閑話 フラム・グレース
魔法師団第一修練場。
フラム・グレースは朝から魔法の訓練をしていた。
「はぁっ…… はぁっ!!」
息が切れる。
鼓動が早くなっていく。
それでも杖を振るうのを止めなかった。
「くそっ……駄目だ、全然成長しない……!!」
現在Lv.98、Lv.100の頂きはすぐそこまで来ているのにもかかわらずずっと停滞している。
「くそっ!!!!」
杖を振るい無心で魔法を放つ。
もっとだ、もっと……竜さえも一撃で屠れるくらいに強く在りたい!!
一年前のドレイクとの死闘は良かった。
今でもそれがフラムの心を奮い立たせる。
フラム・グレースは最強でなくては駄目なんだ!!
ハイエルフとして、男として、団を預かる副団長として、だ。
エルフの森は守れなかった。
生まれて物心ついた時には既に腐敗は始まっていた。
内部から徐々に腐っていく様を見ているだけだった。
もう、あんな思いはしたくない!!
杖を止める。
守りたいものを守る、その難しさをフラムはよく知っている。
この国に来て騎士団に入り、守れなかった後輩や先輩は数えきれないほどいた。
そのたびに思う、何故もっと訓練してこなかった……と。
力が全ての世の中だ、仲間を守れなかったという事は、自身の弱さの証明になる。
絶望していた時期もあった。
闇ギルドとの抗争で尊敬していた副団長が死んだとき。
愛していた女性が殺された時。
何度も自分を恨んできた。
お前は今まで何をやっていたと。
だからLv.100への到達は誰にも譲れない。
「誓うよティア、今度こそ誰も失わせない、今度こそ!! 必ずだ!! お前のような犠牲者は、二度と出さない……!」
全員を救うなんて馬鹿げた話だ、分かっている。
ハイルみたいな英雄でも無理だったんだ……。
「だが、私は理想を諦めて、仲間を失えるほどには強くない……」
「副団長! 何故、私を残して先に死んだ!!」
もう、弱音を吐いて頼れる相手はこの世にはいない……。
いや、一人だけいるか……。
俺をいつでも追い抜いてきそうな勢いのある奴が一人。
生意気な面もあるが遂面白くてかまってしまう。
「ドレイクに聞いてみるか……」
珍しく後輩を頼ることに決めたフラムは心が軽くなっていくのを感じた。
そうだな……仲間はいる、魔法師団には俺を頼り着いてきてくれる奴らがな。
……?
何に悩んでいたのか分からなくなってきたな。
「たまには息抜きにあいつらと遊んでやるのも悪くないか」
ふふっと笑い、今日は何の魔法で虐めてやろうかと考え、仲間の元へと歩き出した。




