燦命
〜燦命〜
お楽しみください。
三日月
四柱〜燦命〜
「門が消えた!」
門の前で待機していた兵士たちが色めき立つ。
空母もそろそろ近海に着くだろう。
アジア連邦軍が受けていた命令は、根の元凶たる世界樹の調査。
「あの力を我が連邦が手に入れることが出来たならアメリカに勝てる!もしそれが叶わぬならば世界樹は排除対象となる!」
そういう命令だった。
武器だけを化け物に預け、足止めをくらっていた兵士たちは次々と街の中に入っていく。
同時に超高密度のエナジーが、燃え上がる火球となり、世界樹に沿って登っていた。
カリンは上空からいち早く兵士たちが街に入ってくるのを見た。
「門は?なぜ?どうなっているの?」
兵士たちは目の前の異形の化け物にパニックを起こし、戦況を混沌へ加速させた。
賛成派反対派関係なしに攻撃し始めた。
戦場では人の理性など簡単に壊れる。
日常が崩れ、恐怖に晒され、命令に取り憑かれ人は簡単に引き金を引く。
近代兵器がその場のふたなりたちを無差別に攻撃していく。
「あああ……やめろ!」
モカが悲痛な叫びをあげる。
錯乱するティアに何かオーラのようなものが纏われていく……
(何?あれ?ティア自身気づいてない?)
ティアの錯乱が急に止まり、しばらく動かなくなり
「ふぅ」と息を吐いた。
何かを察知する。
「ふふふ……この私が我を忘れてしまうとは!門が開いてしまった。私の世界樹に土足で踏み込んだ罪を味わうがいい。あなたたちとはまた後でたっぷりと遊んであげるわ」
ティアはそういうと空高く飛んで光の塔に向かって飛んで行った。
「待って!ティア!」
舞の叫びは届かなかった。
舞と結とマユリはティアを追った。
ティアは光の塔の傍に現れ光の獅子を顕現させた。
獅子が牙を剥き兵士たちを薙ぎ倒していく。
マシンガンや銃は獅子を素通りする。
光の獅子が別の兵士たちに向かって咆哮しながら疾走していく。
「撃て!!」
兵士の声と共にバチバチと帯電しながら弾が打ち出された。
現代科学最先端の武器、高出力電磁レールガンにより磁場が乱れ光の獅子は撃ち抜かれて霧散する。
「人間どもめ! 」
獅子が撃たれてティアが怒りの声を上げる。
ティアから発せられた重力波が兵士を押し潰していく。
カリンの目の前でどんどんと歪な四柱の欠片達が傷付き倒れていく。
さっきまで兵士と同じ武器で戦っていたのに反対派も関係なしに標的にされている。
モカも数発被弾して動きが少しずつ鈍くなる。
ライカンになり筋肉に力を込めると弾丸が押し出され地面に落ちる。
「ちくしょう!いったいどうなってる?」
キキョウとハギのいるところにロケットランチャーが発射された。モカが助けに走るが間に合わない。
間一髪カリンが羽でロケットランチャーを弾く。
右羽がズタズタになるがすぐに炎で復活してまた飛び上がる。
「撃て!」
高出力電磁レールガンが発射され、モカの目の前で反対派のメンバーが跡形もなく蒸発して消えた。
まだ名も知らぬ元四柱の欠片たち……
こんな簡単に跡形もなく消え去るなど人の死に方ではなかった。
モカはアジア連邦の兵士たちに叫ぶ
「どうしてこんな無差別に!やめろ!なんの意味があるんだ!!」
モカは迷いなく兵士と四柱の欠片、反対派ナズナとスズナの射線上に仁王立ちした。
さっきの二人を消し飛ばした高出力電磁レールガンがモカを狙う。
「撃て!」
レールガンが発射された。
(もし私が死んで四柱が欠けたらこの争いも止まるのか?)
そんな考えがモカの脳裏によぎる。
そういう気持ちが見抜かれたのか?
「モカのバカヤロー」
と叫びながらカリンが急降下してきてモカを庇う。
カリンの左羽が消し飛んだ。
「うぐぅ……モカ!バカなこと思うな!」
「カリン!なんで!」
バシっ!
カリンは残った右腕で、モカの頬を平手で叩いた!
