第42話 全面戦争
星歴3018年7月30日。
遂にこの日がやってきた。
天候は最悪だ、激しい雨が降り、風も強い。
王城では王族の乗る馬車が準備されてまもなく出立となる。
護衛として三十名の騎士団。
国民にも急ではあるが、エルフの森との戦争が行われる旨を伝えてある。
「準備が出来ました陛下」
国王とその親族が馬車へと次々と乗り込んでいく。
「まもなく出立だ! 各自配置に着け!!」
フラム副団長の号令で騎士の間に緊張が走る。
「ヴァン、相手は動いているか?」
「馬を相当用意しているね、間違いなく追ってくるよ」
「ありがとう」
空から情報を得られるのは非常にありがたい。
フラム副団長に伝える。
「そうか、動いたタイミングでまた知らせてくれ」
「はっ!」
所定の位置に戻り馬に乗る。
「では出立だ!!」
「おお!!」
馬車が走り出す。
王都の国民総出で馬車を見送ってくれている。
「陛下ーー!!」「ハイル様ーー!!!」
この天気でも聞こえてくる、すごい歓声だ。
王都を抜けて森まで後二時間位か……。
麦畑の横を通り抜け、そして森へと入っていく。
三十分ほど進んだところで号令がかかる。
「全軍停止! 各自配置へつけ!!」
「はっ!!!」
馬や陛下達を森へと隠し、騎士達も茂みに隠れる。
フラム副団長がやってきた。
「どうだ?」
「動き出しそうです……」
二十分が経過……。
「動いた!! 馬で王都の外を目掛けて走ってきます!!」
「よし、森に着いたら知らせろ」
「はっ!」
更に二時間ほど経過。
「森に入りました!! 来ます!!」
「全軍!! 戦闘用意!!」
場が一斉に静まる。
始まる……戦争が始まるんだ。
息をひそめて何分経ったか分からない。
すると馬の足音が聞こえ始める。
「ドレイク、貸せ」
「はっ! 神竜ジャバウォックよ、その力、我に授けよ!!」
指輪が赤く光る。
フラム副団長の長杖に加護を付与する。
すると敵はまだ見えていないが勢いよく飛び出すフラム副団長。
ここから撃つのか??
「万象を焼き尽くし、敵を喰らい尽くせ!! 顕現せよ!! 炎竜ジャバウォック!!」
翼が四枚の炎の巨竜がフラム副団長の前に現れる。
「グルルルルルルッ!!」
息をのむ音が聞こえる。
そう皆この魔法を見るのは初めてなのだ。
そして……。
「賊共を! 焼き払え!!!」
炎竜を前方へ撃ちだす!!
「全軍!! 突撃!!」
「うおおおおおおおおぉおおおおおおおおおお!!!!!」
始まった! 茂みから素早く出て先頭を駆ける!
俺は近接戦しかできない、前にいないと仕事ができないのだ。
すると横にウィゼルさんが現れた!
話している余裕はないがアイコンタクトする。
互いに健闘を祈ると。
もう敵の一団は目の前だ、火が上がって焼かれた死体が転がっている。
その中を突っ切っていく。
するとそこには闇ギルドの幹部達が八人集結していた。
「へえ……あいつが例の……」
凄い迫力だ! だがここで引くわけにはいかない!
ドレイクは敵の集団目掛けて突っ込んでいく!
「止まれ!!」
「!!」
フラム副団長だ。
「一人で行くな、奴らは強い」
「そうだぜ? 美味しい所を独り占めしようなんざ、まだ早え」
「僕もフラムに同意だ」
ハイルさんにゲルドさん!!
「ゲルド! これで全部か?」
「ああ、残りは奴らだけだ」
「なら! 顕現せよ! 焔の豪騎!」
騎兵が三騎現れる。
「賊の首を討ちとれ!!」
「ヒヒィィィイイイイン!!」
騎兵が駆けだす。
「俺がやる」
首なしの蝶のリーダー、ハーゲンが唱える。
「ダークホール」
宙がゆがみ、グシャッっと音を立てて騎兵が潰された。
「副団長フラム・グレースか大したことないな」
相手は魔法兵が2人、剣兵が4人、弓兵が2人か。
Lv.は全員90以上。
こちらが動いても相手が止まり続けているから非常に攻めづらい。
何か待っているのか?
