第55話 決着
魔法師団第一修練場。
軽く食事をとってから俺は修練場へと向かった。
フラム副団長に呼ばれた三人は既に修練場へと集まっていた。
「お! 来たか!!」
「ちょっと飯食ってました」
「途中で吐くなよ?」
軽く身体を動かす。
「よーし! まずはお前がどれだけ斧を扱えるようになったか見てやる!」
「お願いします!」
俺はディアス先輩に指導して貰うことになった。
「じゃあ僕はワーグルの魔法を見よう」
「はい!お願いします!!」
ワーグルはジークさんに指導して貰う。
一時間ほど経った頃、フラム副団長がやってきた。
「すまないな、急用ができてな」
「いえ、それで? 今日は何を?」
ジークさんが質問する。
「単刀直入に言おう、私には何が足りない……?」
……すごく難しい質問だ。
フラム副団長は近接戦のできる魔導士、出来ないことはほぼ無いはずだ……。
「魔法の一撃が軽い……とかでしょうか?」
「ほぅ……具体的には?」
ディアス先輩が答える。
「グレース様は遠距離攻撃は手数、近接攻撃は力を好んでいるように思えます」
「合っているな……確かに私は遠距離の強い魔法を持ち合わせていない」
言われてみればそうだな……。
「では、新しい魔法が足りていないと?」
「そういう事になります」
「ミュゼラが亡くなった今、私に魔法の師はいないんだがな……」
ミュゼラじいさんか……。
「魔法開発となると広くて全力を出せるダンジョンか……」
ダンジョン……俺はやり残したことがいっぱいあるな。
「ダンジョン攻略と行くか」
!!
「団から選抜で五名連れ、上級ダンジョンの五十層へ行く」
五十層か、俺は行ったことないな。
「お前らは参加だ」
「待ってました!」
「後一名か」
すると突然ドアが開いた。
「はぁっはぁっ!!」
汗を大量に書いている刀刃だ。
「僕も訓練に混ぜてください!! お願いします!!!」
深くおじぎをする刀刃。
「決まりだな」
じゃあ……。
「刀刃、ダンジョンは興味あるか?」
!!
「あります!」
「一ヶ月後に上級ダンジョンを五十層まで攻略する、ついてこい刀刃」
「はい!!」
決まりだな。
俺にワーグルに刀刃、ディアス先輩にジーク先輩にフラム副団長。
この六人でダンジョンか、楽しみだ。
「では遅くなったが……当日の連携も兼ねて三対三の模擬戦だ!」
模擬戦……面白いな。
「ジーク、ドレイク、ワーグルの三人がAチーム。私とディアス、刀刃の三人がBチームだ」
互いに前衛が2枚、後衛が1枚のバランスが取れたいいチームだ。
「十分後に始める、それまでは作戦を組むのに使え」
そういってチームごとに別れていく。
「ディアスは僕が抑えるよ。刀刃はドレイク、頼めるかい?」
「任せてくださいよ」
「ワーグルは戦況を見つつ支援、これで行こう」
シンプルだが良い作戦だ。
ワーグルとフラム副団長の介入により、戦況は変わるがそれまでは一対一だ。
「失礼しまーす」
ん? 医療班だ。
「皆さーん! くれぐれも死なないようにお願いしますねー!!」
頼もしいな、それ以外は治せるという事だ。
こっちは準備万端だ、相手もすでに戦う準備をしている。
一年ぶりだな、フラム副団長と本気で戦うのは。
「時間だ、では試合開始!」
フラム副団長の号令が響く。
「ふぅ……ドレイク先輩には悪いけど大人しくしてもらいます」
なんだこの殺気は……?
一瞬だった。
瞬きはしていないが目の前に刀刃が現れた!!
「せぁあっ!!」
「チッ……!!!」
刀刃が鞘に手をかけている!! 刀刃の十八番、神速の居合切りだ。
この間合いは……マズい……!!
「取った!!」
「止まれ、刀刃」
!!
いつの間にか刀刃の死角を取っていたワーグルが、刀刃に杖を突き付けていた。
ワーグルの固有スキルは隠蔽だ。
自らを隠して戦場に紛れ込み、そして死角から現れる。
魔法師団内ではもっとも敵にしたくないスキルだとも言われている。
「あと一歩だったのに!!」
刀刃のは固有スキルではない、なんでもそういう移動の術だとかなんとか。
「まずは一本、そっちの勝ちだ」
騎士団の少人数での模擬戦は、先に数を減らされた方が負けとなるルールがある。
「すみません……ワーグル先輩に捕まりました……」
とぼとぼと刀刃がフラム副団長の元へと歩いていく。
「いや、今のでいい」
「そうさ! 良かったぜ?」
刀刃を励ますフラム副団長とディアス先輩。
「危なかったな……助かったぜ、ワーグル」
「これが僕の仕事だ」
「僕らも対策を考えよう」
また作戦会議の時間を十分取る。
「時間だ! 始めるぞ!」
互いに動かない……いや、動けない。
だったら見せてやる、俺達が一年かけて成長させてきた奥義を!!
