第59話 決闘
遂に決闘の日がやってくる。
俺とフラム副団長とハイルさんはヴァンに乗り、国境付近まで向かう。
俺は決闘の勝敗の心配はしていない。
ハイルさんが勝つことが既に決まり切っているからだ。
それよりもフラム副団長が心配だ。
いつもよりピリピリしているしあまり口数も多くない……。
「ハイルさん、相手は相当焦っているんでしょうか?」
「前から国が崩壊しかけてたからね……」
「エルフは数が少なく多種族から狙われやすい生き物だ。昔は他国で歩くなんてできないほどに」
「それでエルフは多種族を煙たがるようになったのさ」
「そんな背景が……」
知らなかった……エルフは偉そうなイメージしかなかったけどそういう歴史だったのか。
「他国とは手を結ばずに全て自国で賄う、今の時代には無理な話だ。優秀な若いやつはほとんど国を捨てて出て行った、私もそのうちの一人だ」
「しかもダークエルフとエルフで戦争も始めるしで、国の食料は減る一方……
今も苦しんでいるエルフは大勢いるはずだよ」
「そうなんですね……」
「だから僕は決闘に勝ったら同盟を結びたいと考えている」
「同盟……?」
「五分の同盟をね。まあ細かい話は王様同士になるけど、今よりかはましな未来になるさ」
「そうか……」
そのまま俺達は特に話さず遂に国境へ着いた。
既にエルフの兵士たちは着いているようで今ハイルさんが話している所だ。
「エルフの森代表の、ゼイルース・ディーネルだ」
「ドラゴニア王国、魔法騎士団長の、ハイル・アーツだ」
互いに握手を交わしている。
良い人そうだけどな……。
そして互いに離れる。
「それでは早速決闘に移る!!」
もう始まるのか……。
ハイルさんがゆっくりと鞘から剣を抜く。
ゼイルースさんは杖を構えている。
「では! 始め!!」
「アイスランス!!」
宙に氷の槍が五本生成され発射される。
それを剣で砕きながらゆっくりと、ゼイルースさんへ進んでいくハイルさん。
「クソッ! これはどうだ! トルネード!!」
竜巻が発生し呑み込まれるハイルさん、だが……。
「無傷だと!?? それなら……!!」
杖を構えようとするゼイルースさんだがハイルさんが飛び出し間合いに入る!
「くっ!!」
急いで防御するが杖を一刀両断される。
決まりだな……。
そのまま動けないゼイルースさんの首に剣を当てて決闘は終わった。
「勝者! ハイル・アーツ!!!」
負けたエルフ達は悔しがっている……。
「私達の完敗だ……」
「じゃあ、約束通り願いを一つ聞いて貰うよ」
「ああ……」
終わったと思うゼイルース、全員売り飛ばされる羽目になっても仕方ないなとうなだれる……。
「ドラゴニア王国と同盟を結んでくれないかな?」
「……は?」
「同盟さ、僕たちで手を取り合おうって話さ」
ざわざわとエルフ達が騒ぎ出す。
「ど、同盟ってそんな……いいのか??」
「うん、きっと国王陛下も受け入れてくれるはず」
「私たちは貴国に対して卑劣な真似をしたというのに……」
「そうだ、私は許していない」
「グレース様……」
そうだ、闇ギルドと手を結んでいたことを俺も許していない。
「何故だ? 何故卑劣な真似を……?」
「人質だ……」
!!
「人質を百人も取られた……言う事を聞くほかなかったんだ、すまなかった!!」
頭を下げるゼイルースとエルフ達。
「奴らめ……分かった、その話を信じよう」
「信じてくれるのか……?」
「同族だ、エルフは決して嘘はつかない」
「グレース様……!! ありがとうございます……!!!」
泣きながら感謝しているゼイルース。
「まだ疑問はあるが追々だ、私たちは戻って陛下に知らせよう。ゼイルース、 お前も帰って父上に伝えろ」
「は、はい!」
エルフ達はエルフの森へと帰っていく。
「帰るぞ」
「うん、そうだね」
「一件落着ですか……」
ふぅ……と息を吐くと肩の荷が下りた気がする。
「ヴァン! アミュスフィア領まで頼む!!」
「うん!」
そしてアミュスフィア領まで晴れやかな気持ちで、空の旅を楽しむのだった。




