第109話 開戦
ディアス先輩の指揮の下、一万の兵と騎士がモーゼンギルドへと発った。
国力としては五分、いやうちの国の方がすこし勝っているか……接戦になると思うが信じるしかない。
モーゼンギルドは戦争国家だ、簡単には勝たせてはくれないだろう。
だが、他国を支配して人種差別を行う国の在り方については以前から議論されて来た。
放っておけばうちの国を飲み込む大きさとなって襲い掛かってきたのは間違いないだろう。
俺達は国に残り補給物資や追加の兵の護送等を手伝っている。
まあ手伝っていると言ってもうちの兵も優秀で、準備自体はほぼ見ているだけで終わっていく。
「お疲れ、後は休んでいてくれ」
「はっ!」
働きすぎずに休みを与えながら周りを見ていることも仕事の一つだ。
それともう一つ、西のセヴァイトが動いた時に迅速に対応できるようにも準備している。
俺とハイルさんとフラム副団長が国に残っているのはこの為だ。
モーゼンギルドよりもセヴァイトの方が怖いのだ。
俺は一度会議室へ戻り会議に参加する。
「セヴァイト王国の動きは?」
フラム騎士団長補佐が偵察に行っていた兵に聞く。
「特に動く様子はありません。動くとしても戦いの中盤以降かと」
「しばらく監視を続けるように、違和感は全て報告しろ」
「はっ!」
そういって兵はまた持ち場へと戻っていく。
現場の空気は少しばかりピリピリしている、さっきの兵も報告の際に声が僅かに震えていた。
俺は会議中も逐一ヴァンから戦況の報告を受け取っていた、相手の兵の数、騎士の数、戦況の優劣など。
「ドレイク、どうだ? 敵の動きは?」
「魔導船で此方へと向かってきています」
「どこで当たる?」
「カーレ草原辺りでぶつかりそうですね」
「カーレ草原か……悪くないな。ディアスなら上手く陣形を敷くだろう」
カーレ草原はモーセンギルドの端にある草原だ。
いち早く移動をできたから敵国内で開戦できるのはありがたい。
「近くにあるアルギットの街を占領して補給をする、そう伝えといてくれ」
「はっ!」
俺は席を立ち廊下へと出る。
そしてヴァンを通じてディアス先輩と連絡を取る。
「アルギットか、俺の予想だともう少し押し込めそうだぜ? どうするよ?」
「いや、一度そこで止まってください。セヴァイトの動きもあるので」
「分かったぜ、後は任せとけ」
「御武運を」
もう一度会議室へと入る。
「ハイル、モーゼンギルドの死神はどうするつもりだ?」
陛下が言った通りモーゼンギルドには死神と呼ばれている者がいる。
2m50を超える体躯で鎌を操るらしい、聞いたことはある。
「死神か……ディアスがいれば勝てます、ただ、少なくとも被害は出るでしょうね」
「そうか、ドレイクだけでも動かした方が良いのではないか?」
「ドレイクの竜との連絡手段は非常に強力です。僕達が優勢を取り続けていられるのは彼のおかげです」
「なら致し方なし」
「気になるんだけどいいかい?」
「どうぞ、フィーゲル殿下」
「モーゼンギルドは大国だ、一年以内に決着何て可能なのかい?」
「それは分かりません、ただ、ディアスは優秀な騎士でありながら優秀な軍師です。ディアス以上に戦場を見れるものはまずいないかと」
(ディアス先輩……確かに頭は切れるが、ハイルさんにここまで言わせる程なのか)
「分かった。ハイルがそこまで言うのなら信じよう」
一日が経過して魔導船がカーレ草原へと降り立つ報告を受け取る。
「今ディアス先輩たちがカーレ草原へと降り立ちました」
「よし、一旦私達はセヴァイトの方へと目を向けるぞ」
「大変です!!」
一人の兵が慌てて会議室へと入ってくる。
「何事だ?」
フラム騎士団長補佐が兵に聞く。
「西のセヴァイト王国が! 動きました!! ワイバーンに乗って此方へ向かっています!!」
ワイバーン、知能が高い竜種の魔物だ。
「数は?」
「ワイバーン兵は千騎で兵は二万です!」
「分かった、私とドレイクで兵を連れて出陣する。 国境で迎え撃つぞ!」
「はっ!」
俺はすぐにヴァンに連絡して竜の群れを呼び集める。
城門前にたどり着いた俺達は既に集まっている兵士達を鼓舞する。
「相手の先兵はたかがワイバーン千騎!! 対する此方は本物の竜三千騎だ!! 一時間もいらん!! 秒で蹴りをつけるぞ!!」
「「「おおおおお!!!」」」
その声に呼応するかのように遠くから竜の鳴き声が聞こえてくる。
「あれが……ドレイク騎士団長補佐の黒竜隊」「すげえ……」
空を埋め尽くす竜の群れが現れる。
そして順に地上へと降りてくる。
ヴァンが集めてくれた黒竜三千体が到着する。
「ありがとな、ヴァン」
「うん、僕もまた力を付けたからね。いつでも頼ってよ」
「兵は手綱を取って背に乗り込め!」
慣れないながらも竜の背に乗っていく兵士達。
「行くぞ!」
俺の号令によって順に空へと羽ばたき目的地の国境まで一気に向かっていく。




