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フェアリー•レゾナンス  作者: 三日月
四柱編

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86/94

燦命

〜燦命〜


お楽しみください。


三日月

四柱〜燦命〜

「門の結界が消えた!」

 門の前で待機していた兵士たちが色めき立つ。

 空母もそろそろ近海に着くだろう。

 アジア連邦軍が受けていた命令は、根の元凶たる世界樹の調査。

 

「あの力を我が連邦が手に入れることが出来たならアメリカに勝てる!もしそれが叶わぬならば世界樹は排除対象となる!」

 そういう命令だった。

 武器だけを化け物に預け、足止めをくらっていた兵士たちは次々と街の中に入っていった。

 


 その頃、超高密度のエナジーを纏った火球が世界樹の幹に沿って凄まじい速度で上昇していた。

 


 カリンは上空からいち早く兵士たちが街に入ってくるのを見た。

「門は?なぜ?どうなっているの?」

 兵士たちは目の前の異形の化け物にパニックを起こし、戦況を混沌へ加速させた。

 

 賛成派反対派関係なしに攻撃し始めた。

 

 戦場では人の理性など簡単に壊れる。

 日常が崩れ、恐怖に晒され、命令に取り憑かれ人は簡単に引き金を引く。

 

 近代兵器がその場のレゾナントたちを無差別に攻撃していく。

 

「あああ……やめろ!」

 

 モカが悲痛な叫びをあげる。



◇

 


 平静を失ったティアの身体を薄い影のようなものが包んでいく。

 (何?あれ?ティア自身気づいてない?)

 

 ティアの錯乱が唐突に止まった。

 しばらく微動だせず立ち尽くし、

 やがて再起動したように「ふぅ」と細い息を吐いた。


 何かを察知する。

 

「ふふふ……この私が我を忘れてしまうとは!門が開いてしまった。私の世界樹に土足で踏み込んだ罪を味わうがいい。あなたたちとはまた後でたっぷりと遊んであげるわ」

 

 ティアはそういうと空高く浮かび上がり、光の塔に向かって飛んで行った。

「待って!ティア!」

 舞の叫びは届かなかった。

 舞と結とマユリはティアを追った。

 

 ティアは光の塔の傍に現れ光の獅子を顕現させた。

 獅子が牙を剥き兵士たちを薙ぎ倒していく。

 マシンガンや銃は獅子を素通りする。

 

 光の獅子が別の兵士たちに向かって咆哮しながら疾走していく。

 

「エナジー砲!!エネルギー充填完了」

 

 兵士の声と共にバチバチと帯電しながらエネルギーが収束していく

 

「エナジー砲撃て!!」

 キュィィィン!

 アジア連邦が作り出したエナジー兵器だった。

 エナジーの奔流が一直線に光の獅子を撃ち抜いた。

 

「人間どもめ! 」

 獅子が撃たれてティアが怒りの声を上げた。

 ティアから発せられた重力波が兵士を押し潰していく。

 

◇ 


 カリンの目の前でどんどんと歪な四柱の欠片達が傷付き倒れていく。

 つい先ほどまで同じ武器を手にしていた反対派さえ、今では敵味方の区別なく標的にされていた。

 

 モカも数発被弾して動きが少しずつ鈍くなる。

 ライカンになり筋肉に力を込めると弾丸が押し出され地面に落ちる。

 

「ちくしょう!いったいどうなってる?」

 

 キキョウとハギのいるところにロケットランチャーが発射された。モカが助けに走るが間に合わない。

 

 間一髪カリンが羽でロケットランチャーを弾く。

 右羽がズタズタになるがすぐに炎で復活してまた飛び上がる。

「エナジー砲!撃て!」

 エナジー砲が発射され、モカの目の前で反対派のメンバーが跡形もなく蒸発して消えた。

 

 まだ名も知らぬ元四柱の欠片たち……

 こんな簡単に跡形もなく消え去るなど人の死に方ではなかった。

 

 モカはアジア連邦の兵士たちに叫ぶ

「どうしてこんな無差別に!やめろ!なんの意味があるんだ!!」

 

 モカは迷いなく兵士と四柱の欠片、反対派ナズナとスズナの射線上に仁王立ちした。

 

 さっきの二人を消し飛ばした、エナジー砲がモカを狙う。

 

「撃て!」

 エナジーが発射された。

 

 (もし私が死んで四柱が欠けたらこの争いも止まるのか?)

 そんな考えがモカの脳裏によぎる。

 

 そういう気持ちが見抜かれたのか?

「モカのバカヤロー」

 と叫びながらカリンが急降下してきてモカを庇う。

 カリンの左羽が消し飛んだ。

「うぐぅ……モカ!バカなこと思うな!」

「カリン!なんで!」

 バシっ!

 カリンは残った右腕で、モカの頬を平手で叩いた!

