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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月
妖精編

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恩返し

恩返し〜楽しんでください


三日月舞

妖精編〜恩返し〜



 二人は五日間眠り続けていた。

 その間に遺伝子検査、精密検査——ありとあらゆる医学的、科学的な検証が試みられた。

 

 科学技術局のマユリも、不眠不休で二人を元に戻す方法を模索していた。

 ときおり背中の傷が痛み、その度に歯を食いしばった。

 

 ゆかとエミリーも時間の許す限り二人を見守りに来ていた。


 ゆかがマユリに声をかけた。

「背中の傷……痛むのでしょ?」

 

「かすり傷なのだよ。それより……私を傷つけたと知ったらこの二人はきっと……」

 マユリは、ゆかとエミリーにいつになく真剣な顔で向き直った。

 

「ゆか、エミリー、二人が目覚めても何も言わないでおくれよ?」

 

「優しいのね、マユリは――」

 

 ゆかの言葉に照れ隠しをするように二人のベッドに視線を投げた。

「そんなこと言わないでくれたまえよ」

 眠っている二人には届かないほど小さな、優しい会話だった。


 ◇

 

 そして医療班の検査結果は衝撃的だった。

 二人の体内で暴走していたエネルギーは潜在能力の覚醒によるものだった。

 結はヴァンパイアの遺伝子因子を持つ者。

 舞は鬼の遺伝子因子を持つ者。

 検査結果はそう示していた。

 

 アンドロギュノス医療班が誇る最新医療を駆使しても二人の変異は戻らなかった。

 病室で横たわる二人は、牙や角を宿したまま、深い眠りの底に沈んでいた。

 しかしその頃、二人の意識は荒れ狂う激流のような力の奔流に呑まれていた。

 そこは、暴走したエナジーが流れる通路のような場所。

 二人は互いの手を強く握り、抗うことのできない流れの中で、遥か先に見える微かな光へ必死に手を伸ばしていた。 

 

 ベッドで眠る二人の間でマユリはゆっくりと二人の掛け布団を捲る。

 舞の共鳴紋は赤く。

 結の共鳴紋は青く。

 鈍い光を放っていた。

「この光は一体……」

 共鳴紋……ふたなりだけに刻まれた紋様。

 理由もなにもわからない。

 唯一、わかっているのはエナジーという未知の力がこの共鳴紋から生まれているということだった。

 

 こつ、こつ、と規則正しい靴音近づいて、やがて部屋のドアがノックされた。

 一人の女性が静かに病室に入ってきた。

 マユリが驚いたようにその名を呼んだ。

「ティア……」

「様子は?」

「まだここに運ばれたままの状態なのだよ」

「どうしてここに?」

「二人が心配だから――というのは、理由にならないかしら?」

 

 マユリがティアを睨んだ。

「あらあら、怖い顔……」

「二人を……どうするつもりなのかな?」

「どうもしないわ……今はこの異形化を元に戻したいのでしょ?そのために来たのよ」

 ティアは二人の頭に手を当て何かを探るように目を閉じた。

「やはり、二人の変異の原因は、エナジーのオーバーロードね。このレゾナンス・シグマの輝きが物語っているわ。

 元々二人が持つ遺伝子因子に過剰なエナジーが注ぎ込まれてその遺伝情報が爆発的進化を促した」

 

「色々詳しそうなのだね……元に戻るの?」

 

「これはエナジーがまだ二人の中で遺伝因子を活性化させているからよ。それさえ正常化できれば、元に戻ることは可能だと私は思うわ。だって、二人は人間だもの。きっと負けないわ。心当たりがあるからここは信用してくれるかしら?」

 

 ティアは部屋を出て、電話でどこかへ連絡して誰かを呼んだようだった。

 電話口では神妙そうに話しているが、その口元は人には見せられないほどの深い笑みが浮かんでいた。

 

 マユリが眠っている二人を見ながら

「私が好き勝手にはさせないのだよ……COCOONの整備……急がないといけないね」

 と呟いた。

 

 しばらくすると医療センターに三人の少女たちが駆けつけてきた。かつてゼノバイオ製薬の中央研究棟の地下で捕らえられ、結とゆかに助けられた、サナ、リナ、ミナだった。

 彼女たちは変わり果てた二人を見て絶句した。

 

