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竜を従え王と成る  作者: 水亥
第五章 ドラゴニア魔法騎士団編
48/111

第48話 新人入団試験

 遂にこの日がやってきた。


 俺達が一年前に来たときは朝早くから行ったっけ……。

 よし、今日は早起きしたから今の時刻は午前四時、もう行ってみるか!

 準備をして闘技場へと向かうが……誰もいなかった。

 まあそうだよな。

 暇だから受付の椅子に座り本を読む。

 神代の時代に起きたとされる大戦の本だ。

 なんでも神々は互いに争っていたらしく、無数の神々を蹴散らして今の三神が歴史に名を刻んだんだとか。


 結構読むと面白いな。

「あのー……」

 なるほど、ここであの神が出てくるのか。

「あのーー」

 雷神対水神だって!? 面白そうだ!!

「あのー!!!」

 うわ! びっくりした! 本を読んでいて気づかなかった。

「ドレイクさんですよね?」

 ん? この子どこかで見たような……?

「そうだけど何か?」

「私です! レベッカ・クライツです!!」

 レベッカ? いや、クライツ……? クライツさんの孫娘か!!

 確かジノと付き合っている子だ。

「なんだジノの彼女か、受付に?」

「はい!」

「ステータス紙は?」

「どうぞ」

 ステータスを見る。へえ…… 結構優秀だな。

「じゃあ、待機室があるからそこで待っててね」

「身体動かしてても良いですか?」

「いいよ」

「ありがとうございます!」

 レベッカは礼をして場内へと進んでいった。


 さて、本の続きを読むか……。

 すると今度は三人組がやってきた。

「受付ってここで合ってますか?」

「合ってるよ」

「全員試験を受けに来ました」

「ステータス紙は?」

「どうぞ」

 鞄からステータス紙を取り出し、ドレイクへと渡していく。

「へえ……待機室があるからそこで待っててね?」

「本番前まで身体動かしときたいんですけど……」

「ああ、場内は自由に使ってくれていいよ」

「分かりました!ありがとうございます!!」

 三人組も場内へと進んでいく。


 お、本当の受付の人が来たことだし練習風景でも観にいくかな。

 俺は受付を交代して貰い二階の客席へとあがっていく。

 するとそこにジノとバアルがいた。

「なんだ、もう来てたのか」

「どうしても気になってな」

「どうだ?筋が良いのはいたか?」

「及第点って感じだな」

 ジノの横に腰をかける。

「そうか、今日は忙しくなるぞ?」

「会場警備は俺らの仕事だからな」

「まあ、変な奴は来ないでしょ」

「だといいが」

 試験開始は午前九時から、後四時間後くらいだ。

「今年も早いねー」

 ん?

 振り返るとハイルさんがいた。

「おはようございます」

「おはよう」

「うーん、あの子達は厳しいかもね……」

 え?