「あ! あれはなんだ!!」
向こうチームの奥を指さしてワーグルが大声を上げる。
「なんだよ? なんかあるか?」
ディアス先輩が後ろを向いたその瞬間!!
「ディアス先輩!! 来ます!!」
刀刃が声を上げる!
「なんだよ? 何もねえじゃねえか……ってドレイクがいねえ!」
既に竜に乗ってワーグルの隠蔽魔法で隠れている俺は、一気に加速して間合いを詰める!
「貰った!!」
狙いはディアス先輩だ!!
「クソッ!!」
音でドレイクが竜に乗って近づいてきているのは分かるが、躱しようがねえ!!
すると刀刃が俺とディアス先輩の間に入る。
目をつぶっているな……居合切りか、だが刀刃よ……悪いが止められないぞ?
間合いに入った瞬間斧と刀が衝突する!!
「グゥウウッ!!」
刀刃は刀を手放して見事に吹き飛ばされていく。
「刀刃!! だーーーっ!! 卑怯だぞ! ワーグル!!」
口笛を吹いて誤魔化すワーグル。
「ハッハッハ!! さっきから遊ばれているなワーグルに!」
「グレース様! なんとかしてくださいよ!!」
「分かった、ふふっ、ワーグルは私が受け持つとする」
遂に動いたか……これでワーグルは動けないだろう。
「では作戦会議とする」
また会議をする。
「くそっあいつ等め! 姑息な手を!!」
「引っかかる方が悪い」
「僕もそう思います……」
「なーにが、あ! あれはなんだ! だ! 次は思い知らせてやる……」
「ふふっ……騙された時のお前の顔も面白かったがな……ハハハ!」
「グレース様!!」
向こうはなんか知らんが笑いあってるな。
作戦会議が終わる。
「では始める!!」
三戦目、今度は姑息な手は使わない。
「焔の豪騎よ!」
「ヒヒィイイイン!!」
来たな、豪騎兵!!
ワーグルも鼻が利く馬に見つかるから隠蔽は出来ない。
「僕が相手しよう、ドレイクは竜を単独で向かわせてくれ」
「オーケー! 出番だ、ジャバウォック!」
竜を顕現させる。
「グルルルルルッ……」
「行け!」
お互いに四対四! どう動く?
「顕現せよ! 炎国の巨人王! スルトよ!!!」
巨人王?
全員が止まった。
炎の剣を持つ黒い巨人が現れる。
……あれはヤバいな、喰らったら動けなくなるぞ……。
ジーク先輩は豪騎兵に捕まって動けない。
ワーグルはこういうのに滅法弱い……。
なら、俺が討つ!
斧を生成する。
ただ、今までの生成とは違う。
「神代の英雄竜よ、我が武器に宿れ……」
「神代の詠唱文を使いこなすか……」
フラム副団長が褒めてくる。
両手斧を生成し、両手で力強く握る。
「行くぞ!! 英雄竜の一撃を!!!」
「一撃で屠れ!! 神代の傑物よ!!!」
――激突する。
「グゥッッ!!」
フラム副団長を押している!!
「ガアアアアアアアッッ!!」
槌を破壊する!
そのまま巨人に向かって!!
「ガアアアアアアアアアアアッ!!」
斧を! 最大限の力で!! 振るう!!
一刀両断。
巨人は灰となり消えていく……。
沈黙が訪れた……。
「降参だ」
……え?
「降参だと言ったんだ……私から一本取ったのは初だな」
……勝った? 俺が? フラム副団長に……?
「やったな!! すげえじゃねえか!!」
ワーグルが喜んでいる。
そんな簡単な言葉では表せない……。
二年だ……俺は二年間、この人の背中だけを追い続けてきた。
それが!!! 今!!!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」
俺は吠えた。
泣きたい感情も、喜びたい感情も、感謝したい感情も全部乗せた。
ディアス先輩とタッチする。
「よく……!やったな……!!」
泣いて喜んでくれている……。
「はい!!」
「僕も勝ったことないのに……! 先を越されたよ!」
「ドレイク先輩!!」
「ああ!!」
「俺! 俺も!!」
「ワーグル! サンキュー!!」
ワーグルとタッチをする!!
「私を超えたのはハイルとゲルド、そしてドレイク、お前が三人目だ」
「はい!!」
フラム副団長に抱き着かれた。
!!
「強くなったな!!」
「はい!!」
「よっしゃあ!! これで、副団長補佐はドレイクだ!!」
……え?
「僕は異論ないよ……おめでとう!」
ジークさんが拍手してくれる。
皆が拍手してくれる。
「精一杯頑張ります!!」
「頼むよ!! 副団長の右腕!!」
補佐か……果たして皆から認められるかな……?
そうして今日の訓練は終わり、ドレイクはフラム・グレース副団長の補佐となった。




