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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月舞
妖精編

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臨界点

臨界点、お楽しみくださいね<!☆∀☆!>


三日月舞

妖精編〜臨界点〜




研修開始を控えたわずかな休息時間。

 二人は静かな部屋で向かい合い、結跏趺坐——いわゆる坐禅の姿勢を組んでいた。

 結が舞からヨガを学んでいた。

 精神集中には最高の効果がある――

 深く、ゆっくりと呼吸する。

 吸い込んだ空気が肺を満たし吐き出すたびに心が静まっていく。

  

「そう……いいよ……結……そのまま」

 結は目を閉じたまま頷く。


 呼吸を重ね、お互いの鼓動が少しずつ近く感じてくる。

(んっ……また……なにか変だ……)

 舞は自分の体の中の違和感の正体が何なのか分からなかった。

 身体の奥底――いや、もっと深い場所。

 そこから何か得体の知れない力が湧き上がってくる。

 

 いつからだ?


 そうだあの時だ。

 ティアの掌が肩に触れた時、あの時からだ。あの時は身体が整い楽になっただけだった。

 しかしそれ以降――

 ヨガでチャクラを回そうとするとそれに呼応して得体の知れない力がどんどん溢れるようになっていた。まるで自分の身体の中に無限の力に繋がる通路が出来てしまったようだった。

 

「ふぅぅぅぅ」

 

 呼吸でなんとかバランスを保つ。

 大丈夫だ。落ち着け……

 

 結と合わせていく。言葉はなく、ただ自然に、呼吸を重ねる。心が触れ合い、溶け合う。

 お互いの存在がそれぞれの輪郭を優しく保ってくれる。

 

 ――そのはずだった。


「……舞……?」

 結の声が微かに震えた。

「……なんか……熱くない……?」


 舞はゆっくりと目を開いた。次の瞬間。


 ドクン——

 胸の奥で『何か』が脈打った。

「っ……!」


 熱い。


 違う!


 これは熱じゃない。


 それは単なる体温の上昇ではい。

 内側から制御不能のエネルギーが湧き上がっている。

「わ……私も……」

 結も苦しそうに胸を押さえた。

 

「……舞……これが……エナジー……?」

 

 二人が触れ合っていた場所から、淡い光がにじむ。

 それは脈打つように強まっていく。互いのエナジーが共鳴し合い、爆発的に膨れ上がっていく。

 

「……止まらない!……」

 結は思わず舞の肩を掴む。

 その瞬間、

 舞の中の『何か』が反応した。

 視界が鮮明になる。

 結の鼓動。呼吸。肌の熱。血流の音さえ、聞こえそうだった。

 

(……なんなの?これ!……)


 結もまた自分の身体に起きている変化に怯えていた。

 喉が渇く。


 違う。


 渇いているのは喉ではない。


 もっと深い本能的な『何か』が飢えている。

 

 身体の奥で、熱の奔流がうねり、まるで『何か』が目覚めようとしているかのようだった。


「舞……怖い……止めて!……止めて!」

 

「結……これ普通じゃない……」

 

 二人の体温は急激に上昇し、呼吸は荒く、意識がふわりと揺らぐ。

 部屋の照明がちらつき、空気が微かに震える。

 エナジーが臨界点に向かい暴走していた。

 

 二人の間に走ったのは、純粋な恐怖と、未知への高揚だった。

 互いの額を合わせ、必死に呼吸を整えようとする。

 

 だが、吸った空気が肺から出ていかない。

 

 心臓の鼓動だけがやけに大きく脈打った。


 ドクン。

 ドクン。

 ドクン――そして

二人のエナジーが、完全に『共鳴臨界』へと到達した。

「あっ……ああああっ……ぁ」

 舞の身体は意思とは関係なく激しく痙攣していた。

 

 全身が燃えるように熱い。


 骨が軋む。


 筋肉が悲鳴を上げる。


 なのに――心の奥底ではもっと力を求める歓喜が渦巻いてもいた。

  

「結!これ以上は……!」結を見て、舞の叫びが途切れた。

 

 結の虹彩が縦長に裂ける。


「つぁぁ……ぁぁ!」

 

 結の悲鳴と共に犬歯が伸び、鋭い牙のように変わっていく。

 結が自分の口元に触れて……震えた。

  

 「ああ……何これ?……私……どうなっちゃうの?……」


 舞を見た瞬間――


 メキ、メキ——


 聞いたことのない鈍い音がした。


「あ!ああああぁぁぁ……!……」


 舞の額に亀裂のような光が走り、そこから薄紫色の角が内側から押し出されていく。

 

 焼けるような激痛。


 いや、頭蓋骨そのものが内側から作り変えられるような感覚だった。


「結!!ああ、ダメぇ……それ以上は!……」


 二人の身体は本能のままに痙攣を続ける。


 止まらない。

 止められない。

 

 エナジー暴走と変異の螺旋が加速していく。

 

 結の喉から聞いたことのないような咆哮が迸った。

 

「ごおああああああーーーーー」

 

 それは苦痛だけではなかった。

 人の領域を超えた何かが歓喜しているような咆哮だった。

 

 舞の意識が崩れていく。

 理性が剥がされていく。

 舞の本能が全てを飲み込もうとしていた。


 それでも最後に浮かんだのは自分ではなかった。


「誰か!結を……結を、助けて!!」

 

 最後の自分の意思を振り絞り部屋のエマージェンシーコールを叩いた!

 

その口からは獣の咆哮が漏れる。

「あがおおおおおおお」

 

 直後――警報が鳴り響き、医療班が雪崩れ込んできた。

 暴れる二人を鎮静化させようとした医療班が、次々と弾き飛ばされる。

 悲鳴と怒号が、部屋に交錯した。

 

 ゆか、エミリー、二人のフェアリーも駆けつけたが、二人ですら単独で抑えることが出来ない力の奔流。

 

「こ……これは!舞?結?!!そんな!」

 

 マユリが走り込んで来て二人の腕に注射を打とうとする。

 針が――入らない。

(皮膚が硬質化している……!?)


 舞の爪がマユリの背中深くを切り裂いた!

 白衣が血で染まっていく。

「痛いのだよ!この暴れん坊!!」

 懐から鎮静用のスプレーを出して二人の口に吹き付ける。

 ゆかとエミリーも鎮静スプレーを浴びせる。

 動きが鈍くなる。

 何とか強力な鎮静剤を多量に打ち込み、ようやく嵐は去っていった。

  

 担架に乗せられる二人の姿はあまりに異様だった。 

 結は牙を剥き出しにしたヴァンパイアのように

   

 舞は頭から角を生やした鬼のように

 二人は変貌していた。

 

 マユリは見た。意識を失う瞬間、舞と結の瞳から透明な涙が溢れ流れ落ちるのが見えた。

 

「君達といると……本当に……退屈しないのだよ……」

 

 そう言い、膝をついて力尽きた。

 


 その一部始終をモニターで見ている者がいた。

「クックックッ……やはりあの二人だった!」

 歓喜の声を上げて叫ぶ。その口角が深く吊り上がる。

「――やっと見つけた!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読んでいただいてありがとうございます。

なかなか衝撃的な回でした(゜∀゜)

二人はどうなってしまうのでしょう?


次回の更新は明日19時です。



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