「でも、あの赤髪の子は面白いかも」

 それを聞いてジノがほっとする。

「俺達の後輩なんですよ」

 バアルが言う。

「へえ……魔力制御に無駄が無いし取ってもいいかもね」

 しばらく見続けているとゲルド副団長とフラム副団長も来た。

「ねみぃ……朝早くから元気だなハイル」

「おはよう、ゲルドそれにフラムも」

「ああ、おはよう」

 六人で練習風景を見る。

 人が少しずつ増えてきたな、観客も少しずつ入り始めている。

「よし、僕達はやることあるからまたね」

 そう言ってハイルさん達はどこかへと去っていく。


 試験が始まる時間となった。

 順番に一人ずつ呼ばれてはハイルさん達が相手をして合否を決めていく。

 観客の反応は結構いい。

 会場は賑わっていて小さい子ども達も屋台やらを楽しんでいる。

 そして試験が全て終了して御前試合の時間となった。


 待合室で待っていた俺にミュフィスとライラが挨拶に来る。

 そして呼ばれたので行ってくるよと伝えて闘技場内へと向かう。

 相手はフラム副団長、全力で勝ちに行く。


 会場にアナウンスが流れる。

「それでは御前試合に入ります! まずは第一試合! ドラゴニア騎士団副団長、魔法師団のフラム・グレース様と! 魔法師団ドレイク・ランドロックの一騎打ちでーす!!」

 わーーーー! とすごい歓声だ、特にフラム副団長を呼ぶ声が凄い多い。

 俺は通路を渡って闘技場内へ姿を現す。

 「レイーーーー!!」「ドレイク坊ちゃまーーー!!」

 父さん達が声を掛けてくれる。

 遠くにいてもはっきりと聞こえた。

 手を振って答える、絶対勝つよ、この試合。


 フラム副団長の正面に立ち俺は集中する。

 皆が見ている……無様な敗北は許されない。

「今日も私が勝つ」

「今日は俺が勝ちます!!」

 互いに勝利宣言をすると会場はさらに盛り上がる。 


「それでは双方構えて……! 始め!!」

 試合開始の合図が鳴る。


 それと同時にフラム副団長は詠唱に入った。

「顕現せよ! 焔の豪騎兵! グラニナイト!」

「ヒヒィィィイイイイン!!!」

 炎の斧を持つ騎兵が出現すると会場は盛りあがる。


 なんだあの騎兵は!!? 以前とは全然違う!!

 俺は斧を生成し様子を窺う。

(ことわり)を超越し、顕現せよ! 英雄竜ジャバウォック!」

 竜が空を旋回し一気に地上へ降りてくる。

「グルルルルルッ!!」

「すげえええええ!!」「竜だ!!!!!」「初めて見た!!」

 会場は更に盛り上がる。

「ほぅ……前よりも腕を上げたな」

 ジャバウォックは自らの魔力を変換して作り上げる、魔素からできた竜。

 見た目は本物だが魔法熟練度が必要で、斧造りで細部までこだわっていたのはこの為でもある。

「行くぜ!!」

「豪騎兵よ! ねじ伏せろ!」

 戦闘が始まった。


 地上だと騎兵の方が速さは上だが一撃の重さは竜だ。

 騎兵が竜の首目掛けて一気に加速し斧を振るう。

 それを上空へと躱し騎兵へと竜の牙が迫る!

 騎兵に噛みつき上空へと羽ばたき首を振って地面へと叩き落す。


「デモンストレーションは済んだか?」


 フラム副団長が長杖を回しながらゆっくりと近づいてくる。

 俺は斧を一旦消し、竜体になり駆けだした。

 ギィイイイイインッ!!

 激しいぶつかり合いが繰り広げられる。

「す、すげえ……」

 会場は騒然としている。

 こんなにも騎士は強かったのかと。

 人間離れした速度に卓越した技の応酬、ここにいる人間ほぼすべてが時間を忘れて熱中していた。

「行けえ!!!」「そこだ!!!」「頑張れえええ!!」


 何回打ち合ったか分からないが、フラム副団長に一撃を貰い後ろずさる。

 「グゥッ!! しまった!!!」

 この距離はフラム副団長の得意としている距離! 必殺の魔法が来る!!


 フラム副団長は更に後ろへ飛び俺との距離を取り、長杖を振るう。

「お別れの時間だドレイク……! フレイムバレット!!」

 宙に百を超える炎の弾丸が展開される。

「な、なんだあれ……?」「すげぇ……」「魔法なのか……?」


「行け」

 待機している炎の弾丸が爆発し順々に俺に向かって飛来してくる!

 「土城の防壁!」

 土魔法の中でも最上級の堅さを誇る防御魔法だ。

 これで凌ぎたいが!!

 防壁に弾が当たるたびに削られる! 頼む! 凌いでくれ!!

