第21話 夜の森
さて、キャンプ地には全員合わせて二十人弱。
ある家族は火に当たっていて、周りでは子供達が楽しそうに遊びまわっている。
それを優しい顔で爺さんたちが見守っている。
何も起きなければいいが、その家族は裕福な出だと一目でわかる。
狙うには絶好のシチュエーションだな……。
かといって気をはり続けても家族を不安にさせるだけだ。
マシュアが獲物でも持って帰ってくれば子供達は喜ぶだろう。
夜の森の狩りだ……そう簡単には戻れないはず。
と考えているとマシュアが消えて行った方角から音がした。
なんだ、マシュアか、早かったななんて馬鹿な真似はしない。
「何者だ? お前ら?」
「ククッ、寂しいこというようになったじゃねえか……? 坊主よ?」
その声は……!!!
「ラプダ兄弟!! おい!全員一箇所に集まってろ!」
すぐに敵が来たと周囲に知らせる。
「おう!!」
中堅の冒険者が一般人を守るため動く。
「う、うわあああ!! ラプダ兄弟だ!!!」「きゃあああああああああ!!!」
喚きパニックになっているものもいるが、冒険者たちに任せよう。
「野郎ども! そっちは任せたぞ!!」
「おうよ!!!!」
俺が食い留めれれば援護も期待できるが、緊張してがちがちになっている奴もいるな……。
「よう、ガキ……元気にしてたかよ……?」
「ああ、元気にしてたぜ……ガスノット!」
白いフードを脱ぎ去り前に出てきて正体を現すガスノット。
月明かりに照らされたその形相はまるで骸骨。
前よりも体格がたくましくなっている気はするがそれでも200cmを超える巨体でやせ細ってい様は見慣れない。
あいかわらずラプダ兄弟はフードをかぶり続けている。
後ろには守るべき人達がいる。うかつには手を出せない。
ジリジリと篝火の音が聞こえる……。
「お得意の速攻はどうした? あれは効いたぜ? 竜の身体になる術なんて初めて見たぜ?」
「ククッ、来ないのか? 小僧?」
挑発を仕掛けてくるが俺は乗らない……。
「どうだ? 俺達の仲間になるってのは? そこらへんの若い女、金、好きに使っていいぜ?」
「クソ野郎だな……牢獄で反省してきたんじゃあねえのかよ……?」
「ああ? するわけねえだろ? こんなに楽しい職業どこを探しても見つからねえ。俺の渇きを満たしてくれるのはいつだって殺戮と強奪だ……!!」
天を仰ぐように仰け反る。
「分不相応だろ!! これほどの力を持って生まれてきて!! なんで誰かに媚びへつらって生きていかなきゃならねえ!!」
「ククッ、その通りだ……ボスは正しいぜ?」
とニヤニヤした笑みが解るほど愉悦しきっている声音でラプダが言う。
そこに雷の矢が飛んでくる。
!!
「おっと、危ねえじゃねえかマシュア」
「ククッ、来たな? ダークエルフ……」
マシュアが茂みから帰ってくる。
「マシュア!」
「ラプダ、貴様、何故腕が治っている……?」
腕が治っている? あの時ハイルさんが確かに切り飛ばした腕が? ありえるのか?
「知りたいかよ? マシュア、久しぶりだなあ?」
「ククッ、エルフの森は俺達闇ギルドと正式に取引したんだ……奴隷や不遇なエルフの救済を協力するなら力を貸すってな……。ククッ」
「なんだと? ハイエルフが力を貸しているっていうのか!?」
「ククッ! ああ、その通りだ!! ドラゴニアの国力が削がれて尚且つ同胞を救えるんだから万々歳ってとこだろ?」
皮肉を言ってくれる……。
「ククッ、エルフの秘儀で腕も元通りってわけだ……」
「そんなこと……!!」
「ククッ、あの時もお前をエストア金貨1000枚で買って、無事に里まで送り届けようとしたんだぜ? 感謝しろよな?」
「私はダークエルフだ……里に帰っても待っているのは戦争以外ない……」
「それのどこが不満なんだ?」
「何……?」
「戦争はいい……あらゆる残虐行為が正当化されるんだからな!! ギャハハハ!!!」
「ククッ! ……最高だよな? 戦争は! ククッ!」
こいつら狂ってやがる、もはや話す価値もない。
今はどうやってこいつらと戦うかに集中だ。
「ククッ、やっと戦う顔になったな。待ってやってたんだぜ……?」
「いわれなくてもてめえらは始末する」
「ラプダ……ラプド……始まるぞ」
「ククッ、いつでも行ける……」
沈黙が場を支配する……。
篝火が一層激しく燃えているような気がした。
「フレイムナイフ」「アイスナイフ」
ラプダの炎が黒くなっている? それにラプドの氷は白色だ。
こいつら、クラスチェンジしたのか?
一気に警戒を強める。
先に動いたのはラプダ兄弟だ。
だが、俺たちは前とは違う。
「神竜の加護よ!!!!」
神竜の加護は初めて実戦で使うが、使わないよりは全然いい。
マシュアの弓に加護を付与する。そして注意がそっちに行った瞬間に竜体へとなっておく。
「……」
敵はこちらを観察している、なら!
