FINAL MISSIOM
FINAL MISSION〜
お楽しみください。
竜〜FINAL MISSION〜
「この根に触れろ?バカバカしい」
世界中が拒絶していた。
触ろうとして手を引っこめる者がほとんどだった。
恐怖は簡単には打ち破れなかった。
画像がジョン・ストライクを映した。
インカムにマユリの声が届いた。
「ジョン・ストライク、一秒なのだよそれ以上根に触れると危険なのだよ」
「ありがとう。わかったよ」
インカムを外して、ゆっくりとそしてはっきりと話し始めた。
「人種、宗教、思想、国家方針、エネルギー問題――
これらの違いで世界は未だひとつになれていない。
しかし今日。
我々はチャンスを得た。
世界がひとつになるチャンスを。
私は妻マーガレットが、ふたなりだったことを知った時、ひとつの誓いを立てた。
アメリカ合衆国は今後、ふたなりへの偏見、差別、を無くす先進国として世界をリードしていく――と。
しかし、それだけでは足りなかった。
平等であるべきなのはふたなりだけでない。
世界に生きる全ての人々だ。
この道が困難ではあるのはわかっている。
それでもアメリカは、世界平和の道筋を求め続ける。
だからこそ――
全世界に問う!
今何をすべきかを――
そして今こそ――
その一歩を踏み出すときなのだと!
一秒!一秒でいいのです。あなたの勇気を私にください」
そう言うと力強く根を掴んだ!
その一掴みが世界を動かした。
◇
マユリの足元が光る。世界樹のエネルギーが吹き出す真上だった。
「来た!」世界中から集められた生命エネルギーが、マユリの身体を駆け巡った。
世界樹とマユリがその生命エネルギーをエナジーへと変換した。
そのエナジー出力は、一瞬だけ竜化した舞に匹敵するほどまで跳ね上がった。
倉木綾香総理に、集まったふたなりからエナジーが注がれた。
「すごいエナジーだわ――これならとびっきりすごいドッペルゲンガーが出来る」
尾を噛みちぎられて逆上したリタを舞は思い切り蹴った!
地面に穴が出来るほどリタが地面に叩きつけられた。
カリンの目が光った。
「今だ!」
「このぉ〜」
リタが怒りながら立ち上がった。
振り返ると、後ろから舞が接近していた。
(何かエナジーが変だ!こいつ罠を仕掛けたのか!)
「バレバレなんだよ!ドッペルゲンガーだな!」
左手の槍でドッペルゲンガーを薙ぎ払った。
ドッペルゲンガーが霧散した。
「本体はそこだ!」
さっきの分身とは桁違いのエナジーを纏った舞がリタの隙をついて逆から接近して来た。
「これが本体!この私をこんな簡単な罠で騙せるとおもったか?!」
右手の槍を思い切り突き出した。
不意をつこうとした舞の腹に槍が刺ささった。
「ううぐぅぅ」
リタが叫んだ!
「勝った!」
舞が血を吐きながら中指を立てた。
「ハハハッハこの負け犬がぁ!」
ジジジと腹を貫通された舞の身体がぶれていった。
「は?」
舞に擬態したマユリだった。
「負け犬はお前なのだよ!!」
視線が上に移動した。
――つられてリタも上を見た。――――
竜になった舞の体が眩い金色に輝いていた。
結の。
マユリの。
モカの。
カリンの。
ゆかの。
エミリーの。
ティアの。
アスカの。
マキナの。
サナの。
リナの。
ミナの。
美由紀の。
LABOメンバーの。
サラの。
マーガレットの。
綾香の。
ハギの。
キキョウの。
ナデシコの。
スズナの。
ナズナの。
名も知らぬ四柱の欠片たちの。
そして世界の。
全ての今まで紡いできたエナジーが収束して舞のナイフに集まった。
そのナイフは願いであり、祈りであり、愛だった。
「おりゃゃゃぁぁぁ!このみんなの刃でお前を……悲しみの連鎖を……断ち切る!!」
真上から裂帛の気合とともに、舞の刃はリタの頭上から一直線に走り、その身体を黒い瘴気ごと縦に断ち切った。
「あああががぁ」
右目と左目が離れていく……黒い瘴気が2つを繋ごうと蠢いた。
「な、なぜ……私が……」
「最初から本物はあんたの真上よ」
リタを蹴り飛ばした瞬間、カリンは舞を上空へ転移させていた。
地上に残った二体の舞は、綾香とマユリが作った囮だった。
「ドッペルゲンガーを見破ったと勝ち誇ってくれて助かったわ!」
腹を貫かれたマユリの傍にマユリが立っていた。
腹を貫かれたマユリもドッペルゲンガーだった。
ゆっくりと分身が霧散していった。
「全人類から集められたエナジーをお前は本物の舞と見誤ったのだよ」
遠い地の綾香に思いを馳せた。
「本当なら私がお腹を貫かれていたのだがね――感謝なのだよ」
二体同時に擬態をもドッペルゲンガーに出来た、綾香の精神力とそれを可能にした、集まったふたなりたちのエナジーの勝利だった。
「ふぅ……みんな――ありがとう」
全世界が大歓声を上げた。
地球が揺れたようだった。
◇
結がモカがカリンがマユリが舞の元へ駆け寄った。
舞が膝をついて倒れた。
視線が動くその視界の端にまだ両断されたリタが立っていた。
「そんな……バカな!!この私がぁ、」
黒い瘴気がかろうじて右と左を繋いでいた。
離れた目で何かを探しているようだった。
「一体何を探してるの?」
リタが最後の力ですごい速さで目標に向かって飛んだ!
