第10話 学院
星歴3016年4月。
各地で桜が咲き誇り、春の陽気が活気を作る。
俺は今日、王都エストアにある王立エストア魔法騎士学院に向けて街を出発をする。
15歳以上の年齢から入学を認められている学院で、7年間過ごし卒業出来たものは騎士として国から認められ、各地の領地や王都の魔法騎士団に入団することができるようになる。
そして卒業することは容易ではない。
私服に着替えた俺は荷物の確認をする。
「よし、忘れ物は無いな」
コンコンコン。
「どうぞ」
「お坊ちゃま、表に馬車が到着しました」
「ああ、今行く」
家から出ると使用人と両親が待っていた。
「レイ」
「母さん……」
「頑張ってくるのよ?」
心配そうに母さんは言う。
「うん!頑張ってくるよ!」
「レイ」
「父さん」
「いつでも帰ってきていいからな」
「ありがとう、父さん! じゃあ、行ってくるよ! 皆元気で!!」
マシュアと共に馬車に乗り御者へ合図を出す。
「ドレイク様ー! お元気でー!!」
メイドたちが声を上げる。
「坊ちゃまー! 応援していますぞー!」
執事長も見送ってくれている。
「さあ、いくぞマシュア!」
「はい、ドレイク様」
場所を変えてフローメル領では
「準備できたー姉ちゃん?」
「あーもう! 持っていく物多すぎて! しおり持ったっけ!?」
「ミュフィス! 馬車に遅れるわよ!!」
「お母さん! 私の髪飾りどこー!?」
「……」
「旦那様、ミュフィスお嬢様は無事に王都へと着きますでしょうか……」
「心配だな……胃が痛くなってきた……」
そしてアミュスフィア領では
「行ってきまーす! お母さま!お父さま!」
「気を付けるのよー! 手紙待ってるからねー!」
「ライラお嬢様ー! 素敵な旦那様を見つけてきてくださいねー!!」
「もう!フフッ、行ってきまーす!」
「もう少しで王都に着きます、ドレイク様」
「ああ、気を抜くなよ。闇ギルドには目を付けられているからな」
馬車に揺られること数分、王都に着きそのまま学院へと馬車は進んでいく。
入学式は明日だ……学院とは父上が話を付けていて生徒手帳と制服は受け取っている。
「着きました、ここが王都が誇る王立エストア魔法騎士学院です」
御者の男が説明してくれた通りにようやく辿り着いた。
「ありがとう、これは礼だ受け取ってくれ」
チップを受け取り馬車は去っていった。
「学生課に行って入寮の手続きを済ませるぞ」
校門を潜ると桜並木が広がっていた。
「見事な桜だ、綺麗ですね……」
「ああ、この学院名物らしいからな桜は」
辺りにも新入生らしき生徒がいて、ワイワイと桜を見ている。
校舎はとても広い、魔法棟なんかは要塞のようだ。
ここには魔法騎士の卵が通っている、それは国の将来の戦力という事だ。
出資する金持ち貴族や商人も多く、学院は年を重ねるごとに大きくなっていってるらしい、噂だが……。
学生課のある一般校舎にたどり着き受付で入学の証明として生徒手帳を見せる。
「はい、新入生のドレイク・ランドロック君ですね、確認が取れました。学生課は2階にあります」
「ああ、ありがとう」
2階へ上がり学生課の前に作られている列に並ぶ。
「腹減ったな……寮に荷物を置いたら外に出て飯にしよう」
「食堂なんかは利用されないのですか?」
「うーん……そうだな、じゃあ今日は寮の食堂で食べようかな」
そう話していると順番が回ってきた。
「次の学生さんどうぞー」
「新入生です。入寮について説明を受けに来ました」
数分間の説明を受ける。
「はい、これが鍵になります。無くしたらすぐに私達、学生課へと知らせるように」
「ありがとうございます」
1人部屋の鍵を2つ手に入れて寮へと向かう。
この学院には面白い校則がある。学生は入寮の際にLvや役職に応じて部屋が割り振られるのだ。
その中でも滅多にないのがLv.80以上の生徒や従者が住める豪華な寮の部屋だ。
そしてマシュアはLv.84。
そう、ドレイクはマシュアから鍵を貰いマシュアはドレイクが住むはずの部屋へと寝泊まりする。
これは学生課で質問したけど校則的にはokらしい。
「じゃあまた明日」
「はい」
こうしてそれぞれの寮への帰路へとついていく。
さて、俺が寝泊まりする寮はどんなもんか……。
城が立っていた。
は?
