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フェアリー•レゾナンス  作者: 三日月
四柱編

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84/94

夢涙

〜夢涙〜


お楽しみください。


三日月

四柱〜夢涙〜

「あなた達はティアに利用されているわ!」

 

 舞の叫びの後、誰も言葉を発することができなかった。

 歓迎ムードだったその場は、舞が突きつけた《数千年の矛盾》によって静まり返った。

 キキョウとハギの顔からも笑顔が消えた。

  

 舞が「ふぅ」と息を吐き、落ち着いた声で続けた。

 

「……とはいえ私達も結局ティアに利用されていたのよ。私と結とマユリはアンドロギュノスというレゾナントを護り救う組織の中で戦っていた。

 でもそれはティアの手のひらで8thチャクラの覚醒を促されていただけだった……あなた達のこと偉そうには言えないわね」

 

 張り詰めた空気が少し緩む……


「ティアに会いに行くわ」

 結が強く声を上げた。

「それしかないのだよ!」

 

 モカがカリンを見て言う。

「そのためには反対派との話が必要だよね?私とカリンで行ってくる」

 

「賛成派の人にも協力を仰ぎたいです。キキョウさんお願いします」

 モカとカリンが頭を下げる。

 

「わかりました。カリン様、モカ様、私達賛成派は協力を惜しみません」

 

「結姉、舞姉、マユリ、こっちは任せて!」

 マユリが呼び捨てにあきらめ顔で言う。

「わかったのだよ」

 

舞が全員を順に見ながらいう。 

「四人全員無策でティアのところに行くよりもいいかもね。四柱が同時でないと計画が進まない。それが私達のアドバンテージになる」

 

 

◇

 


――アメリカ合衆国ホワイトハウス大統領執務室――

「なんだって!!」

 大統領ジョン・ストライクの声が響き渡る。

 ジョンは、マーガレットからの報告に驚きを隠せない。

 二人の薬指には同じデザインの指輪が光っている。

「マーガレット!大至急日本の倉木総理にホットラインを繋いでくれ!!」

 ジョン・ストライクの背中が汗でびっしょり濡れていた。

 

 

◇◇◇



 天空へ向かい、果てしなく伸びる光の塔。


 その麓に、二人の女が立っていた。


「これに触れればよいのですね」


 女の唇の隙間から、二本の鋭い牙が覗いている。


 灰衣をまとった女が、静かに頷いた。


「そうよ」


 牙の女は、ためらうことなく光へ手を伸ばした。


 眩い輝きが全身を包む。

 やがて光が消えると、女は力なく地面へ崩れ落ちた。


 その口元には二本あったはずの牙が一本しか残ってなかった。


 灰衣の女は、倒れた彼女の傍らに膝をつく。


「やはり……揃わなければ、届かないのね」


 頬を伝った雫が、光の地面へ落ちた。


「ごめんなさい」


 震える指で、牙を失った口元に触れる。


「それでも私は――止まれない」




◇◇◇


 


 

 ティアは夢を見ていた。

 遥かな過去を辿る、記憶の夢。

 

 ティアは眠りながらもそれを夢だと分かっていたが

あえて夢の流れに身を任せた。


 

 

「失敗だ!ティア!やはり人工的に進化の種を作るなど……無理だったのよ!」

「このままでは全てが無になってしまう」

 

「――ティア!後は頼んだよ!進化の種を!」

 凄まじい力の奔流。

 爆発的なエネルギーの放出だった。

 リタの叫びと共に強大なエナジーがティアを包み込む。

「リタ!リタ!私を独りにしないで!お願い、私も一緒に!ああああああーー」

 ティアが慟哭しながら光に包まれていく。

 リタに手を伸ばし、リタの手に触れた。

「このエネルギーでは一人が精一杯なのよ」

 

「それにどちらかがこの未来に残って魂の座標をここに固定しておかないと、いつか戻ってこられなくなる」

 

「二人の願いをティアに託すね」

 