 「防御だけで勝てると思うな!! レーヴァテイン!!」

 次々と炎の弾丸が発射される中、一際異彩を放つ焔の剣が現れた。

 「仕留めろ!!」

 爆発し勢いよく射出された焔の剣は、今までの魔法の速度を凌駕し、土城の防壁と俺の胴体を軽々と貫いた。

 「ゴフッ!!!」

 思い切り血を吐く。

 観客は唖然としている、あまりにも一方的な光景に。

 「レイ!!!」「ドレイク坊ちゃまーー!!」

 父さんと母さん、セイベルの声が聞こえてくる。


 「心配すんなよ、父さん! 母さん! セイベル! ……俺は! 強くなったんだ!! 皆を守れるくらいには!!」

 身体はボロボロだが頭は冴えている。

 勝負に出るしかない……!!

「ジャバウォック!!」

 俺は豪騎兵を倒したジャバウォックを呼び、背に飛び乗る。

 そして一気に上空へと高度を上げる。


「上へ逃げたか」


 土城の防壁が形を保っていた間に上空を取れたのはデカい!

 もう俺は長くは持たない……この一撃に全てを込めて! 決着をつける!!

 一層力強く羽ばたき、フラム副団長へ向けて加速する!!

「神竜の加護よ!!」

 加護を両手斧に付与、フラム副団長目掛けて、全力で! 振り降ろす!!


「はっ、私と力比べか……いいだろう、受けて立つ! 豪炎の海へと沈め!! フレアベール!!!」

 フラム副団長の長杖が豪炎のベールに包まれた。

 そして思い切り竜の首を目掛けて振りかざす!!


「取った!」

「――爆ぜろ!」


 大爆発――

 黒煙が場内を包む。

 続いて二回爆発が起きる……。

「前が見えません! 果たして勝ったのは……!!」

 風魔法使いが急いで換気をする。

 そして、中央で立ち上がっていたのは……。

「フラム!! フラム・グレース副団長の勝利です!!!!!!」

「すげーーーー!!」「フラム様ーーーー!!」「キャーー―――!!」

 うおーーーー!! と会場は大歓声に包まれる。


 フラム副団長は静かに俺を見下している。

 あと一歩、一歩届かなかった。

 するとフラム副団長が近づいてくる。

 俺の目の前で止まり、口を開いた。

 

 「私に一撃を入れたのは褒めてやる……魔法を耐えたのも大したものだ。だが、ここが戦場なら貴様の命はそれまでだ……誰でも命は一つしかなく、死んだ者は生き返らない。生きて仲間を守りたいのなら! 強くなれ! 私を踏み越えてでもだ!!」

 そうしてフラム副団長は、王族の方々へ一礼をし、俺を一瞥した後マントを翻して闘技場を去っていった。


「はぁっはぁっ!!」

 俺は左手で斧を掴み身体を支えていた。

 右半身の感覚がまるでない! 神経まで焼かれてしまっている!

「レイ!!」

 ライラが駆けつける。

「今治すからね! グランドヒール!!!」

 傷口というか火傷の跡がじわじわと回復していく。

 ライラの回復魔法は国内随一だ。

 家系自体が昔から医者の家系であり、魔法だけではなく普通の医術にも精通している。

「はぁっ……助かる、ゴフッ!! ……ありがとう、ライラ」

「喋らないで! 酷い怪我……エルダーポーションを!!」

 医療班が忙しなく動いている。

 エルダーポーションを惜しみなく使い、なんとか一命をとりとめる俺。

 こんな大怪我なのによく意識保ってんなと我ながら感心する。


 応急処置は完了したようだ。

「くそっ……勝てなかった……」

 気づいたら自然と声が出てた、それほどまでに悔しかった。

「勝ちたかったなっっ!!」

 涙が溢れ出てくる……。

「次は勝てるよ、きっと……」

 ライラが手を取って励ましてくれる。

「情けねえ……!! 次は必ず勝つよ!!」

 俺は涙を流しながらそう誓った。

「うん! 応援してる!」

 微笑みながら少し泣いているライラ。

「医務室へ運びます!」

 俺とライラはそのまま医務室へと向かった。

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