第20話 里帰り
「がぁーっ……がぁーっ……」
よだれを垂れ流しながら幸せそうに眠っているドレイク。
昨日遅くまで飲んでいたからいつも以上にだらしない。
「ん、朝か……いや、昼か……」
先にソファで眠っていたマシュアが起きる。
今日は王都から馬車に乗ってランドロック領へ向かう予定だ。
「仕方ない……ドレイク! レイ!」
「ん、朝か……いや、昼か……」
主従似てきている。
「もう昼だ、準備していこう」
「あ、ああ……ねむっ……」
と起き上がり背伸びをする。
そう、マシュアは敬語を辞めることになったのだ。
これからは従者ではなく友人として接する事となった。
「街で昼食を買って馬車へ乗るぞ」
「そうだな、夜飯は隣り街のエルンで食えばいいか」
「エルンに着くのは三日目の昼だ、それまでは野生動物を現地調達して食料にする」
「わかったよ……狩りはお前の十八番だからな」
「じゃあ部屋で準備してくるから一時間後に校門前で集合な」
「ああ、遅れるなよ?」
「んじゃなー」
と部屋から出ていくドレイク。
「まったく……最近どんどんだらしなくなっている気がする。成長しているのは色気と食い気だけだぞ……」
とぼやきながら食器を洗い片付け始める。
「これからは俺の友人として接してくれ、マシュア」
昨晩言われた言葉だ。今まで孤独に戦場で生きてきたマシュアにとっては凄くうれしい言葉だった。
「ったく……男の私を落とそうとしてどうする気だ」
そういうキザなセリフはミュフィス嬢かライラ嬢を落とすために使って欲しいものだ、と思いつつも本当に嬉しかった。
「ジノもバアルも最近色気づいてきてきているからな。誰に取られるか分からんぞ……せめて二人とはいかなくても、片方はそろそろ彼女にすればいいのに。特にミュフィス嬢か……」
そう、ミュフィスは一年が終わる頃にドレイクに告白したのだ。
まあ、分かりやすい子ではあったが思い切った行動だと思う。
素直に応援してやりたかったが、ドレイクはなんと少し待ってくれと言って先延ばしにしたのだ。
「もう一年も経つぞ……女性の好意をなんだと思っているんだ」
はぁ……と食器を拭きながらため息を落とす。
さらに、さらにだライラもドレイクに好意を寄せているのだ。
「贅沢野郎め……戦いしか経験しない青春時代ほど無価値で虚しいものは無いというのに……」
マシュアは戦争孤児だった。
物心ついた時から弓を持たされ魔法を叩き込まれて激しい戦争の中生きてきた。
ドレイクには同じ経験はして欲しくない。
家族を作り幸せになって欲しいのだ。
「今度アイルースに頼んで社交ダンスの練習でもさせようか……」
と本気で心配しているのだ。
ドレイクはここ数年でメキメキと成長し髪も伸ばして後ろで結んでいる。
ドレイク、ジノ、バアルが揃うと絵になると言われて学院の女性徒の間で人気が出ているほどだ。
「ふう……片付いた」
ピカピカにしたシンクと食器達、マシュアは極度の綺麗好きである。
「レナイゼル様とエレナ様にも相談だな……女性の告白を先延ばしにしたなんて知ったら悲しむだろうか?」
どうだろうか? と考える。
それにしても久しぶりだ。
マシュアも今回の里帰りを楽しみにしている。
マシュアは両親の顔も名前も知らないのだ。
そんな自分を暖かく受け入れてくれて、教育し育ててくれた人達を、実の両親みたいに思っている。
「ふっ、楽しみだな。成長した自分を見せに帰れることが、こんなにも誇らしいとは……」
仲間たち、友人たちに感謝だな。
「さて、シャワーでも浴びて出発の準備をするか」
「お待たせー」
「五分遅れているぞ、レイ」
「わりぃな、ちょっと持っていきたいものが多くて」
「では行くか」
今日は歩きで馬車ギルドまで行く。
荷物も多く大変だがまあ力には自信がある二人だ、別に問題ない。
特に話すこともなく歩いていく。
そして歩くこと三十分、馬車ギルドへと着いた。
「護衛が足りないんです」
「護衛なら俺たちに任せてくれ、それでいいか?」
「失礼ですがLvは?」
「俺がLv.80でこっちがLv.88だ」
「おお! ありがたい! すぐにでも出発できます!」
そうして馬車は出発する。
しばらくして夕日が落ち始め馬車は休憩地点の湖にとまった。
焚火を起こして狩りに行くかとマシュアが準備してる時に、俺は話しかける。
「どこも人手不足なんだな」
「冒険者ギルドもきな臭い事件に巻き込まれているらしいからな」
「きな臭い事件?」
「なんでも護衛や街はずれまでの依頼を受けると、白い亡霊が出るとか言われているな……」
「へえ……俺たちに喧嘩売ってくるような馬鹿なら簡単に捕まえれるのにな」
ははっと、余裕の笑みを浮かべる。
「さあ、どうか……なんでも亡霊は相当やり手の三人組らしい、騎士団が出張って捜索しているとか」
「それで捕まらないのは何かありそうだな?」
「私は狩りに行く、皆の警護は任せたぞ」
「ああ、気を付けろよ」
「互いにな」
そう言ってマシュアは森へと消えていく。




