第64話 中級ダンジョン
第一層。
静かだ……先頭を行く刀刃と時雨の息が荒い。
まだ魔物には出くわしていないが少し心配だな。
ルーカスとルミアの魔法職組も落ち着きがない。
俺達は静かに見守ることにする。
!!
「く、来るぞっ!! 戦闘用意!!」
さあ、何が来る……?
「シャアアアアアアアアッ!!」
カマキリだ、中級者殺しで有名な尋常じゃない切れ味の刃を持つカマキリ。
「時雨! 行くぞ!!」
「兄者!!」
刀刃が動こうとするが時雨がまだ準備しきれていない!!
乱れたか……。
だが初動で魔物相手に出遅れるほど怖いものはない。
勢い付いて一気に崩壊、後衛を食い荒らされるからだ。
だから刀刃は一人で駆けだす!!
「せぁああああああっ!!」
遅い!!
いつもの速度が出ていない!!
カマキリの刃に刀刃の剣が弾かれる。
必死に食らいつく刀刃。
時雨は出遅れ、刀刃との戦闘を見て更にビビって動けなくなっている。
「ルーカス! 援護を!!」
はっっと目を覚ましたルーカスが魔法を放つ。
「ロックランス!!」
岩の槍を宙に生成して発射する。
魔法行使までが早すぎる!! そんなんじゃ威力は全然だ!
カマキリもそれを見切って軽々と避ける。
「もう一回!!」
刀刃がまたルーカスに指示を出す、しかし……。
「ロックランス!!」
今度は外してしまう。
「ルーカス、もう一回だ!!」
「やってるよ!! ロックランス!!」
今度は刃で斬られる。
駄目だな……刀刃は焦りすぎている。
ルーカスを急かしても強力な援護は期待できない。
そしてなによりも相手に飲まれている。
いや、ダンジョンの雰囲気にすら飲まれている。
するとルミアが動いた。
「フレイムランス!!」
お! いいぞ、相手はこっちがビビってるのに気づいて完全に目の前の刀刃だけを殺そうとシフトしている。
そこに死角からの魔法だ、どうなる?
「ギギギィッ!!」
ルミアの放った魔法がカマキリの左刃を燃やす。
「今です!!」
ルミアの掛け声と同時に刀刃が思いっきり刀を振るう。
「ハアアアアアアアアアアアァっ!!」
カマキリの右刃を斬り飛ばす。
「ロックランス!!」
ルーカスの魔法がカマキリの頭を砕く。
「ギィイイイイイイッ!!」
カマキリは絶命した。
「はぁっ!! はぁっ!!」
「やった!! やったな刀刃!!」
「うおおおおおおおおおお!!!!」
刀刃が吠えた……珍しいな。
その声で時雨は我を取り戻す。
「兄者…………」
「目標は六十階層だ!! 行くぞ!!!」
「おう!!」
なんとか持ち直したか……それに良い空気だ。
五人は次々と進んでいく。
道中の魔物にも後れを取らなくなってきた。
十五階層での休憩中も笑いあっていたりして恐怖はだいぶ消えたらしい。
二十階層のボスの間にたどり着く。
「一応もう一度言っておく、ユニークモンスターが出た場合もお前らで最後まで戦え、いいな?」
「はい!!」
覚悟を決めて五人はボスの間へと足を踏み入れる。
ユニークモンスターは稀に出現する普通よりも強力な魔物だ。
推定Lvは95、刀刃がLv.93だから連携を駆使しないと勝てない相手だ。
「行くぞ!!」
「おう!!!」
進んでいく新人達。
俺とディアス先輩が入ろうとした時、ボスの間が急に消えた……え?
……え?
「な、なにいいいいいいいいいい!!!」
二人して盛大に驚く。
「マズいマズい!! 先輩!! どうすんの!!」
この際タメ口でも何でもいい!
「ど、どうするんだ!! こんなの聞いたことねえよ!!!」
「だーーーーっ!! 役立たずかよ!!」
「何を!!! 先輩だぞ!!!」
ぎゃあぎゃあと取っ組み合いをして騒ぐ二人。
「待つしかない」
!!
「あいつらを信じて待つしかない」
「先輩……はぁ……待ちますか」
「きっと大丈夫だ」
「そうですね……」
そう言って二人は待つことに決めた。
ボスの間。
おかしい、先輩達が着いてきていない……何かあったのか……?
「兄者!! 先輩達が!!」
皆が後ろを振り返る……!!
「扉が消えている!!」
「罠だ!! 気を付けろ!!!」
ルーカスが警戒を呼び掛ける。
「チチチチチチチチチッ」
何か聞こえる……上!?
「上だ!!!」
刀刃が叫ぶ。
!!
「あれは……エクスポイズンスパイダー……」
エクスポイズンスパイダーは国内で最も難しいとされる、王級ダンジョンの二十層ボス。
その推定Lvは100だ……。
ドレイク先輩達が以前言っていた……油断してたら死にかけたわ、あははーっと……。
魔法師団の精鋭で挑んでそれだ、僕達だけで勝てるわけがない!!
「兄者! 退却を!!」
「おい!! どうするんだ!!」
「心配するな!!」
!!
皆が後ろを振り返る。
そこには……ワーグル先輩がいた。
「僕が必ず君らを守る!! 命に代えてもだ!!!」
「ワーグル先輩っ!!!!!!!」
そう、ワーグルは最初から気になってこっそりと隠蔽を使い、着いてきていたのだ。
「まずは奴の脚を全て破壊する!! 落とすぞ!!!」
落とす……?
「ブラックホール!!!!」
宙に黒い渦が出来上がる。
すると一気に蜘蛛が引き寄せられ天井から落ちてきた!!
「来るぞ!! 総員!! 戦闘用意!!!」
「はい!!」
「行くぞ!!!!!」
決して逃げられない中で、戦いの火蓋は切られた。




