第14話 ガイダンス
式を終えた俺達はお互いの従者と合流する。
「まずは俺達から紹介させて貰うよ、ドレイク・ランドロックです。そして俺の従者のマシュアだ」
「マシュアと申します。よろしくお願いします」
「よろしく! 次は私達! ミュフィス・フロージアです! こっちは従者のアイルース!」
「アイルース・ディーネルです。以後お見知りおきを」
水色の髪で長杖を持ち、眼鏡をくいっとしながら挨拶をする様は絵になっていた。
まずいな……。
アイルースはエルフだ。
確かダークエルフとエルフは戦争の件もあり犬猿の仲だったはず。
と気まずくなっていると。
「……あの」
とマシュアが話を切り出そうとする。
するとアイルースが話を始める。
「心配無用だ、従者の格は仕えている主君を一目見れば分かる」
「と言うと?」
疑念の目でマシュアはアイルースの言葉の真意を探る。
「ランドロック様の眼は賢知に溢れた炎を宿している。それだけで敬意を払うに値するお方だ。」
驚いた、誇り高く同族の上位の者にしか敬意を払わないエルフが、敬意を払うとは。
「失礼しました。貴方を少しばかり疑ってしまいました。どうか非礼を詫びさせてください」
マシュアは素直に謝った。
「こちらこそ、貴方の主君を値踏みしてしまいました。どうか許してほしい」
ふふっ、なんだ、大丈夫そうだな。
一通りのやり取りを見て確信する。
上手くいけばマシュアの友人になるのではないだろうか? どうだろうか?
「アイルースは料理も上手いの! ガイダンスが終わったら外で一緒にランチにしましょ!」
そういってミュフィスはアイルースに命じる。
「世界一美味しいアイルース自慢の御馳走を十人前作って頂戴!」
「かしこまりました、ミュフィスお嬢様。」
アイルースは急いでランチを用意する羽目になり退席していく。
「じゃあ、行きましょう! ガイダンスへ!」
とニコニコで歩き出していくミュフィスへついていく。
一年のA組は校舎の三階だ。
階段を上るととんでもない事実が発覚する。
そう、前を行くミュフィスの生足が……いや、違う、スカートからあれが見えそうなのである。
俺はジノと違い決して変態では無いと自負していたが、意識せざるを得ない。
いや、これが普通なのか? どうなんだろ?
とにかく下を見て階段を上りきろう。心頭滅却だ……。
そうして無事に階段を登り切りA組の前に着く。
「ここが私たちの教室かー、なんだか緊張するね……」
「入ろうか」
ガラッとドアを開き中に入る。
そうすると視線が集まり始めた。
「学院長の孫娘か……?」「あっちの男は……?」「ダークエルフだ……」
なんだか居心地が悪いな。
「あっちの席空いているから座ろ?」
「そうだな……」
「では、私はここで失礼します」
「ああ、昼は中庭の時計台の前で集合しよう」
マシュアは別に授業を受けるわけではないのでここで別れる。
窓際の一番最前列が空いていたのでそこに座る。
視線を集めていたのは最初だけだったようですぐに生徒たちの興味は散っていった。
「どんな先生が来てくれるのかな?」
「俺は優しい先生がいいな!」
と談笑していると鐘が鳴る。授業始まりの合図だ。
ガラッとドアが開き赤髪の先生が入ってくる。
「一年A組担当教師のグライ・ワイヤードだ。特技は火の魔法、役職は白聖の炎騎士だ」
ざわっっと生徒たちが話し出す。
「白聖の騎士!」「かっけえ……」「魔法職のおれらは当たりだな」
とざわめいていたがすぐに静まる。
「これが白炎だ」
そういって白い炎を掌の上に現わしてみるワイヤード先生。
「おお!」
するとさっきよりもざわめきが大きくなる。
俺達も驚いていた。
「凄いね! 白い炎だって!」
「魔法の形が綺麗すぎる、出力を制御しきっている証拠だ」
「こんなことも出来るぜ」
「おおお!!!」
今度は白い炎で薔薇を作り上げた。
「俺の白炎は一撃必殺、灰燼にされたくなければ俺の言うことは聞いておけ……いいな?」
「はい!!」
一瞬で騒いでいた生徒達が纏まった、それに俺はこの先生の事が好きになりかけていた。
魔法の技術だ、出力と制御に無駄がなく見惚れてしまった。
「俺のガイダンスで言いたいことは一つだけだ。このクラスは特段優秀な奴らを集めている。それは隣のB組もそうだ。そしてB組とA組の違いは危うさだ」
危うさ……?
「お前ら自身分かっていると思うが、このクラスは全員ユニーク役職だ」
マジか……。
「ワイヤード先生?それの何が危険なんでしょうか?」
一人の生徒が質問する。
「いい質問だ。まず、昨今闇ギルドが王都で暗躍しているのは知っているな?」
「はい」
「じゃあ、この国はなんで未だに崩壊していないか答えてみろ」
「えっと、王都の騎士団が闇ギルドよりも強いからでしょうか?」
「半分正解で、半分不正解だ。いいか? なんで騎士団が闇ギルドよりも強いのかが重要だ。それは加護にある」
加護か、早くも疑問に思っていたことの一つが知れそうだな。
ユニークとはなんなのか? の答えが。
「加護とは星の祈りで得られるものだが、実はそれだけではないんだ。ユニークスキルを持つものは全員、王か神からの加護を受けている」
「王様と神様ですか……?」
神か……星歴以前に存在されていたという、空の神の天竜、海の神の水竜、陸の神の地竜の三柱だ。
「そうだ、お前らが不思議に思っている力は、王と神からの啓示により得るものだ。王は一人だが神からの啓示は別だ。夢の中で話しかけられる経験はしなかったか……?あるいは現実で魔物ではない存在と会話したことは……?」
「僕は夢の中でイカが話しかけてきて、それでイカ墨の加護、いやいやいや、イカ墨じゃない……黒い加護を与えると」
「そう、その黒い加護こそ神からの啓示なんだ。」
「あのイカ墨野郎……いや、イカが神だっていうんですか?」
「そういうことになるな」
啓示か、闇ギルドと戦った時に確かに聞こえた。
貴方に竜の導きがあらんことをと……。
「なるほど、夢に出てきては不思議な踊りを踊っては消えるだけの存在だけではなかったんですね……」
どんな夢だよ……。
「そして神からの啓示を直接受ける方法が一つだけある。それは玉座の間にて祈りを捧げることだ」
祈り……?
「手柄を立てて王様に呼ばれ願いを聞かれる、その時は祈りを願ってみろ。王様が許可すれば神と対話でき、そして、新たなる強い加護を授かることができる」
!!
そうだったのか!!
今やっと謎が解けた、単なる超常現象ではなかったのだ。
確実に神と対話して啓示を受け、加護を授かる方法があるのか……。
「以上が俺が伝えたいことになる、他の国も同様にユニークスキルをその国の王が独占している。そうして犯罪組織と魔法騎士団との戦力差、国力を拡大しているんだ」
なるほど……犯罪組織の者が玉座の間、王に会えるはずもないか。
「お前らも王様から認められる騎士になり、この国の民を守れる強さを身に付けていけ! 以上でガイダンスを終える!」
こうしてワイヤード先生のガイダンスは終わった。