「ヴァン、何が来る?」
「毒竜が来るよ……気を付けて」
毒竜……?
「フラム副団長、相手は竜を呼んでいます」
「竜だと?」
「ククッ、バレてるじゃねえか……」
「毒竜のリーダー、ライカンだ、奴が呼んだに違いない」
「ヴァン! 上空で足止めできるか?」
「うん、毒竜は僕に任せて!」
騎士団の包囲が完成する。
相手は囲まれて逃げられない。
「ちっ、めんどくせぇ……だったらあのガキ一人だけでも貰ってくぜ!!」
ガスノットが動いた! 弓兵もそれに続いて矢を放ってくる。
「ここは僕が!!」
ウィゼルさん!!
「邪魔だどけえ!!」
「行かせないよ!!」
盾でガスノットの強力な一撃を見事に防いだ!
さっきまでの膠着状態が嘘のように一気に乱戦が始まった!!
「死ねぇ!!」
「させるか!!」
「敵一人に対して三人がかりで攻めろ!! 奴らを逃すな!!」
フラム副団長の声は戦場でもよく通る。
「ちっ!! しつけえんだよ!!!」
ガスノットが目の前に!!
「死ね……!!」
ガスノットが大振りをしてくる。
それを搔い潜って一撃を浴びせる。
ガスノットの胴体を俺の右腕が貫く!
「がはぁっっ!! て、めぇえ……」
まずは一人。
向こうでも弓兵二人と剣兵二人を既に討っている。
残るはハーゲンとライカンとラプダだ!
「ダークホール!」
宙をゆがませては騎士を潰して暴れているハーゲン。
そこにハイルさんが駆け抜けていく。
ザンッッッ!!
ハイルさんが一閃浴びせ、ハーゲンを仕留める!
後はライカンとラプダだ!
「おらぁ! 死ねや!!」
ゲルドさんの蹴りがライカンの頭を砕き吹き飛ばす!!
残りは! ラプダ!!
「ククッ、坊主……終わりだ!!」
ラプダを目で捕えようとした瞬間、既にラプダは目の前にいた!!! まずいっ!!!
「ククッ! 今度こそ!! 死ね……!!」
ラプダの黒いフレイムナイフが左胸に吸い込まれていく。
「しまった!!」
「ドレイク!!」
フラム副団長が叫ぶ!! くそっ……!避けれない!!
「雷弓よ!! 敵を穿て!!!!!」
ラプダの額に雷の矢が突き刺さり貫通する。
そして回転しながら吹き飛んでいき、木に当たる……。
この声……この雷の矢は!!!!
「マシュア!!!」
左後方にいたマシュアが救ってくれた!!
「この戦、僕達の勝利だ!!!!!」
ハイル騎士団長が宣言する。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺も珍しく吠えた。
やった、やっと闇ギルドの大手派閥を壊滅させた!!
周りでは互いの健闘をたたえ合っている。
死亡者は十人ほどか……。
毒竜は呼んだ張本人、ライカンが死んだことによって姿を消したらしい。
今は勝ったことを喜ぼう、そうじゃないと死んでいった仲間も浮かばれない。
戦場にはジノとバアルもいた、ハイタッチをする。
そして抱き合う。
「やったな!! 俺達!! 勝ったぜ!!」
ジノが嬉しそうにはしゃぐ。
「ああ! 最後はひやひやしたぜ!」
「マシュアが助けてくれたんだ! マシュア!!! お前も来い!!」
マシュアを呼んで更にはしゃぐ。
「全軍聞け!! 此度の戦!! 我々の勝利で終わった! 全員よくやった!! 凱旋の準備だ!!」
フラム副団長が騎士団に号令をかける。
「はっ!!!」
そして騎士団は王族の方々を護衛しながら王都へと帰還した。