「モカ。何時でも一緒って言ってたよね?」
「次、こんなこと心の隅っこにでも思ったらグーパンチだからね!」
レールガンに弾が装填される。
スズナとナズナが
「どうして私たちを守った?お前たちを殺そうとしてるのだぞ!」という。
「私たちは諦めない!」
「私たちは護る!」
無慈悲にレールガンの発砲が命令される。
「撃て!」
カリンはモカを抱えて飛ぼうとするが左羽の復活が間に合わない。モカはそれを見てカリンの前に仁王立ちする。
「そんな弾!受け止めてやる!」
――その時モカとカリンの目の前に人が立ち塞がった。生きている反対派賛成派関係なしにハギ、キキョウ、スズナ、ナズナがモカとカリンの盾となった。
全員傷だらけで血が滴っている。
「あんた達なら全て上手くやってくれそうな気がするのさ」
反対派ナズナの声がした。
「この数千年の呪いを解き放って!」
「頼んだよ」
最後に見えたのは四人の願いを込めた笑顔だった。
レールガンの衝撃波が四柱の欠片達を飲み込んでいく。
そこには、何も残っていなかった。
四柱としてここに来た過去も。
今、モカとカリンを守るために盾となった命も。
明日も未来も来ると信じていた祈りも。
全て消えてしまった。
「あああああ……みんな!……あぁぁぁ」
モカの叫びが、無情な戦場に響き渡る。
モカとカリンが呆けたように座り込んで震えていた。
すぐに次弾が装填準備される、その間の数秒が、彼女たちに残された時間だった。
アジア連邦の兵士の無慈悲な命令が聞こえた。
「これでもう守るものはない!撃て!!」
「みんな……ごめん」
モカとカリンが手を繋ぐ。
——その時、燃え上がる火球が飛んできた。
着弾したと思って目を瞑ったがいつまでも着弾しなかった。
……シュゥゥゥと肉の焼けつく匂いがする。
モカとカリンが目を開ける前に声が聞こえた。
「くっぅ!……あの時、私を救ってくれたモカとカリンはこんなことで諦めてしまう弱い戦士だったの?」
覚えのある声がした。
「アスカさん!!!」
モルディブでの人工ふたなり実験の被検体で暴走して五人に助けられたアスカだった。
行動を共にしたいと言っていたがみんなの説得で故郷モルディブの家族の元に帰っていた仲間だった。
にっこりと笑い白い歯を見せながら
「必要な時には呼んでくれるって言ってたのにさ!ちっともお呼びが来ないから来ちゃったよ!」
アスカが音速を超えて飛んでくるレールガンの弾頭を両手の掌から高濃度のエナジーを放出して、レールガンの弾頭を受け止めた。衝撃波で両手の手首から先が吹き飛んで血が流れていた。
「あああ……アスカさん……止めて……手が」
「かすり傷さ! あなたたちは絶対に死なせないから!」
司令官が叫ぶ!
「なんだまだ邪魔がいるぞ!」
次の弾頭がセットされていく……
「わたしさ、あんた達が羨ましかったんだよ、ほら私って一人じゃん?こんなだから恋人もいないし、でもあんた達と出会って助けられて、こんな私でも仲間って呼んでもらえるのかな?って」
司令官が発射準備急げ!と檄を飛ばす。
モカとカリンが震えながら満身の力で立ち上がる。
魂が叫ぶ!
「アスカさんは大切な仲間だから!」
アスカは血の滲む腕で、モルディブの花、白く可憐なプルメリアのように笑ってみせた。
あの時、舞たちが
必死で守り抜いた、優しい笑顔のまま。
「あなたたちは私が守るから」
アスカが走り出した。
周りの兵士がアスカに発砲する。
無数の弾丸がアスカに浴びせられる。
「アスカさん!あああああ……」
モカとカリンが届かない手を伸ばす。
アスカはレールガンに辿り着き。
モカとカリンを見る。
「あの時繋いでもらった、命ここで使わせてもらうよ」
そういうと自らのエナジーを暴走させ全てのエネルギーを強制的に意志の力で内側へのベクトルに変える。
チラリと視線の端にこっちを向いて涙を流しながら叫んでいるモカとカリンが見えた。
(うん。これでいい……)
刹那――。
眩い閃光が戦場を焼き、すべてを飲み込む爆音とともにレールガンとアスカの姿が消えた。
「……………………!!!」
戦場から全ての敵意が消えた。
アスカのエナジーの残滓がキラキラと光り輝き、モカとカリンの魂に降り注ぐ。
(託したよ……)
アスカの魂とモカとカリンの魂が共鳴した。
「……あああーおおおおぉ……」
モカとカリンの身体が黄金色に光り輝く。
黄金のライカンスロープが天を穿つ雄叫びをあげた。
黄金のフェニックスが絶望を焼き払い羽ばたいた。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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