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竜を従え王と成る  作者: 水亥
第六章 竜導師団編
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第72話 空旅

 俺達はヴァンの背に乗り、空の旅を楽しんでいた。

「はやーい!!」「風が気持ちいいな!」

 今日は快晴で遠くの景色までよく見える、まさに空旅日和である。


「ヴァン、何日くらいで着きそうだ?」

「うーん、ファヴニール様が住む最果ての荒野には、二週間もあれば着くよ」

「早いな!!」

「でも最果ての荒野には、僕は入れないんだ」

「え?」

「あそこは神話の時代から生きている神が住む領域、僕が入ったら殺されちゃうからね……」

「危険な場所なのか……人は住んでないのか?」

「人が住めないほどに魔素が濃いんだ。強力な魔物もそこらへんにいるしね」

「そうか……」

 俺が思っていたよりも過酷な場所らしいな。


 だったらまずは情報収集だ、近くの国で最果ての荒野に関する話を聞き込んでおいた方が良いだろう。

「じゃあ、まずは盾王国に行くか!!」

「盾王国!! 楽しみっす!!」

 目的地はドワーフが住むとされる盾王国。

 鍛冶の聖地とされていて、各国から観光客や武器、防具などを求めて様々な人たちが訪れるとされている。

 とりあえずそこに一ヵ月ほど滞在して情報収集をしよう。


 しばらく空の旅を楽しんでいるとヴァンが疲れたと言い、近くの街で休憩をとることに。

「ここはフォグレアの街だな」

「フォグレアっていうと、あのカレーが有名な街ですか?」

「そうだな、夕飯はカレーにするか」

 !!

「やったーー!!」

 跳ねて喜ぶメイル。

 取りあえず検問を超えて街の中へと入る。


 「おおー」

 なんか俺が知っている街とは違うな。

 マーケットの中を歩いていると様々な果物が売っている。

「へえ……珍しい……」

「この果物可愛い~……」

「食べてみるかい?」

「いいんですか?」

 店主のおばあさんが試食を提供してくれるらしい。

「マンゴーって言うんだ。この時期は皮まで甘くなってて美味しいよ!」

 するとフルーツを洗ってからカットしてくれる。

「ほら」

「ありがとうございます」

 メイルにも渡して二人で食べてみる。

 !!

「美味しいな」「甘くて美味しい~~!!」

「美味しいだろう?」

「お姉さん、これ二つください」

「あら、彼女さん、いい彼氏さんを持ったね! おまけでもう一つサービスするよ!」

「やったーー!!」

 エストア銀貨1枚を払う。

「向こうの魚の干物も美味しいから時間があれば見ていきな」

「ありがとうございます」

 良い買い物をした。

 メイルは早速さっき買ったフルーツに噛り付いている。

「美味しい~~!!! 口の中が幸せ……」

「あんま食べ過ぎるなよ?」

「無理かも~~」

 ふふっ、微笑ましいな。

 お勧めされた魚屋さんも見に行くか。

 少し歩いたところに干物を売っているおじいさんがいた。

「いらっしゃい」

「魚か……どれがお勧めですか?」

「このフグの干物が美味しいよ」

「フグ??」

 確か毒がある魚だったはず……。

「フグ!! 食べたいっす!!」

 メイルが喰いついた。

「ほっほ、かわいらしいお嬢さんだね。おまけもつけるよ」

「毒とかは……」

「毒袋を綺麗に切除すればフグは食べれますよ」

 そうだったのか……。


 食べてみたいな。

「じゃあフグの干物を四匹ください」

「じゃあこっちのフォグレア魚の干物はおまけね」

「フォグレア魚?」

「ここ、フォグレア川でしか取れない川魚だよ」

「へえ……」

 エストア銀貨五枚を払って干物を受け通る。

「羽振りがいいね、貴族さんかい?」

「いえ、ただの観光客ですよ」

「ここらはスリが多いからね、気を付けて」

「ありがとうございます」


 俺達は一旦宿に行くことにした。

「ふぅー! ふかふかのベッド……」

「おい、まだ寝るなよ? 夕飯食べれないぜ?」

「幸せー……」

 聞いてないな……。

「俺は情報集めに出てくるけどどうする?」

「休憩してるっすー」

 布団に顔を埋めているから声が聞こえない。

「着いてくるなら準備しろよ」

「はーい」

 動かないな……。

 まあ、こういう仕事は一人の方が都合がいい。

 俺は宿を後にしてまずは街の情報屋を探すことにした。


 さて、どこから当たるか。

 まずは冒険者ギルドだな。

 俺は冒険者ギルドを探して歩いていく。

 途中串焼きの屋台があったので注文ついでに聞いてみる。

「串焼きを一つ、それと冒険者ギルドまでの道のりが知りたい」

「ああ、それならここの通りを……」

「ありがとう」

 エストア銀貨を一枚支払い、二十分ほど歩いていくとギルドがあった。

 中に入ると酒を飲んでいる冒険者もいる。

 若干注目されているがまあいい、受付に行こう。

「氷竜ファヴニールの情報が欲しい」

「ファヴニール? すみません、存じ上げないです……」

「なら情報屋について知りたい」

「それでしたら酒場、黄金の麦にいますよ」

「ありがとう」

 チップを支払いギルドを出る。

 その光景を一人の冒険者が見ていた事に俺は気づかなかった。


 ギルドから出て黄金の麦を探して歩いていると、後ろから声を掛けられた。

「待てよ」

「何か用か?」

 振り向かずに答える。

「あんた、貴族だろ?」

「だったら、どうする?」

 俺は振り向いた。

 すると茶髪の見たことある気がする顔の青年がいた。

「どっかで会ったことあるか?」

「うーん、それ、可愛い子に言われるならまだしもね……」

 なんだこの安心感は……どこかで……。

「それで、あんた、俺を雇わないか?」

「雇う? 何で?」

「情報が欲しいんだろ? ファヴニールの」

 !!

「俺がその情報屋さ」

 情報屋……確かに嘘はついてはいなさそうだ。

 声音、目線、立ち振る舞いで大体わかる。

「それで? 雇うって?」

「もう何日も飯を食えてないんだ……頼むよ! この通り!!」

 すると男は地面に屈んで不思議な構えを取った。

 なんだ? いや、刀刃が遅刻してきた時雨を怒っている時に見たな……。

 確か土下座、だったかな?

 観察する、確かに空腹かは知らないが結構限界のようだ。

「分かった、ただ飯と宿代しか出せないぜ?」

「助かるよ!! いや、助かります!! 兄貴!!」

 そうして俺は謎の男と飯を食いに行くのであった。

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