第35話 強者
記念式場内。
「先生! エミール先生っ!! 俺達は戦える!! だから行かせてくれ!!」
「駄目です!! 絶対に通しません! 生徒達は下がりなさい! なるべく詰めて!!」
ジノがB組の担任教師エミール先生に抗議している。
ざわざわと場内には不安が漂っている。
「落ち着けジノ、こういう時は焦っても仕方ねえ……」
「だけど! レイもいねえし探しに行かねえと!!」
「落ち着けって言ってんだろぉ!!!」
バアルがジノの胸ぐらを掴み怒る。
バアルが起こった姿など見たことないジノは驚いた……。
そして気圧される、目が本気だ。
騒いでいた生徒達も少し静かになる。
「今騒いだって何も変わりはしねえ!! 先生達の足を引っ張る真似してんじゃねえよ!!」
「わ、わるい……」
ジノから手を放してバアルは生徒たちに向けて言う。
「負傷した者は二階へ運べ! 聖魔法使いも二階へ!! 戦える生徒は入り口から少し下がって待機! 急げ!!」
陣形を変える。
この状況でもバアルは冷静で皆が生き残る最善を取り続けている。
くそっ!! 俺はなんてかっこ悪いんだ!!
今の場内はごちゃごちゃだ。
負傷した生徒、先生がかなりいる。
そのうえ戦おうとして興奮している生徒もいる。
それを即座に分けて治療と戦いに集中出来るようにして見せた。
バアルは本当に頼りになる自慢の友人だ。
俺は先生達を信じて待機する!
記念式場外。
「ははっ!! 全員が纏まってかかってきてこれかよ!! 手ごたえがまるでねえな!!」
「……!!」
圧倒的だった、五人でかかっているがこちらが削られる一方だ。
前衛をヴァイルと剣技の先生アドレ、中衛にマシュアとアイルース。後衛に学院長のミュゼラ。
だが魔法職の二人は魔力切れで、前衛の二人もすでに息絶え絶えであった。
「前からムカついていたんだ! てめえらみてえなエリート様によぉ!! 仲間が何人も殺された!!」
怒りをぶつけてくるジアッド。
長槍を振り回しながら遊んでいるのか機会を伺っているのか、わからない間合いに距離を取っている。
「こっちだってクソみてえな生活を維持するのに必死なんだよ!! 分からねえよな!! 学院長様には!! 雷槍よ殺し尽くせぇ!!」
長槍を振ると雷の槍がジアッドの周囲に5本展開する。
これだ、この雷の槍が厄介で攻めきれずにいる。
「おらぁ!! もう終わりかぁ!!!」
そう言いながら雷の槍を従えながら接近してくる。
「ちっ!!! 本当に面倒だな!!!」
ヴァイルが応戦する。
「アドレ!! 後ろへまわれ!!」
「オーケー!!」
「小賢しいぜ!! 射貫け雷槍よ!!!」
瞬間雷の槍が5人目掛けて飛来する!
その威力は地面を簡単に抉り取るぐらいには強力だ。
「避けろ!!」
全員が対処に追われる。
「まずは一人、てめぇだ! じじぃ!!!」
!!
ジアッドはマシュアとアイルースさんの間を駆け抜けてミュゼラを狙う。
「学院長!!」
「死ね」
雷の槍に続いて近接戦を仕掛けるジアッド。
「氷城の防壁!!!」
氷の壁が現れてジアッドの一撃を何とか受け止める。
「そんな薄い氷がどうしたぁ!! ぶっ壊せば済む話だろ!!」
そして正面から大きく長槍を振りかぶる。
「氷城の防壁よ!!」
ミュゼラは急いで更に防壁を張る。
「遅えよ、じじい」
雷を使った身体強化で一気に加速して背後に現れるジアッド!
「じゃあな」
長槍がミュゼラの背を貫いた。
「ガハッッ!!!」
ポタポタと長槍から血が滴り落ちる。
「学院長!!!!」
「くそっ!!! なんとかしなければ!!」
「次はてめえだエルフ……」
ミュゼラから槍を引き抜いたジアッドはアイルースさんに狙いを付ける。
「やめろ……! 貴様が触れていい人ではない!!」
マシュアが怒ってなんとか自分へと意識を向けさせるようにする。
「あぁ、そういうの聴き飽きてんだわ! じゃあな! 死ね!」
一瞬でアイルースさんの目の前に移動して心臓を目掛けて長槍を放つ!!
