第57話 パーティー
時刻は午後七時、馬車に揺られながらハイルさんの家へと向かう。
馬車には俺、刀刃、時雨、ミュフィス、ライラ、メイルの六人が乗っている。
「兄者! あの大きな館じゃないですか!!」
「時雨……ちょっとは落ち着いて……」
「大きいっすね!!」
「そうだな、アーツ家と言えば古くから公爵家で有名だからな」
館の前で馬車が止まる。
「やっと着いた~~!!」
ミュフィスが一番に降りていく。
「おお!! ここが騎士団長の!!」
時雨は相変わらず大きな声ではしゃいでいる。
全員降りて館内へと歩いていく。
「お待ちしておりました」
執事らしき人から挨拶を受けて中へと案内される。
男性陣はスーツで女性陣はドレスだ、ちょっとこういう場は緊張してしまう。
「こちらが会場になります」
「おおお!!!」
既に結構な人がいて、会話を楽しみながらお酒を飲んでいる。
「す、凄いな……」
俺と刀刃がハモる。
女性陣はテラスに行ってみよー! という事でテラスへと向かっていく。
残された俺と刀刃。
「で? 狙ってる子の一人くらいはいるのか?」
口から言葉が出てから気づいたが、俺はディアス先輩に似てきている。
「い、いませんよ……」
「もたもたしてると簡単に取られるぜ?」
「そうだそうだ! 男を見せろ!」
ディアス先輩だ。
「僕、恋愛とかよくわからなくて……昔から小さくて女の子にはいじめられるし……この国の女性みたいな素敵な方は剣王国にはいませんでしたから……」
ちょっと暗いな。
「まあ、焦ることもない! それで? 料理は食べたか?」
「今着いたところですよ」
「どれも美味いぜ? なんでもエストアホテルのシェフを呼んでいるとか!」
「それは気になりますね……」
ゴクリ。
「じゃあ俺はエリゼさんの所に行くからまたな!」
行ってしまった。
「やあ、楽しんでいるかい?」
!!
「ハイルさん、こんばんわ」
「こんばんわ、今日は刀刃の誕生日会でもあるんだ。主役は楽しんでいるかい?」
「パーティーって何をすればいいんですか?」
「あはは、普通に会話して料理を楽しんでくれたらそれで十分だよ」
ウィンクをしてくる。
「いつか僕とも試合しようよ。同じ剣の道に生きて来た者同士、仲良く慣れそうだ」
「はい! 是非お願いします!!」
「うん、じゃあ僕は他の人達にも声をかけてくるからまたね」
じゃあねと去っていくハイルさん。
「ハイル騎士団長と初めてあんなに話せました!!」
「そりゃよかったな」
「優しい人だったな……」
「じゃあ、ジノのとこにでも行くか」
「はい!」
向こうで楽しそうに会話しているジノに話しかける。
「よっ! ジノ!」
「お! レイ!」
「こんばんわ、ジノ先輩!」
「さっき聞いたぜ? 副団長補佐に就任したとか?」
「ああ、昨日な」
「凄いじゃねえか!」
「まあな」
そんな話をしていると執事とハイルさんが内緒話をしている姿が目に入る。
なんだ?
ここには騎士団がほぼ勢ぞろい……城にはゲルドさんがいるみたいだが問題があればマズい。
「皆、すまないが聞いてくれないか!!」
「どうしたんだ?」「なんだろ?」「サプライズ??」
ちょっとザワつく会場。
「めでたい席であまり話したくないけど、悪いニュースだ……」
会場が静まる。
「エルフの森から兵がこちらに攻めてきている」
!!
「エルフが?」「兵を起こした?」「戦争か?」
「今ゲルドたちが城内で戦に向けて準備をしている、悪いが今夜のパーティーは中止。速やかに城へ向かってくれ!!」
皆で楽しんでいたところだがこれが騎士の仕事だ。
皆一斉に会場から移動を開始する。
「レイ!」
「行くか、俺達も」
急いで城へ向かう準備をする。
エルフの森はこの国と隣接している。
後五日もあれば敵兵はアミュスフィア領へとつくだろう。
つまりこれはライラの故郷を守る防衛戦でもある。
「ライラ!」
行く前にライラへ声をかける。
「分ってるよ……覚悟はできてる」
「よし、無理はすんなよ?」
「うん!」
頭を撫でてやる。
「俺たちが守ってやるから安心しとけ」
「レイ……」
涙ぐむライラ……。
「メイル! 家は任せた!」
「レイ……」
「悪いな、行かせてくれないか?」
「ずるいです……」
メイルの顔に手を添えてキスをする。
「行ってくる」
「無事に戻ってきてください……」
「ああ!」
ミュフィスはどうだ?
「行くぞミュフィス、ライラの故郷を守るんだ」
「うん……」
「戦場にいても俺が守ってやる」
「レイ……」
「だから仲間を頼む」
「うん……うん!」
よし! 行くか!
館を出てヴァンを呼び、ハイルさんとフラム副団長を乗せて王城へ急ぎ向かう。




