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竜を従え王と成る  作者: 水亥
第二章 エストア魔法騎士学院編
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第16話 模擬戦

 放課後になり、何をするか考えていた時、ウィゼルさんが提案をしてきた。

「僕達と模擬戦をしてみないか?」

 手っ取り早くこちらの実力を測りたいのだろう。

「いいよ、やろう」

 そして学生課で空いている訓練場を借りてチーム分けをする。


 俺達のチームは俺、ジノ、マシュア、バアルの四人。

 相手はミュフィス、ライラ、アイルースさん、ウィゼルさんの四人。


 あっちのチームも顔なじみらしいし連携も取ってくるだろう。


 武器は大体見れば分かる。

「ミュフィスが短杖で後衛、ライラは長杖で後衛、アイルースさんは長杖で中衛、ウィゼルさんが剣と盾で前衛て所かな」

「前衛はレイと俺に任せろ、バアルを中衛、マシュアを後衛に置くとしてどう動く?」


 俺達は実戦経験はあるが量は足りていない。

 向こうはアイルースさんとウィゼルさんくらいか……経験豊富そうなのは。


「今回は互いの力量を見れるいい機会だ、まずは速攻を使って攻撃重視で行こう」

「おう!」


 「今回は模擬戦です、あちらの実力をしかと見極めなければなりません。

そしてこちらは防御が固い。それを相手が崩してこれるかを見て行きましょう。それでいいか、アイルース?」

「問題ありません」

 ちらっと横を見ると緊張しているミュフィスお嬢とライラお嬢が目に映る。

「大丈夫ですよお嬢様方、相手には可哀想ですが、近づくことは不可能ですから」

 そうアイルースは断言する。


「じゃあ模擬戦を始める! 準備はいいか!?」

「どうぞ! 始めてください!」

「では行くぞ!」

 宣言と同時に俺とジノが駆ける!

「水城の加護!」

 アイルースさんの魔法がウィゼルさんの盾に付与される。

 するとウィゼルさんが盾を構え防御の体制を取る!

 ウィゼルさん! 胸を借ります!!

 竜体になり右爪で盾を破壊する勢いで叩き込む!

 ギィインッ!!

 防がれた!!!

「ジノッ!!!」

「ああ!!」

 速度を殺され無防備になった俺と変わってジノの槍が盾をとらえる。

 ギィイインッ!!

 完全に見切られている!

 守備が堅い! ウィゼルさん相手に二人の初撃が防がれた……。

 まだまだ! と格闘の間合いに入り乱戦へと持ち込む!

 ギィンッ! ギィィンッ!

「崩せない!」

 ジノも攻撃を仕掛けていく。

 体制が崩れたジノに木剣が叩き込まれる。

「グッ!!!」

勢いあまり転がってしまう。

「ジノ! 大丈夫か!!」

「ああ! 悪い!」

 即座に体制を整えて慎重に立ち回る。

 が、いくら攻撃しても盾で防がれ捌かれてしまう。

 その間マシュアはウィゼルの戦力を分析していた。

 ウィゼルさんはLv.90近い……動きが違いすぎる。

 それに盾の加護も持っているはず……。

「バアル! 後ろは私に任して行け!」

「やっと来たか……! レイ! ジノ! 俺も行くぞ!」

 ウィゼル目掛けてバアルが駆けだす。

「クソッ! バアル頼む! マシュア!!」

「雷弓の加護よ!」

 雷で出来た矢を弓で放つ音速並みの一撃だ。

 ギィィィインッッ!!!

「クッ!!」

 マシュアの流石の一撃に姿勢を崩されるウィゼル。

「貰った!!」

 バアルが飛び込み剣を走らせる!

「しまった! ミュフィスお嬢っ!!」

「氷壁よ守れ!」

 するとバアルとウィゼルの間に氷の薄い壁が出来上がる。

「薄い!」

 勢いを増した剣が氷壁と激突する。

 ガァアアアンッ!!

 !!

 なんだこの硬さ!!!

 ミュフィスの氷壁によりバアルの一撃も防がれる。

「はぁはあ……! くそっ!」

 するとおもむろにレイがウィゼル目指して走りだす。

「レイ! 一旦引け! また同じだ!」

 だが俺は止まらない。

 ウィゼルが盾を構える。

「ガァアァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 受けの姿勢に入っているウィゼルがゾクッと冷汗をかく。

 俺は思い切り右手を払った。

 ガァアアンッッ!!!

「グゥッッ!!」

 防いだが威力を殺し切れない!!

 ドガッ!!!

 全員が視線で追う……。

 ウィゼルが壁に衝突し血を吐いて倒れ落ちるところだった。


「ウィゼル……? ウィゼル!!!!」

 ライラが叫ぶがウィゼルには聞こえていないようだ。

「レイてめええ!! 何しやがる!!!!」

 ジノが激怒しレイの胸ぐらをつかむ!!