「そんな……結さんがこんなことに」

 マユリが三人を見て

「もう一人は、あの時捕らえられてた、舞という女性なのだよ。

 君たちがティアに呼ばれた〈希望〉なのかい?」

 

 サナが涙を流しながら言った。

「本当に助けてもらった恩返しがしたいの」

 ミナが続く。

「私たちはあれからアンドロギュノスで保護されて、検査の結果、私たちのエナジーは少し特殊だということを知りました」

 リナが胸の前で両手を握った。

「戦うことは出来ないけど私達は治癒に特化した癒しのエナジーだと教えてもらいました」

 サナが眠り続ける二人を見つめる。

「ティアさんは、私たちの治癒の能力ならこのお二人の乱れたエナジーを整えることが出来るかもしれない。そう言っていました」

 三人は深く頭を下げた。

「ぜひ私たちにお二人を診させてください」

 と懇願した。


 マユリは三人の手を取り

「ぜひともお願いしたいのだよ!この二人は、私たちふたなりの希望なのだから!」

 

 マユリは三人の集中を促すために部屋を出た。

「頼んだのだよ」

 LABOに向かって歩いていくその顔には何かを決めたような決意がこもっていた。

 

 

 三人は両手をそっと結と舞の胸元に当て、深呼吸を始めた。

 三人のエナジーは戦闘向きではなかった。

 けれど傷ついたエナジーを癒し、整えることに

 非常に特化していた。

 

「すごい底知れないエナジー」

 三人の額から汗が滴る。

「リナ、ミナ、必ずやり遂げよう!」

 温かい光が掌から二人の体内へ流れ込む。

 暴走していたエナジーを少しずつ受け止め、乱れを整え安定した形で戻していく。

 治療が始まった。

 

 三人は三日三晩、交代でその作業を続けた。

 何度も膝をつきそうになった。

 一人が限界を迎えれば、残る二人が支える。

 交代しながら、それでも手を離すことは無く、癒しの光が途絶えることもなかった。

 

 そしてその時が訪れた。


 静かに、祈りが通じたように、共鳴紋の輝きが弱くなっていく。

 やがて光が消えると、結の尖った牙は元に戻り、舞の角は少しずつ短くなり頭の奥に消えていった。

 

二人の体温が平熱に戻り、ついに完全な人間の姿へと回復した。

 

「ああ……良かった……後は目を覚ますのを待つだけ」

 結と舞の指先が、ピクっと動いた。

 

 緊張が切れた。

 三人の少女が糸の切れた操り人形のように崩れ落ちる。

 気力と体力の限界で床に倒れ込もうとした、

 その瞬間——優しく、抱きとめられた。

 

 その身体を優しく抱き止めたのは、意識を取り戻した舞と結だった。


挿絵(By みてみん)


 二人は優しく三人を抱きとめ自分たちが寝ていたベッドに静かに寝かせた。

 

 舞と結は言葉を交わすことなくお互いを見て頷く。

 お互いのエナジーを通じて、すべて記憶に刻まれていた。

 ベッドでぐったりとしている三人の少女に優しい視線を送る。

「ありがとう」

「もうあなたたちに涙を流させたりはしないからね」

 と眠る少女たちに固く誓った。

 

 舞は結を見つめて、静かに語りかけた。

「結、私たちはきっと……少し、人とは違う力を持ってるみたいだね」

「身体の中から自分じゃない何かが、食い破って這い出してくるような感覚」

 結は変異の瞬間を思い出し、微かに震える。

 

 舞は眠る、サナ、リナ、ミナに目を移し言葉を続けた。

「本当にこの子たちには助けられたね、でもあの力は暴走さえしなければこれからの私たちの役に立つと思うの……きっと制御する方法はあるはずだよ」

「うん。二人で乗り越えていこうね」

 

 マユリが部屋に飛び込んできた。

 はぁ、はぁ、と息が荒い

「舞……結……」

 その後の言葉が出てこなかった。

「マユリ――ありがとう。ずっとそばに居てくれたね?」

「君たちがいないと本当に退屈なのだよ!」

 言葉に涙が混じった。

 

「おかえり。舞、結」

 

読んでいただいてありがとうございます。


次から「訓練編」です


次回更新は明日19時です(o^^o)



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