第107話 騎士道
星歴3021年4月。
入団試験本番当日を迎えた俺は修練場で最初に誰が来るかを待っていた。
「おーっす」
ジノとバアルもやってきた、毎年の事だ。
「今年はレイは試験官か、頑張れよ!」
「負けたりするなよ?」
二人から背中を叩かれて士気が上がる。
「勝つさ、先輩だからな」
騎士団は年齢関係なく先に入ったものが先輩となる。
そしてそこからは補佐になるか副団長、団長になるかで偉さが変わってくる。
「にしても今日は楽しみだな、果たして何人来て何人受かるか……」
「ごきげんよう」
声のした方を見ると黒髪の綺麗な女性が立っていた。
「貴方達の誰が私の実力を測ってくれるの?」
そう問われたので迷わず答える。
「俺が試験官のドレイクだ、あんたは?」
「剣王国から参りました色葉です、鬼葉の妹と言った方が分かりやすいかしら?」
「!!」
「それで? 復習に来たのか? それとも試験を受けに?」
「うふふっ、決まっているじゃないですか、もちろん色々と思うところはありますが、試験を受けにですよ」
「ならこちらに来て剣を抜け、いつでもいいぜ?」
「あら、準備は出来ているのでここから始めても?」
結構距離が空いているがまあいいか。
「構わない、ジノ、バアル、離れていてくれ」
ジノとバアルが離れていく。
ゆっくりと刀を抜きながら歩いてくる色葉。
(刀刃の刀よりも長いな……)
「では、参ります」
一瞬だ。
一瞬で間合いまで詰められた。
「光剣流!! 王殺!!!」
真っすぐに俺の顔目掛けて突きを入れてくる。
「おっと」
それを俺は見切っていたので軽く躱した。
「残光の刃!!」
刀を構えなおしたかと思ったらまた高速で刀を振るってきた。
(速い、力もある、ここまで昇ってきただけはある)
しかし、それでやられるほど俺は甘くない。
生成した斧で軽くいなす。
「!!」
いきなりの斧に驚いたのか距離を取る色葉。
「噂には聞いていましたがこれほどまでに強いとは……うふふ、燃えて来ました」
「俺はまだお前に光るものは感じてない、本気で来いよ?」
「行きますよ!!」
また単純な正面からの速攻。
結果は同じだと思ったら後ろに気配を感じた。
「色葉ぁ!! 挟んで終わらすぞ!!」
いつの間にか後ろに大男が出現して大剣を振るうところだ。
「うふふっ! 終わりよ!!」
「戦神テュールよ!」
俺は竜化して速攻で大男の胴体を竜尾で貫いた。
「ごふっ!!」
そして反転して色葉の攻撃を大男で防ぐ。
「刃武!!」
そして死角をつくった俺は尾を振って大男を吹き飛ばし、爪で色葉の両腕を斬り飛ばした。
「ううっ!!!」
静寂が場を包む。
「勝負ありだな」
ジノが近づいてくる。
そして槍を色葉の首に突き付ける。
「では、説明して貰おうか?」
ジノが冷静に怒っているのは不意打ちの事だろう。
バアルが色葉にポーションをかけて止血させる。
「はっ! お優しいことね、私が女だから?」
「いいや、弱者を虐めて殺したんじゃ俺達の沽券にかかわるからな」
「俺達が、弱者だと……?」
大男がフラフラしながら立ち上がる。
「そうだ、一人じゃ勝てないと思ったからあんな狡い真似したんだろう?」
「そんなに甘い理由じゃないさ、復習に来たんだ俺達は! 鬼葉の敵討ちに!」
女の方はうなだれている。
「姉御がいなくなって遂に国は統率を失い崩壊しかけた!! だからと言って他国の傘下に下るなど俺のプライドが許さねえ!!」
「そうかよ、じゃあここで殺しても構わないな?」
色葉の首に槍が当てられ血が落ちる。
「待て! 色葉は違う! 復習に来たのは俺だけだ!!」
「だけど、この女も乗り気だったぜ?」
俺はどうするかを考えている。
色葉は確かに試験を受けに来たといった、予想外だったのは大男の介入だけだ。
「ジノ、色葉は許してやる」
「……レイ、お前甘くなったな?」
「そう思われてもいい、こいつは確かに試験を受けに来たと言っていた」
「なら好きにしろ、あの男は捕縛する」
そうして刃武は捕まり連行されていった。
残ったのは俺達と色葉。
俺はエルフのポーションを使って色葉の手を元通りに治療する。
「私を許した理由は?」
「目で分かる、お前は試験に真剣に望んでいた。対峙していた俺には分かる」