「マシュア!!」
「敵を穿て!!!!」
閃光。
極大の雷の矢が敵目掛けて飛んでいく!!
するとローブを盾にし、雷光に紛れたラプダとラプドが近接戦を仕掛けてくる!
「ククッ! 威力だけは褒めてやる……!」
あの一撃が防がれただと!! エルフのローブか……!!
ラプダのナイフが襲い掛かってくる!
防ぐ!! 次のラプドの攻撃も防ぐ!!
(防げる!! ウィゼルさんに守りを教わっていたから技も見切れる!!)
「!!」
驚いているラプダ兄弟。
「だが、あめえよ!!!」
ガスノットがいつの間にか背後から俺の首を狙っていた。
それを迎撃したいが、眼前にはまだラプダ兄弟がいる。
見なくてもわかる、マシュアを信じよう。
俺は前に出る!!!!!
瞬間、高速でラプドに近接戦を仕掛ける。
「雷弓よ!!!」
マシュアの援護射撃でガスノットはそれを躱して距離を取る。
「チッ!!」
頬に傷を作られたガスノットがマシュアを笑いながら睨む。
爪の二連撃でラプドの防御を崩す!!
するとラプダが攻撃を仕掛けてくるが。
「あめえのはてめえらだ……!!」
竜の尾でラプドの左胸を貫き風穴を開ける!
「グッ……!!」
そのままラプドを盾にし、ラプダの迫撃を防ぐ。
「ククッ……やってくれたな坊主!」
ラプダは攻撃できず、一旦ガスノットと合流して態勢を整えた。
「死んどけ」
血の吹き出す音がして尾がラプドから抜ける。
「兄貴ぃ、すまねえ……」
……。
ラプドは死んだ。
「ククッ!! よくも! 弟を……!」
「お互い様だろ? 以前俺は殺されかけた、今度は……お前らの番だ」
「ラプド……お前の事は忘れないぜ……」
「マシュア、ちょっと頼む」
「ああ」
マシュアが前に出る。
「おえぇええええ…………!!」
嘔吐する。
初めて人を殺した……感触がまだ残っている、生暖かく、尾で刺した瞬間確かに命を奪った。
そして、血の匂いが頭から離れずに不快感を加速させる。
心臓がバクバク言っている、周りの音が聞こえない。
今マシュアは一人だ、弓兵では近接戦は分が悪すぎる。
だが震えが止まらない。
ガチガチと歯が鳴る。
人を……人を殺したのだ……。
「あらら……そっちの大将はずいぶん優しいんだな?」
「私の友人だ、侮辱は許さない」
「そうかよ、ラプダ……帰るぞ」
「ククッ、弟の遺体は貰っていくぜ」
すると言葉通りガスノット達はラプドを連れて茂みの奥に消えて行った。
「レイ! 大丈夫か? 水を持ってきてくれ!!」
周囲を警戒していた冒険者が水の入った瓶を運んでくる。
ドレイクの背を揺すりながら口をゆすがせてゆっくりと水を飲ます。
「お前はよくやった、守ったんだ! 誇っていい」
とドレイクを元気づけて背をバシバシと叩く。
「はぁはぁ……はぁ……すまない」
「いいんだ、誰だって経験することだ」
「でも……逃がしちまった……」
「今は深呼吸して水を飲んでろ」
言われた通り俺は深呼吸を繰り返して少しずつ水を飲む。
するとだんだんと視界と頭がクリアになり背を揺すってくれているマシュアの手の暖かさが伝わってくる。
「ありがとう、マシュア」
「寒いだろ? 火に当たりに行くぞ」
そう言って焚火の前まで肩を貸してもらい連れて行ってもらう。
マシュアが馬車から毛布を持ってきて掛けてくれる。
「近くに仕留めた兎とシカを置いてきてる。スープを作るから夕食にしよう。」
と言って離れていく。
寒い……まだ寒い……。
すると一人の女の子が近づいてきた。
「助けてくれてありがとうお兄ちゃん……かっこよかったよ!」
「そうだ! あんたはよくやってくれた! ありがとう!」
「子供たちが助かったよ! 干し芋食べるかい……?」
と皆が暖かく感謝してくれている。
少しだけ震えも寒さも落ち着いてきたな……。
マシュアが帰ってきて皆に指示を出しテキパキと料理を進めていく。
皆の雑談を子守歌に少しだけ眠る……。
「おい、飯ができたぞ」
マシュアに起こされる。
「今は食欲無くて……」
「駄目だ、食え。吐いてもいいから食え」
と木の器に入った美味しそうなスープを渡される。
一口食べる。
もう一口。
涙がこぼれていた……。
「焼けたぞ!肉も食べておけ」
骨付き肉に噛り付く。
美味い……美味い!。
「少しは元気になったか?」
「ああ……! 美味しい!」
と泣きながら食べ勧める光景を、皆が暖かく見守っていたのには気づかなかった。
【黒毒の剣王】ガスノット
人族32歳 Lv.90 剣術SS 毒SS 力SSS 速さS 耐久S
【黒炎の剣賊】ラプダ
固有スキル???
人族28歳 Lv.90 剣術SS 炎魔法SS 力S 速さSSS 耐久S
【白氷の剣王】ラプド
人族28歳 Lv.88 剣術SS 氷魔法SS




