黄金四柱
〜黄金四柱〜
お楽しみください。
三日月
竜〜黄金四柱〜
アメリカの軍事衛星は電磁パルスの影響を回避していた。
超光学レンズにより光の塔の映像がホワイトハウス内の軍作戦本部に映し出された。
アジア連邦軍の進行は止まった。
「あの五人がやってくれた」
ジョン・ストライクが大きく息吐いた。
妻であり大統領補佐官のマーガレットは涙を流しながら言った。
「あの五人だけの力じゃない気がする……あの人たちは、これまで出会った人たちの想いまで背負って戦っているのよ」
「ジョン!この衛星画像を何とか日本へ、いや世界に発信しましょう。このレゾナント達の生き様を覚悟を全世界に!」
アジア連邦空母との戦闘境界線ギリギリで待機していたアメリカ軍最新鋭空母「フリーダム」から映像ドローンが無数に発射された。
そして大統領命令が発令された。
この一連の事実を隠すことなく全世界に知らしめる!
アメリカの技術力。日本からの技術支援も始まっている。
倉木総理の檄が飛ぶ。
「今この映像を全世界に発信することに全勢力を!」
リアルタイムで世界樹の様子が映し出された。
これまで世界は共性を気味悪がって、差別して迫害していた。
そんな彼女たちが今、己の命を賭けて世界を救おうと血を流している。
人は変われる…
◇
黄金のライカンスロープ
黄金のフェニックス
黄金のヴァンパイア
黄金の鬼
が悲しみの縁に立っていた。
仲間たちの悲しい犠牲で繋がれる今と未来。
四人はティアの前に立った。
ティアは夢にまで見た四柱の集合を見ても歓喜の気持ちが湧く訳でもなく、初めて自分の信念が揺らいでいるのを感じていた。
「なんなの?あなたたち?!不完全で未成熟な出来損ないの人間がどうしてそんな魂の色をしているの?どうしてそんなに光り輝いているの?」
「ティア……あなたはずっと見てきたはずよ、私たちは不完全で未成熟だけど、だからこそこの命を大切に出来る!愛を!命を!次に託して行くことができるのよ!もう知ってるでしょ?」
ティアの唇が震えていた。
「私はリタの祈りを間違えて受け取ったとでも言うの?」
「結果としてリタの願いは、あなたを永遠の呪いに縛り付けたのよ」
「愛する人を永遠に縛り付けるなんて愛とは言わないわ」
「ああ……リタ……私は分からない。1万年生きているというのに……この時間が全て呪いだと言うの?私は進化の種を手に入れ未来へ帰り、新たな神となり人類を今度こそ歪んだ世界を正しき方向に導くのよ!止まれない!止まらない!」
「わかったわ、ティアが欲してやまない進化の種が何なのか一緒に見に行こう!待ちに待った四柱が四人揃ったのよ、しかし言っておくわ!世界を消滅させたりは絶対にしない!」
「みんないいよね?」舞が結とモカとカリンを順に見つめた。
「もちろんだよ」結が笑っていた。
「当たり前じゃん」モカが親指を立てた。
「やりましょう」カリンが頷いた。
舞がティアに聞いた。
「どうすればいいの?」
「四人同時にこの光の塔に触れるのよ」
鬼。
ヴァンパイア。
ライカンスロープ。
フェニックス。
四人がゆっくりと塔に近づいていく。
そして同時に塔に触れた。
塔の光が変化し
塔が黄金色に染まる。
ティアが恍惚とした表情で見ている。
「竜が現れる!」
塔の光が眩く輝く。
四人の共鳴紋も眩く輝き、吸収されるように光に包まれる。
光は少しづつ収束していきカタチになってくる。
鬼の角。
ヴァンパイアの牙。
ライカンの尾。
フェニックスの翼。
四つの力が、光の中で一つの輪郭を形作っていく。
「おおぉ人外の証、太古の昔、神が捨て去った竜の力が蘇る!そう、四柱とは竜の力が四つに別れた物。今こうして光の竜が!私は間違ってなかった。そして竜に乗り光の塔を登る!」
四人の意識はとてつもない大きな存在に包まれていた。
意識はあるがその意思で竜が動く訳ではなかった。
ティアが竜に触れる。
竜と同化していく。
同化というより竜の大きな意識……例えるなら竜の意識が大海とすればティアの自我は、そこに落ちた一滴に過ぎなかった。
金色に光り輝く竜が螺旋を描きながら光の塔を登っていく。
全世界の人間が金色の竜を見た。
衛星画像が受信可能な全世界に配信されている。
ある者は恐怖し声を上げ
ある者は手を合わせ祈り
ある者は膝をついて願っていた。
金色の竜を仰向けに倒れているマユリが見ている。
半機械の機能がほとんど停止していた。
「光の竜……四柱とはそういうことだったのだね」
1人つぶやく……
マユリの中で声がする
(光の竜……美しいね)
半人半機の身体に残っていたマキナの魂の欠片が話しかけた。
(ああ、美しいのだよ)
(登っていくね、貴女も進化の種見たかった?)
(動けるなら地団駄踏んでるところなのだよ)
(マユリ?またかっこよく自己犠牲出来たと思ってるんじゃないの?)
(ふふふ。なかなかいい最後だったのだよ)
(残念ね!またその『いい最後』は私が頂いていくわ)
(ーーどういうことなのかな?)
(残っていた私の全てでマユリの脳内の中枢ナノマシンだけは電磁パルスから守ったの。もう既に自己修復が始まっているわ。
だからこれがホントのホント最後の言葉…………)
マキナの声が、慈雨のようにマユリの魂に染み渡る。
(私に愛を教えてくれてありがとう。
愛してる。
……生きて!)
音もなくマユリの魂からマキナの魂の欠片が消えた。
昔、人は死の瞬間に二十一グラム軽くなる――それが魂の重さだ、と唱えた者がいた。
マユリは鼻で笑った……
(…………二十一グラム…………あはは……全く)
二十一グラムどころかマユリの目から大量の涙が零れてマユリが軽くなった。
指先が、かすかに動いた。
次に腕。
停止していたナノマシンが一つ、また一つと再起動し、身体へ力が戻ってくる。
「まったく……本当に最後まで格好をつける娘なのだよ」
マユリは震える腕を持ち上げた。
――そして、目前を通り過ぎようとした竜の尾へ飛びついた。
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次回更新は明日19時です。
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