舞が気付いた。
「進化の種!」
「カリン瞬間移動を!」
「ダメだよ、舞姉エナジーがもう……」
舞が全速で追った。
「あの時トドメをさすべきだった!」
舞の刃は肉体を断った。
だが、リタの核となる黒い瘴気までは消し去れていなかった。
先にリタが種に辿り着いた。
二つに割れた身体の間に種を取り込んだそのまま身体が接合していった。
「ククククハハハハハハククハハハハハハハハハ!」
「私は負けたが世界は貰っていくぞ!」
リタが善悪の知識の木の種を自らに取り込んだ。
リタが樹木になっていった。
普通の木ではないのは一目でわかった。
全てを破壊に導く木だった。
きっと世界を侵食して滅ぼすだろう。
黒い根がエデンの地面を割り、空間そのものへ食い込んでいった。
枝の先では、まだ起きてもいない未来の街が枯れ落ちていた。
結、モカ、カリン、マユリが追いついた。
「こ……これは……」
「リタが進化の種を喰った」
「ヤバいのがわかるよ!」
「これは世界の終末になるのだよ、それにこの木は過去、現在、未来全てに跨り生きている。本当にこれは……」
マユリですら解決策が見つけられない。
しかし舞にはわかっていたもうこれしかないと……
舞はナイフを一本づつ結とマユリに渡した。
「な?なに?」
「遺品じゃないわよ!私との絆の道標、戻るべき魂の座標として持ってて欲しい」
「何をするつもりなの?」
「私が進化の種を抑える」
「あの木の中に入り種を抑え込むわ、私にはそれが出来るってわかっているの、この竜の力で私は種を持って抑え込めると!地球を救うにはもうこれしかない」
「また舞ばっかり」
マユリが結の肩を抱いた。
「舞!必ず見つけ出すから頼んだのだよ」
舞は戦闘服を脱いだ。
フェアリーという役目も、武器も、鎧も置いていく。
最後は《舞》という存在だけになった。
モカとカリンを抱きしめた。
「モカ、カリン、二人はこれからもマユリと結を護って……私の帰る場所を無くさないでね」
モカとカリンの決意のこもった手の力が舞の背中に痛い程伝わってきた。
大丈夫!私は死なない!きっと生きる!
結、マユリ、モカ、カリンありがとう。
舞の身体が光り輝き、善悪の知識の木の中に入っていった。
◇
善悪の知識の木の中は過去現在未来が溶け合っていた。
〈金色に輝く自分〉が
あの結と出会ったバーで見ていた。
あのツインビルの八十八階のガラス越しに目が合った。
ブラン城でマユリと飲んだコーヒーの中から傷ついた自分達を心配していた。
世界樹の横穴でモカに三角関係を問われた時のナイフの鏡面からモカからの質問へ戸惑う自分を見ていた。
そして未来…………
ずっと見守られていたのではなかった。
あれは今、この場所から過去を見つめる舞自身だった。
すぐに種を見つけ出した。
舞は種を抱きしめて竜に頼んだ。
これでいいわ――
『承知した——』
金色の竜が、舞の身体と種を包み込み、その身体を透明な結晶へと変わっていった。
リタの悲鳴が聞こえた。
「種が消える……ああ……私も消える……」
木がどんどん枯れていく。
崩れていく。
そして消えた。
消えゆく瞬間、リタの思念が囁いた。
(ねぇティア……私……何か間違えてたの?)
(そうね、その答えはあの娘たちが未来で示してくれるわ)
そしてそのあとにクリスタルだけが残っていた。
四人の間を、爽やかな風が静かに吹き抜けた。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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