「やめろぉおおおおおおおおおおおお!!!」
「させるかよっ!!!!!」
「!!」
ドレイクが長槍を弾き飛ばしアイルースさんとジアッドの間に立つ。
「へえ、いるじゃん、まだ活きが良さそうな、生意気そうなガキが一人よぉ……!!」
「アイルースさんは、殺させねえぞ……」
俺とジアッドは互いに睨み合う。
相手は余裕を崩していない、俺は静かに怒っていた。
「ヴァン、共闘だ。降りてこい」
「やっと僕の番だね、任せてよ」
遠くの空から竜の鳴き声が聞こえる。
「竜……? まあいい、楽しませてくれるじゃねえの。お前、名を名乗れ」
「ドレイク・ランドロックだ」
「俺は神殺しリーダーのジアッド・ローグ。てめえはなんのために戦っている? 女か? 金か? 地位か名誉か? 何のためだ?」
「仲間だ、仲間を守るため。それ以上は必要ない」
「はは!! 仲間を守るため!! 俺と同じじゃねえかよ!!」
「なんで学院を襲った?」
「そりゃあ決まってるじゃねえか! 拠点が欲しいからみたいなガキみたいな理由じゃねえ! 学院長さ!」
「学院長……?」
「魔法耐性の高い者の死体は高く売れるんだぜ……? 研究対象としてなぁ!!」
「!?」
「誰に売るつもりだ……?」
「ハイエルフの連中だよ。ははっ! エストア白金貨100枚でな!! 奴ら魔法研究に目がねえ!! しばらくは遊んで暮らせるぜ!! 夢みたいな話だろ?」
そんなものの為に、生徒や先生達は殺されていったのか? まさか……!!
「もしかして……生徒や先生、いや、この学院を襲ったのも!!」
「そうだ!! 魔法耐性の高い生徒の死体は高く売れる……良い話だろ?」
「ふざけるなっ……!!」
俺は竜体になる。
「ははっ!! てめえも高く売れそうだ!! 殺してやるよ!!!」
激突。
激しい攻防が一分以上続く。
「神竜の加護よ!!! 賊を噛み殺せ!!」
「雷槍よ殺し尽くせぇ!!」
雷の槍を展開した瞬間、空から影が落ちてきた。
「あ……?」
「グルルルルルルルッッッ!!」
ジアッドが振り向いたそこには、赤く輝く牙があった。
「グルルルッ!!」
そして左腕を噛み千切られる。
「グゥウウウウッッ!!!! てめぇ!!」
目が血走っていた。
ありえない伏兵、竜が人と共闘するなんて聞いたことがない!
そして俺の左爪がジアッドの心臓を捉える!
ディアッドの左胸を貫通し心臓を握り潰す。
「て……めぇ……や……り……やがる……」
ジアッドの右手から長槍が離される。
「カラン……カラン……」
戦場に静かに響いた。
腕を引き抜く。
竜体を解除してミュゼラの元へと歩いていく。
周囲はすでに動き出している、応急処置に走る者、騎士団を呼んでくる者、生きている生徒がいないか確認しに行く者。
俺はミュゼラを見つめる、まだ生きてはいるが助からない。
そしてもう喋ることはできない。
「じいさん……ミュフィスと結婚することになったよ」
「……ごほっ」
何か伝えようとしてくるが血を吐くだけで喋れないでいる。
「誓うよ、この先何があろうとミュフィスは必ず守ると……」
涙が溢れ出てくる。
そう、ミュフィスと婚約した今俺にとってのおじいちゃんなのだ……。
「たまには墓参りするからよ……だから……俺っ……!!」
泣いて言葉が出てこなくなる。
地面に崩れ落ちる……。
「せめて……結婚の挨拶位ちゃんとさせてくれよ……」
するとミュゼラが手を握ってくれた、優しい目をしていた。
「じいちゃん……! 生きろよ!!! 俺は!! あんたに言いたいことが山ほどあるぞ!!!!!」
ミュフィスとの思い出、学院での生活、感謝したいことがたくさんある。
「ドレイク君! 学院長は私が!!」
ライラが駆けつけてくる。
「ああ、頼んだ……」
そして聖魔法で治癒が行われる。
「ドレイク」
「ワイヤード先生……」
「ぼろぼろじゃないか、少し休みなさい」
「グスッ……はい」
「レイ! 無事か!!」
「ジノ……バアル……」
すると察したバアルが言ってくる。
「休んで来い。ジノ、俺達も生き残りがいないか見て回るぞ」
「ああ! じゃあなレイ、安静にしとけよ……」
ジノとバアルは校舎の方へと走っていった。
……疲れた。
だがここで意識を失うわけにはいかない、生きているかもしれない生徒を探しに行こう。
「ドレイク君」
「ウィゼルさん……」
「君は治療が終わり次第休んでいい。校舎も寮も燃えてしまったから今日は式場の中になるけどね……」
「でも」
「頼ってくれ」
「え……?」
「今は僕たちに任せてくれってことさ、ごめん! 君! ドレイク君をよろしく頼むよ!!」
「はい!」
一人の生徒が駆けつけてくれる。
気が抜けたのか意識が重くなり視界が閉じて行った。