「そう……」
立ち上がった色葉は力なく立ち上がり試験会場を後にしようとする。
「待てよ」
「?」
「合格だ、お前は魔法師団に入れ」
「……え?」
「今夜はパーティーだからそれまで城で休んでると良い」
「だ、だって私は!」
「一度の失敗で人生全て決まるなんてことはねえ、これからは仲間だ、俺達を見て学んでいけばいい。そうだろ?」
俺はジノとバアルに聞く。
「だな」
「良いこと言うじゃねえか」
「あ、ありがとうございますっ!!」
泣いてしまった。
まあ、取り合えず一人目の合格者だ、声をかけてやるか。
「色葉」
「はい」
「合格おめでとう」
「……はい!」
俺達は次々来る入団者を試験していく。
昼休憩をはさんで夜の八時まで続いた。
全ての試験が終わって俺達はパーティー会場へと向かう。
既に魔法の試験はおわっているらしくフラム副団長の下へと向かう。
「終わったか」
「はい、合格者は五名です」
「上々だ、こっちは三名取った」
計八名、これは今までに無かった入団者の数だ。
例年通りに新人は前に呼ばれて自己紹介をしていく。
「色葉です、お願いします」
「ん? 色葉?」
刀刃が何かに気づいた。
「色葉じゃないか!?」
「え……? 刀刃君?」
「そうだよ! 僕だよ!!」
「そうでしたか、刀刃君もここに……」
なんだなんだとざわざわし始める。
「知り合いか?」
フラム副団長が聞く。
「ええ、幼馴染です」
(へえ、幼馴染か)
新人の挨拶も終わってパーティーは続く。
「先輩」
「俺?」
「はい、カーミラです、よろしくお願いします」
「おう」
そう言ってカーミラ次の人へと挨拶回りをしていく。
それにしてもちっちゃかったな、何歳なんだ?
俺は不思議に思ったがまあいいかと考えるのをやめる。
「カーミラは十四歳だ」
「ディアス先輩……って十四?」
「ああ、俺が聞いたら教えてくれたぜ?」
「先輩、女性に年齢を聞くのは無しですよ?」
「いやいやいや、あの見た目は誰でも気になるだろ!?」
「まあ、確かに……」
そうか、十四歳で受かったのか……最年少なのでは? というかLv.100だよな? 恐ろしいな……。
しばらく飲んでいるとまたカーミラがこっちに来た。
「先輩」
「どうした?」
「妊娠させてください」
「ゴホッゴホッ!!」
俺は飲んでいたシャンパンを全て吹き出した。
なんだなんだと注目が集まる。
「妊娠させてください」
「待て待て待て! 妊娠? 何言ってるか分かっているのか?」
「はい、今夜にでも」
今夜にでもって本当に何を言っているんだ?
「ヒューッ!」「よっ! 色男!」「おめでとう!!」
周りが凄い冷やかしてくる、後で覚えてろよ?
「待てって、そういうのは好きな人とだな」
「好きです」
「……あのな、将来を誓い合った人とだな」
「結婚してください」
駄目だ……押しが強すぎる。
「いいじゃねえか? お嫁さんが一人増えるくらい」
「いや、簡単に決めれることじゃないですよ……」
「カーミラちゃんはドレイクのどこが好きなんだ?」
「全部です」
「だってよ?」
うーん、どうしようか。
断る前提だが、何を言っても聞かなそうだし……。
「私、赤ちゃんが欲しいんです……生まれた時から家族はいなくて、憧れだったんです」
なるほどな……家族への憧れか……。
「いいじゃないっすか」
「……メイル、分かっていってるのか?」
「私も家族に憧れる気持ちは分かるっすよ……」
「それは分かるけどな……」
「それにレイの子供は何人いても困りませんよ!」
うーん、そう言ってもらえるのは嬉しいが。
「この子は頼れる人もいなさそうですし……」
俺はメイルに弱い、本当に弱いのだ。
「分かった、娘にしよう、どうだ?」
「!!」
「やったー!! 新しい家族っすね!」
「……家族、これが家族……ですか」
その子が涙を流したのを俺は見逃さなかった。
不安だったんだろう、あの魔王国で育ち、親もいないで単身他国に来て。
「まあ、時間をかけて仲良くなればいいか……」
「先輩」
「なんだ?」
「ありがとうございます。ドラゴニアに来て、夢がかないました」
「そうか」
「はい」
こうして俺は娘としてカーミラを迎え入れたのであった。