「ライラお嬢様! 急いで聖魔法を!」

「は、はいっ!!!」

「ドレイク君……」

ミュフィスが心配そうにドレイクを見ている……。


「レイ!! やりすぎだろ!! いくらなんでもよ!!! 仲間を殺す気か!!!」

「お、おれがやったのか……?」

「お前っ! 気づいてなかったのかよ……?」

「俺は唯、バアルを助けようとして……それで……わ、悪い、ウィゼルさんを……俺は……」

 俺は感情の整理がつかずに涙を流し、謝る……。

「一旦模擬戦は中止だ! 応急処置が済み次第直ちに医務室へ!! ドレイク様、一旦頭を冷やしてきてください」

 アイルースさんからタオルを渡される。

「あ、ああ……」

 ふらふらとタオルを受け取り俺はこの場から去っていく。

「ジノ、お前も頭を冷やせ」

 バアルがタオルを投げてくる。

「俺……レイにひでえこと言っちまった……」

「だとしたら、落ち着いた時謝りに行けばいい。一緒に頭下げてやるから」

「ああ、悪いな……」

 そうしてジノも訓練場を後にする。


「ウィゼルの意識が戻りました! アイルースさん!」

「ミュフィスお嬢様! 水と氷を!」

「……」

「ミュフィス様!!」

「う、うん!!!」

 泣きながらミュフィスも氷を用意し応急処置に当たる。

 程無くして応急処置は成功し、医務室へとマシュアが運んでいった。

「ライラ様も医務室へ行ってください」

「……でもドレイク君が」

「彼はもう少し一人にしてあげるべきです」

「分かりました」

 ライラはマシュアの後を追って医務室へと向かう。


 ふぅ、まさかあのウィゼルが……。

 アイルースはウィゼルの心配はしていたが命までは大丈夫だろうと確信していた。

 昔からだ……ミュフィスお嬢様が五歳の時、ライラお嬢様の館に着いていった時から彼の事は知っている。

盾の白い加護、それはそう簡単に倒れるものではなく耐久にも補正がかかっている。

しかし、まさかそのウィゼルが生徒相手で気を抜いていたとはいえ吹き飛ばされるなんて……。


 今回アイルースとライラが迅速に処置へ動けたのはウィゼルの頑丈さを知っていたからだった。

 ミュフィスも知ってはいるが、ドレイクが暴走してどこか遠くへいってしまった気がして怖くなり泣いてしまった。

 模擬戦での事故はあることにはある。ただ今回は別にドレイクが悪いわけではない。

 学生相手に気を抜いていたウィゼルも悪いのだ。

 模擬戦とはいえそこは戦場、気を抜けばいつ死んでもおかしくはないのだ。

 ジノもそれを分かっていたが突然の事に対応できずにドレイクにぶつかってしまった。

 もちろんウィゼルの身を案じての発言だったが……。


 一時間ほど時間が経つ。

「アイルースさーん!!」

 するとライラが手をふりながら帰ってきた。

 それをジノは力ない目で見る。

「ウィゼルが帰ってきました!!」

 ライラの後ろから二人歩いてくる。

 マシュアとウィゼルだ。

 そしてジノの前までウィゼルが来て頭を下げた。

「すまなかった!!」

 突然すぎて状況を読み込めないジノ。

「模擬戦とはいえ君たちを甘く見て対処できなかった私の落ち度だ……マシュアさんから聞いたよ。私の為に怒ってくれたのだろう?」

「あ、ああ……とりあえずあんたが無事でよかったよ……」

 ほっとしたジノは、悪い、レイに謝りに行かないと、と言ってドレイクの方へ走っていく。

「あいつは大丈夫そうだな」

 そういってバアルは小さく微笑んだ。


 俺は蛇口からでる水を頭から浴びて文字通り頭を冷やしていた。

「くそっ、力に飲まれてた……」

 竜の身体になると途端に高揚感と全能感が起こる。

 力が格段に上がるのだ、竜でも数百年以上生きてその力をコントロールする術を学んでいく。

 対してドレイクは16歳……力を制御するのは難しい。

「あの時もそうだ、ハイルさんが来なければ確実に暴走していた……今回は仲間相手に手を出してしまった……俺は……」

 悔やんでも悔やみきれない。

 タオルを握っていた手につい力がかかる。

「悪かった!!!」

 !!

「俺! お前に勢いあまって酷いこと言っちまった!! 本当にごめん!!!」

 ジノが謝りに来た。

「ジノ……」

「本当にごめん!!!」

「ウィゼルさんはどうだ?」

「もう治って皆と合流してるよ」

「はは、早すぎんだろ……勢い余って攻撃を放ったのは確かだ、俺も悪かった……」

「!! レイ、何があった?」

「力を制御できねえんだ……上手く付き合っているつもりでも戦闘中は制御を失いやすい」

「そうだったのか……」

「俺もウィゼルさんや皆に謝りに行く。ジノ、ついてきてくれるか?」

「ああ!」


 俺とジノは皆の所へ戻ってきてすぐに……。

「すみませんでした」

 と頭を下げて謝った。

 ウィゼルさんも私が悪かったと謝ろうとしたが、アイルースに頭を殴られ黙っていろと言われる。

「力を制御できない状態で今後その力に頼る事は出来ない」

 アイルースが厳しい言葉を放つ。


 ……もっともだ。

 危険な力だ、いつ仲間を巻き込むか分からない……。

「ただし」

 ……?

「私たちは仲間だ、今後はドレイクの力を制御できるように全員が本気で向き合っていくつもりだ。異論はあるか?」

 ゴクリっ。

 もしかしたらこの中で一番アイルースさんがリーダーにふさわしいのかも……。

「異論有りません!!!」

 ミュフィスが叫ぶ、そしてウィンクをしてきた。

 ミュフィス…… ありがとう。

 思わず泣きそうになる。

「異論無し!」


「では各自解散し、休息とする! 解散!!」

 アイルースさんが解散を告げ、俺達の模擬戦は終わった。

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