 リタの身体が細胞レベルでバラバラになっていく。

 ティアは逆行して流れる刻の河に落ちていく。

 数千年の孤独な旅路の始まりだった。

 

 ハッと目を覚ました。

 目から一筋の涙が溢れた。

 

「……まだ泣けるなんて」

 

 ティアは自嘲気味に笑った。

 

「進化の種までもう少しだわ…………リタ」

 


 ティアが何かを感じて顔をあげた。

 涙の跡を指で拭うより早く、その表情はいつもの番人に戻っていた。

  

「来たわね」

 

 舞、結、マユリの三人がティアの前に立つ。

「結……お久しぶりね。いつぶりかしら?」

 結は答えない。

「マユリはマキナと上手く入れ替わったのね?」

 

「全て見てたのだろう?」

 

「そうだったわね、自己犠牲の押し付け合い、楽しく見させてもらったわ」

 

「あの私とマキナとのやり取りを侮辱することは許さないのだよ!というかティア?あれを見ても愛が理解できなかったのかい?」

 

「マユリ!貴女と愛について語るつもりなどないわ!」

 

「それもそうなのだよ!私もこんな話をしに来たのではないのだからね」

 

 ティアから静かで重いエナジーが立ち上がった。


◇

 

 モカとカリンは賛成派のメンバーと共に反対派の元へ向かっていた。

 反対派は光の塔の近くにアジトを構えいつ来るか分からない四柱を監視し続けていた。

 光の塔を目指して行けば接触してくるだろう。

 接触した瞬間、銃を向けられる可能性もある。二人は警戒を解かなかった。

 

 賛成派のナデシコがフェニックスになり上空を旋回して警戒していた。しかし本来なら美しく燃え上がる炎のような翼は曲がり歪んでいて、飛ぶスピードも速くなかった。

「……」

 カリンがその飛ぶ姿を見て言葉にならないようだった。

「四柱の資格を失うということはそういうことだ」

 

 カリンの雰囲気を察してハギが独り言のように話した。

 ハギはヴァンパイアのようだが牙は右側だけしかなかった。

 ハギは口元に手をやり、遠い過去を思い出しているように視線を泳がせた。

 

「お前たちは光の塔に行かなければならない。そしてこの世界を終わらせて欲しい」

 

「終わらせることなんてしないわ」

 と言った瞬間――

 ダッダダダダダ!!

 この街にあるはずのない近代兵器の悪魔の叫びのような音が響いた。

 

 地上から機銃掃射が発射された。

 ナデシコが声も出さず、翼を散らせながら地に落ちた。

 

「ナデシコ!!」

 

「なんであんな武器があるのよ!」

 

 目の前で仲間が殺されてハギとキキョウは理性を失い飛び出して行った。

 

「ダメ!!」

 モカとカリンの声は届かなかった。

 驚いたことに反対派は近代兵器を所持していた。

 四柱の欠片といえども近代兵器には勝てなかった。

 

「カリン!止めよう!」

「わかった!」

 モカはライカンになり、戦闘区域に飛び込んでいく。

 カリンはフェニックスになって空から敵を捕捉すると急降下しその羽で吹き飛ばしていく。

 モカの前にナズナとスズナが立ち塞がる。

「ここで一人死ね!」

 

「あんたらあんな武器どこから?」

 

「知らないのかい?この街は世界樹と行き来自由なんだよ!脳筋のライカンに教えてあげる!このすぐ下の階層まで、つまり門の前には我々に協力的な軍事力があるのよ!もう終わらせてあげる!」


 カリンはナズナの持っている銃を見て直感した。

 あれは……確か……舞たちに少しでも近づきたくて知識を蓄えようと必死で資料を読み漁っていた記憶を探る。

 あの銃は〈アジア連邦〉の装備だ!


読んでくださりありがとうございました。

次回更新は明日19時です。


そしてよろしければブックマークや評価など頂けると

私自身の励みになります。

どうかよろしくお願いいたします。

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