第104話 実力
俺はウォーミングアップを念入りに取って、道場の中央でハイルさんと対面している。
相手は騎士団長、この国で一番強い騎士だ。
どこまで通用するのか楽しみだ。
「僕はいつでもいいよ」
ハイルさんも準備万端らしい。
俺は呼吸を整えてオーケーサインをジークさんに出す。
「では、騎士団長ハイル・アーツ対魔法師団ドレイク・ランドロックの試合を行う!!」
門下生達がこの一戦を見守っている。
「双方構えて!! ……試合始め!!」
「戦神……!!」
俺は詠唱に入ろうとしたが、ハイルさんはもう詰めてきていて間合いに入っている。
「チッ!!」
剣を躱して蹴りを放つが躱される。
(斧を振る余裕はなさそうだな……)
俺は闘術のみで応戦する。
「すげえ……」「ハイルさん相手に闘術で……」「どっちが勝つんだ……」
周りがざわつき始める。
俺は嫌というほど武器持ち相手に闘術だけで戦ってきた経験がある。
流石にそれを分かっているハイルさんは無理な攻撃をしてこない。
一旦距離が空く。
「うん、斧は出さないんだね?」
「自慢できる熟練度じゃないので」
「そうかい? 僕は結構やれると思うけどね」
結構ね……それじゃあ駄目だ。
勝つつもりで俺はここに立っている。
「戦神テュールよ、私に勝利を」
竜化して爪を伸ばす。
「行きますよ?」
「いつでもどうぞ?」
俺は一気に近接戦へと持ち込む。
「!!」
(流石に見切られている!!)
一つ一つの技が全て見切られている。
「昔のゲルドみたいだ、それじゃあ僕には勝てないよ」
蹴りを叩き込まれて後ろへよろける。
「光刃の加護よ」
なんだ? 付与魔法か?
ハイルさんが迫撃を仕掛けてくる、そして間合いの外で剣を振るい始めた。
それを俺は危険だと判断して両爪をクロスして盾にする。
何が来る!!?
剣は俺には届かなかった、だが……。
甲高い音がして両爪に衝撃が走る!
「ぐぅぅぅぅっ!!」
「お見事! よく守ったね!!」
間合い外からの斬撃! リーチが伸びている!!
一旦距離を取る。
「厄介ですね……間合いが測れない……」
「さあ、どうするんだい?」
俺は斧を生成する。
「神竜の加護よ……神殺しの一撃を」
俺は持ちうる最大の力で剣を壊すことに決めた。
「いいね! 僕も全力で相手するよ」
ハイルさんは剣を構えなおす。
空気が引き締まる、観客は目が離せなくなっていた。
そして互いの武器が全力で衝突した。
「!!」
ハイルさんの武器を弾いた俺は迫撃で斬りかかる!!
「光の加護!!」
身をひねって俺の一撃をギリギリ躱したハイルさんが俺の懐に入って手で胴体を貫いた。
「ガフッ!!」
血を吐き出す。
「ここまでかな」
ハイルさんが俺の胴体から腕を引き抜き、ジークさんが勝敗を決する。
「勝者!! ハイル・アーツ!!!」
「すげえ!」「騎士団長が勝った!!」「いや、今のは互角だ……」
セーラが駆けよって来て傷を治してくれる。
「これで大丈夫だわ、痛いところは?」
「大丈夫だ、ありがとうセーラ」
「いいわよ、バアルがお世話になってるからね」
ウィンクをして去っていく。
ハイルさんは剣を拾い上げて隅々まで見ていた。
「俺の負けです、ありがとうございました」
「うん、僕も危なかったよ。一撃で剣にヒビが入るなんてね」
互いに握手をする。
パチパチと拍手が起こり俺達は先生の下へと戻る。
「いや、凄まじい攻防だった、特にドレイク、儂は勝つかと思ったぞ」
「ありがとうございます先生」
「ハイルも見事じゃった」
「はは、必死でしたよ」
悔しいな、もう少し追い詰めていたら決まっていたのに。
「ジーク、稽古を見てやってくれ」
「はい、指導してきます」
ジークさんは門下生たちを指導しにいった。
「ここ数年で強さの常識が変わっておる」
「そうですね、きっかけ一つで誰でも一気に強くなりますよ」
「それがおそろしくもある……儂らは若いのが時代に取り残されぬように育てるしかないんじゃがの」
「僕もここに入って一気に強くなりました。先生のおかげで今もなんだかんだやれています」
「そうか、元気なら何よりじゃ」
「ドレイク君は強くなったきっかけってあるかい?」
「俺ですか? 俺はジノと試合して初めて一本取った日から成長しましたね」
「へえ、きっかけはジノ君だったんだ」
「ええ。そこからガスノットだったり、敗北を何度も経験して少しずつ、今は精神的にも成長できたかなって思ってます」
「そうだね……騎士団にはね、僕よりも強い人がいたんだよ」
「誰でしょうか?」
「元魔法師団の副団長、ティア・カーズ」
聞いたことない人だな……。
「闇ギルド員から一斉に奇襲を受けて亡くなったんだ……」
「そうだったんですか……」
「フラムの友人でね、恋人でもあった」
「!!」
「あの日からフラムは一気に強くなったよ、昔は特に目立った魔法使いではなかったんだよ?」
「フラム副団長が……」
「そして、君が来てからフラムは少しずつ笑うようになった。僕はね、感謝しているんだ、君に」
俺はその言葉を重く受け止めた。
「俺はいずれ騎士団長に成りますよ、それがフラム副団長へできる恩返しです」
「うん、フラムも僕もその日が来たらきっと、喜ぶよ。これからも魔法師団を頼むよ?」
「任せてください」
俺は明日、結婚相手の親へ挨拶がある為一足先に帰ることにした。




