婆さんがギロリと俺の方を見る。
「すまないな、知り合いなんだ。これでこいつを許してくれないか?」
エストア白金貨1枚を渡す。
!!
「あんた! ロディスに騙されてんじゃないの!?」
「婆さん! 俺は雇ってもらっているんだ!」
「そうなのかい?」
「ああ、そういうことになるな」
あまり納得してないようだがエストア白金貨を受け取ってくれた。
「次はないよ、ロディス」
「ははっ、すみませんでした」
深く頭を下げるロディス。
ここで飯って空気でもないし場所変えるか……。
店を後にしてカレー屋を目指す。
「本当に助かった!」
「まあいいさ、ファヴニールの情報に比べたら安いもんだ」
「なあ? そんな情報知ってどうするんだ?」
「決まっている、直接会いに行く」
「なっ!! 最果ての荒野に挑む気か??」
「ああ」
「そうか……強いんだな、あんた」
「それは行ってみないとわからないな」
そんな話をしながら歩いているとカレーのいい匂いが漂ってきた。
グゥーーーーーと腹の根を鳴らすロディス。
「腹減ったぁ……」
「もう着いた。入るぞ」
店内へと足を踏み入れる。
「いらっしゃい、二名様ですか?」
「ああ、おすすめのカレーを四つ、後ビールを二つ」
「すぐにお持ちします」
入り口で注文を済ませて席につき、店内を眺める。
いい店だな……なんか落ち着く。
「それで? お前の名前は?」
水を一口飲み尋ねてみる。
「ああ、ロディス、ロディス・ブルーグだ」
……ブルーグ?
「なんで一文無しなんかに?」
「十年以上前の話だ……俺のいた東のオルフェス帝国は戦争に敗れたんだ……」
オルフェス帝国ね……聞いたことだけあるな。
「それで両親と逃げている途中、どっちも敵国の騎士に捕まった……俺は弟だけは守ろうとして、両親を見捨てて逃げ出したんだ。ディアスって言うんだけど賢い弟だったよ、弟の指示でなんとか逃げ延びたんだが途中ではぐれてな……」
ディアスか……まず間違いなく俺の知っているディアス先輩の事だろうな。
十五歳で騎士団に来たと言うがそんな背景が……。
「俺はすぐに情報を集めようとした。だけど子供を相手にしてくれる大人なんて当時の世の中にはいなかった……」
だから情報屋になったのか、はぐれた弟であるディアス先輩を探して。
「それでも必死に情報を集めているうちに色々な情報が集まったんだ、各国渡りながら情報を売って生活していた」
ふむ。
「それで一年前にこの街まで着いたが、ここでは上手くいかなくてな……諦めようとした時に、あんたと出会ったという訳だ」
良く分かった。
「俺の旅が終わったら弟探し、手伝ってやるよ」
「……え? 本当か!?」
「ああ、本当だ」
「助かる! 本当にありがとう!!」
そのタイミングでカレーが届いた。
ゴクリッ。
「食えよ? 腹減ってんだろ?」
「ああ!! いただきます!!!」
そうか……ディアス先輩の兄貴か……。
俺はなんとしても最果ての荒野から生きて帰らなくては行けなくなった。
まあ、元から死ぬつもりはないが。
「うめぇ!! 美味すぎる!!!」
泣きながらカレーとライスを頬張っているロディス。
まったく……兄弟揃って良い人達だな……。
翌日俺達は待ち合わせをしていた広場で合流する。
「よろしくっす! メイルです!!」
「ロディスだ、よろしく! メイルちゃん!!」
メイルには昨晩事情を説明している。
「よし、それで? ファヴニールについてどこまで知っているんだ?」
「神代を生き残った神の一柱、なんでもその時代の暴君だったとか……」
「暴君……」
「最果ての荒野に今はいるみたいだが……あ、そうだ、力を削がれて幼竜の姿になっているらしいんだ」
「幼竜……?」
「それでも神は神だ、気は抜かない方が良いぜ」
「ああ、そうだな」
「それで? 馬で行くのか?」
「いや? 竜で行く」
「竜?」
「まあ着いてきな」
街から出て少し離れた場所へヴァンを呼ぶ。
「どわああああああああ!!」
目の前に降りてきたヴァンにロディスはびっくりする。
「よし! 行くぞ!!」
「いやまて! 竜を操っているのか……?」
「友達なんだ」
「友達……? えーい! どうにでもなれ!!」
三人乗せてヴァンは飛び立つ。
「おおおおおおお!!!」
一気に上空にでる。
「すげえええ!! 魔導船の何倍も速いじゃねえか!!」
「凄いだろ?」
「最果ての荒野まですぐだな!!」
テンションが上がっている所を見るとやはり兄弟だなと思う。
そのまま俺達は次の目的地、ドワーフの住む盾王国へと向かう。