広い庭には噴水やプールが付いている。
なんだここ? 金持ち貴族の別荘でももう少し小さいぞ……。
まあ中に入ってみるか。
「おかえりなさいませ、ランドロック様」
なんと執事とメイド付きである。
ははっ、いや、凄すぎんだろ……。
「本日の夕食はいかがなさいますか?」
「ああ、よろしく頼むよ」
「かしこまりました、お部屋へと案内します、こちらへ」
執事に着いていき2階にある一室へと通される。
「こちらが、ドレイク・ランドロック様のお部屋でございます」
風呂キッチン付きのひとりでは広すぎる部屋だった。
はは、なんでもありだなもう。
まあとりあえず荷物を置いて飯食いに行くか。
さてどんなコース料理が出てくるのかなと思ってたら意外に栄養価が考えられているメニューが出てきて驚かされた。
特にシチューは美味かった。
「はあ……」
風呂でシャワーを浴びながら考える。
これからの事だ。
学生派閥。
騎士団から依頼が直接降りてくる生徒会。
今後の事を考えればここに所属して実際の任務や仕事を覚えておけば卒業後は即戦力だ。
ダンジョン攻略を主とするダンジョン班。
Lvや熟練度を上げたいのならば迷うことなくここだが危険が常に伴う。
対闇ギルド専門のギルド光の剣
ここは王都のギルドや騎士団と結託して闇ギルド排除に尽力している。
常に人手不足で任務も激務ばかり。
ただ、闇ギルドをこのまま放っておくわけにもいかない。
それぞれの派閥の色と良さがある。
ドレイクは考えていたが心の中ではすでに決まっていた。
今までの経験の中で自分を一番成長させた出来事は何かと。
あの闇ギルドとの闘いだ、敗北に固執しているわけではない。
あの時戦わなければ今の自分は存在していない。
もっと強くなりたい。
あの時仲間を守れなかった自分をなぐってやりたい。
今度は必ず勝つ……メラメラと闘志が燃えてくる。
あのラプダ兄弟、俺を一度見逃したけど容赦はしない。
今ならあの連携を躱してとどめを刺せる。
思い上がりか? いや、それほど自分を追い込み鍛えて来たつもりだ。
「よし、決めた光の剣に入る」
シャワーを止め浴槽につかる。
後は明日マシュアに話すくらいか。
「さてと、風呂からあがってテレビでも観よ」
ドライヤーで髪を乾かしテレビを付ける
「次のニュースです。ギルド風の歌の歌姫が何者かによって連れ去られました」
歌姫……?
「犯行現場には音声魔道具に残されたメッセージのようなものが、こちらをお聞き下さい。……ザーーーーッ」
なんだ雑音で聞こえないな。
紅茶を入れようとしたその瞬間
「ククッ、今頃見てんだろ、なあ、坊主……?」
ガタッ! ガチャーン!!
ティーカップがテーブルから落ちて割れる。
これは明らかな挑発だ……俺を釣りだすための罠かもしれない……。
でも行かなければ歌姫は殺される……?
どうする?
コンコンコン。
ビクッ! 反射的にドアの方へ振り返る。
何だ? この時間に誰が?
ガチャッ。
「ドレイク様」
そこには弓を携えたマシュアがいた。
自然と震えは止まっていた。
そうだ俺は一人じゃない、マシュアがいる。
頼りになる仲間がいるんだ!
「行くぞマシュア!奴らの好きにさせるな!!」
「はっ!!」
王城のとある一室
「ハイル様、今の音声どう見ますか?」
「うーん、特定の誰かに対してのメッセージかな?」
「だとすれば奴らは罠を構えているはずです」
「関係ないよ。関係ない、所詮奴らは騎士団からは逃げられない。正面から、このハイル・アーツが踏み潰すまでだ」