「モカ。何時でも一緒って言ってたよね?」

 カリンはモカに拳を見せる。

「次、そんなことを少しでも思ったらブン殴るから!」

 

 エナジー砲にエネルギーが装填される。

 砲身周囲の蓄電ユニットが再び発光し始める。

 エナジー充填率が上昇していく 

 

 スズナとナズナが

「どうして私たちを守った?お前たちを殺そうとしてるのだぞ!」という。

 

「私たちは諦めない!」

「私たちは護る!」

 

 エネルギーが充填され

 キュィィィン――

 砲身のリング状ユニットに青白い光が次々と収束していく。

 「撃て!」

 カリンはモカを抱えて飛ぼうとするが左羽の復活が間に合わない。モカはそれを見てカリンの前に仁王立ちする。

 

「そんな弾!受け止めてやる!」

 

 ――その時モカとカリンの目の前に人が立ち塞がった。生き残っていたハギ、キキョウ、スズナ、ナズナが反対派も賛成派も関係なく、モカとカリンの盾となった。

 全員傷だらけで血が滴っている。

 ナズナが血に濡れた顔で笑った。

 

「あんた達なら全て上手くやってくれそうな気がするのさ」

 

 反対派スズナの声がした。

「この数千年の呪いを解き放って!」

 

「頼んだよ」

 最後に見えたのは四人の願いを込めた笑顔だった。

 

 エナジー砲から発射された光の奔流が四柱の欠片達を飲み込んでいく。

 そこには、何も残っていなかった。

 四柱としてここに来た過去も。

 何千年生きた身体も消えてしまった。


 だが——最後に《託された想い》だけが、モカとカリンの中に残っていた。

  

「あああああ……みんな!……あぁぁぁ」

 

 モカの叫びが、無情な戦場に響き渡る。


 モカとカリンが呆けたように座り込んで震えていた。

 

 すぐにエネルギーが充填される、その間の数秒が、モカとカリンに残された時間だった。

 

 アジア連邦の兵士の無慈悲な命令が聞こえた。

 

「これでもう守るものはない!撃て!!」

 

「みんな……ごめん」

 

 モカとカリンが手を繋ぐ。


 キュィィィン——

 バシュ!!


 ——その時、燃え上がる火球が飛んできた。

 

 衝撃を覚悟して目を瞑ったが、いつまでもその瞬間はこなかった。

 

……シュゥゥゥと何かが焼けるような音がする。

 鼻を刺す、肉の焼けつく匂いがする。

 

 モカとカリンが目を開ける前に声が聞こえた。

  

「くっぅ!……あの時、私を救ってくれたモカとカリンはこんなことで諦めてしまう弱い戦士だったの?」

 

 覚えのある声がした。

 

「アスカさん!!!」

 

 モルディブでの人工レゾナント実験の被検体で暴走して五人に助けられたアスカだった。

 行動を共にしたいと言っていたがみんなの説得で故郷モルディブの家族の元に帰っていた仲間だった。

 

 にっこりと笑い白い歯を見せながら

「必要な時には呼んでくれるって言ってたのにさ!ちっともお呼びが来ないから来ちゃったよ!」


 アスカは両掌から高濃度のエナジーを放つ。

 迫るエナジー砲の奔流に、真正面からぶつける。

 衝撃波で両手の手首から先が吹き飛んで血が流れていた。

  

「あああ……アスカさん……止めて……手が」


「家族にはちゃんと会えた。抱きしめてもらった。だから今度は、私が誰かを守る番なんだ」


「それにずっとあれから自分の力と向き合ってきた!みんなと一緒に戦うために」

 

「あなたたちは絶対に死なせないから!」


 司令官が叫ぶ!

「なんだまだ邪魔がいるぞ!」

 すぐに次のエネルギーが充填されていく……

 

「わたしさ、あんた達が羨ましかったんだよ、ほら私って一人じゃん?こんなだから恋人もいないし、でもあんた達と出会って助けられて、こんな私でも仲間って呼んでもらえるのかな?って」


 

 司令官が発射準備急げ!と檄を飛ばす。

 

 モカとカリンが震えながら満身の力で立ち上がる。

 魂が叫ぶ!

「アスカさんは大切な仲間だから!」


 アスカは血の滲む腕で、モルディブの花、白く可憐なプルメリアのように笑ってみせた。

 あの時、舞たちが 

 必死で守り抜いた、優しい笑顔のまま。


「あなたたちは私が守るから」

 アスカが走り出した。


 周りの兵士がアスカに発砲する。

 無数の弾丸がアスカに浴びせられる。

 

「アスカさん!あああああ……」

 モカとカリンが届かない手を伸ばす。

 アスカはエナジー砲に辿り着き。

 モカとカリンを見る。

「あの時繋いでもらった命でモカとカリン大切な仲間を護る」

 そういうと自らのエナジーを暴走させた。

 全てのエネルギーを強制的に意志の力で自分の中に収束させていく。

 チラリと視線の端にこっちを向いて涙を流しながら叫んでいるモカとカリンが見えた。

 

(うん。仲間……いいな……本当はもっと……)

 刹那――。

 

 眩い閃光が戦場を焼き、すべてを飲み込む爆音とともにエナジー砲とアスカの姿が消えた。

「……………………!!!」

 戦場から全ての敵意が消えた。

 エナジー砲も、その周囲にいた兵士たちも跡形もなく消えていた。

 

 アスカのエナジーの残滓がキラキラと光り輝き、モカとカリンの魂に降り注ぐ。

 

(託したよ……)

 

 アスカの魂とモカとカリンの魂が共鳴した。


「……あああーおおおおぉ……」

 

 モカとカリンの身体が黄金色に光り輝く。

 

 黄金のライカンスロープが天を穿つ雄叫びをあげた。

 

 黄金のフェニックスが絶望を焼き払い羽ばたいた。


 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 


 

 

 

 

 

 

 


 

読んでくださりありがとうございました。

次回更新は明日19時です。


そしてよろしければブックマークや評価など頂けると

私自身の励みになります。

どうかよろしくお願いいたします。

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