第60話 変化
星歴3020年6月。
あれから王国間の同盟は正式に結ばれた。
今やエルフの間で王都エストアは有名な観光地となりつつある。
また平和な時代が来たかとしみじみとしたいところだが……。
朝起きて鏡を見ると角が生えていた。
「……え?」
しかも二本、なんと額の上の方から二本赤い角が生えてきたのだ。
いやいやいや、何も聞いてないぞ。
そして更に……爪が赤くなってる。
ベッドには前の爪が剥がれ落ちて散らばっていた。
更に、小さい牙が二本生えていた。
遂に俺は竜へと進化するのか……いや、したのか……?
謎だがまあ困ることも特にないか、と欠伸をしながらリビングに降りていく。
「おはよー」
「おはよーって! 角生えてる!!」
ミュフィスが驚いている。
「なにぃー!! ってホントだ!!」
ライラもキッチンから飛び出してきて驚く。
「レイ! 更にかっこよくなったっすね!!」
メイルは嬉しがっている、獣人だからか?
いや、俺ももう立派な獣人だな。
「ははっ! どうやら獣人になったみたいだ」
とりあえず笑い飛ばそうとする。
「まあ、私も妖精族だからなー……」
「私もレイなら気にしないかな……本物の竜になったらちょっと怖いけど……」
「立派な尾も付いてますね!!」
バタバタとメイルがしっぽを振っている。
尾?
後ろを見てみると赤い尾が付いていた。
いつから……いや、今朝からか。
しかも竜体になっていた時の長さより長くなっている……使い勝手が良くなったな。
これからも成長していくのかな?
爪は前より明らか硬度が増している。
魔法耐性も高くなっているな……。
角はそこまで長くはない……これも成長するのか?
するとメイルが近づいてきて目をのぞき込んでくる。
「な、なんだよ?」
「竜の眼っすね」
「竜の眼?」
「かっこいいっす!!」
抱き着いてくるメイル。
「ホントだ! 眼が変わってる!」
「レイの面影はあるけど……うーん」
ライラは前の方が好きらしい……。
ミュフィスは結構興味を持っていて尾を触っている。
メイルは抱き着いてずっと匂いを嗅いでいる。
「まあ、獣人になっても変わらないしいいか」
俺は考えることを辞めた。
その後朝食を取って教会へ出かけることにした。
エストア教会。
教会へつきシスターへ挨拶をする。
そして中に入り神父さんへ挨拶をして、魔道具を起動する。
出てきたステータス紙をみてみる。
【英雄竜ジャバウォック】ドレイク・ランドロック(昇格可能)
王竜種20歳 Lv.96 固有スキル:王竜眼(竜の眼を手に入れる)、神竜の加護(一時的に莫大な力を発揮、付与する)、英雄竜召喚(ジャバウォックを召喚できる)
竜術SSS,馬術S,斧術SSS,土魔法SS,力SSS,魔力SSS,速さSS,耐久SSS
昇格可能……? ちょっとだけステータスは変わっていた。
まだLv.96なのに昇格可能とはなんだ?
試してみるか……。
「昇格の魔宝石を一つください」
「では祈りを捧げていきなさい」
「はい」
星に祈りを捧げる。
そして神父さんに寄金を渡す。
魔宝石を貰い教会を後にして、家へとまっすぐ帰る。
自室に戻った俺は昇格の魔宝石をためらいなく砕く。
ドクンッ!!
鼓動が早くなる。
身体が熱い……焼けるようだ……!!
すると一気に意識が暗闇へと吸い込まれていく。
……。
……ここは?
何もない真っ暗な空間、そこには墓が建っていた。
近づいてみる。
大きくて立派な墓だ……何か書いてある。
神歴一万年、最果ての荒野に英雄竜ジャバウォック眠る……。
最果ての荒野……? 聞いたことあるな。
確か魔王国の先にある領土で、果てしなく広い荒野が広がっているとかなんとか。
そこにジャバウォックは眠っているのか……?
神暦ってことは神々が大戦を起こした時代の事だ。
最果ての荒野に神々は住んでいたのか……?
何が起きたか気になるな。
「神代の英雄よ……」
なんだこの声?
「神代から蘇りし英雄達よ……」
蘇りし英雄?
「よくぞ試練を乗り越えました……」
試練?
「Lv.100に至ったのは星歴で二人だけ……」
Lv.100?? まだLv.96だけど……。
「いいえ、貴方の魂を見れば分かります」
魂……?
「教会の魔道具より神である私を信じなさい……」
確かに教会の魔道具は簡易的過ぎていつも不安になる。
「それで? 二人目って??」
「貴方のよく知るフラム・グレースも今朝Lv.100へと至りました……」
!!
「そうか、フラム副団長も……」
「貴方達こそ、この時代における英雄と言ってもいいでしょう……そして神代の加護を受け取るにふさわしい……」
「それで? 何に昇格できるんだ?」
「お墓を見なさい……」
「墓?」
墓を見てみると書かれている文字が変わっていた。
【神代の王竜】ドレイク・ランドロック
王竜種20歳 Lv.100 固有スキル:神竜の加護(一時的に莫大な力を発揮、付与する)、英雄竜召喚(ジャバウォックを召喚できる)、怒りの咆哮(出血状態により全ての能力が上昇する)
竜導術C,斧術C,付与術B,土魔法C,力C,魔力C,耐久C,魔法耐久C,速さC
なんか色々進化してるな。
Cスタートか、先が長そうだな……
「各国の王へと神託を言い渡しました……」
神託?
「教会の魔道具を一切廃止、神父が直接神と対話し、紙へとステータスを書くことを」
「ええ…? 今まで神父が楽してたって事?」
「仕方ありません……文明の発展とはそういうものですから」
「まあ、確かに……」
そういわれると何も言い返せない。
「では私はこれで、貴方を神代の加護が導きますように……」
「ありがとう」
……。
目覚める。
なんか重い……。
メイルが俺の上で眠っている。
そうか……遂にLv.100か……。
「メイル!」
「ふみゅう……」
これは起きなさそうだ、諦めて俺も目を閉じる。
今頃フラム副団長も昇格しているのかな、気になる。
父さん母さんにも手紙で知らせないとな、道場の先生にも。
まあ、今日ぐらいはゆっくりしてもいいか……。
メイルが上にいる暖かさが心地よく、俺はそのまま眠りについた。




