鱗猪
〜鱗猪〜
お楽しみくださいませ。
三日月
四柱〜鱗猪〜
五人は濡れていない倒木を見つけバラバラにして火をくべた。
簡易食料を食べながらパチパチと爆ぜる火の粉をじっと見ている。
流石にアンモナイトを焼いて食べる気にはなれなかったがモカだけが残念そうにしていた。
「モカ……お願いそこは我慢して!」
とみんなで説得した。
火の粉を見ているとなぜかみんな口数が減る。
この不思議な空間の空気に当てられたのかもしれない。
巨大すぎる大地のような樹。
異常な生態系。
マユリが言った進化という言葉。
今まで生きてきた世界と違いすぎて困惑していた。
「これからどうするの?やっぱり上に向かうのでしょ?」
モカが切り出した。
「それしかないと思う。」
「マユリはこの世界樹は進化だと言ったよね?」
「うむ……言ったのだよ。最下層で捕まえたというアンモナイトあれは四億年前に生まれた生物で2億4000万年前に絶滅した生き物なのだよ」
「そして登っていくに連れて生態系は複雑化している」
「でもこの進化は普通じゃないよね?明らかにおかしい進化してる」
「完全に因果が狂ってるのだよ」
「登って行った先には何があるのかな?」
「頂上……進化の行きつく先……」
モカがあっさり言う
「神様でもいるんじゃね?」
「ティアはそこを目指してる?」
誰も答えられなかった……
カサカサ……茂みが揺れた。
毛むくじゃらのカエルが茂みから顔を出した。
「あはは可愛いじゃん」
モカが手を差し伸べようとする。
「ダメよ!」
舞がとっさにその手を掴んで避けた。
毛むくじゃらカエルが鋭い牙でモカの手を食べようと歯と歯がカツンと音を立てた。
「ギュルルルルル〜」と鳴いた。
知らぬ間に毛むくじゃらカエルに囲まれていた。
「なんなの?食べる気?」
全員戦闘モードに気持ちを入れ替える。
しかし毛むくじゃらカエルは何かを察知して一目散に逃げた。
「ケッ!私の迫力に怖気付いたんだな!」
カエルに勝ち誇るモカの背後の茂みが割れた。
グオオオオオアー
茂みを掻き分け、建物ほどの化物が口から涎を垂らしてモカのすぐ後ろにいた。
「モカッ!!!後!」
大きさは十メートル以上。黒い鱗で覆われた巨大な猪のような生き物が口を開けてモカを食べようとしていた。
「うわぁぁ」
舞が逃げ遅れたモカにタックルするように飛びついた。ギリギリで避けた。
ガキン!歯と歯が打ち鳴らされる音が密林に響く。
舞がモカを抱え転がり立ちあがろうとした時
ズボッ!
避けた先の落ち葉の下に穴があり舞とモカが下に落ちた。暗黒に落ちて行きながら舞の叫び声がする
「上に!」
すぐに舞の声も聞こえなくなった。
結とマユリとカリンは鱗猪に追いかけられた。
三人は樹木を避け、倒木を飛び、必死で逃げた。
鱗猪は木を薙ぎ倒しながら三人を追いかけ、追いつけないと思ったのか大きな鼻息を出して茂みの奥に消えていった。
そばの木の幹にすごい爪痕が残されていた。
「はぁはぁ……とんでもないところなのだよ」
「舞とモカならきっと大丈夫だよ」
「私達も上に向かおう!必ず会えるはずだよ」
舞はモカを抱えながら壁にアンカーを打ち込む。
左腕が二人の体重を支える。
「大丈夫?モカ」
「うん。大丈夫!ありがとう〜食べられると思ったぁ」
「よかった……とりあえず落ち着けるところまで上がろう」
アンカーを内蔵モーターで巻き上げていく。
途中で横穴を見つけた。
そこに入った。
横穴はずっと奥まで続いていた。
暗い……しかし何かいるのはわかる……
二人の毛穴が広がる……
舞がリュックからケミカルライトを出した。
パキッと折って点灯させる。
黄緑色の光が壁面を照らした。
そこに映った物を見て二人は言葉を失う。
横穴にはカオスがあった。
人?いや違う。
獣?いや違う。
虫?いや違う。
鳥?いや違う。
魚?いや違う。
違うがまた逆に人であり獣であり虫であり鳥であり魚であった。
壁中にカオスがうねうねと蠢いている。
顔が魚で、腕は昆虫で、エラがあり空気を求めて唸り声を上げている。
魚に鳥の羽が生え飛ぼうとしているが獣の胴体が重く飛べなかった。
まるで生物を見たことのない子供が粘土で適当に作った生き物を壁に投げつけたような……カオスだった。
二人は吐き気を飲み込んで
「むぐぅぅ」とうめき声をあげる。
気持ち悪い。
そう思った直後、舞はその感情を恥じた。
これらもまた生まれようと足掻いた命なのだ。
モカもいつもの軽口を言おうとして、口を閉じた。
「これは……何?」
「進化の失敗?いや進化の可能性の模索?」
蠢いているが自由に動ける物はいなかった。
「とりあえず進もう」
と二人は横穴を進んでいった。
奥に進むことが使命であるかのように……
結とマユリとカリンはなだらかな斜面を歩いている。
なだらかとはいえ基本ずっと登坂だった。
植物の進化がより歪になっている。
それよりも階層を上がる度に生物が明らかに変わっていた。
最初に違和感を感じたのは甲羅のある猿が地面に石を積んでいた時だった。
なんのためでもなくただ石を積んでいた。
でもそれは食べるためという本能の動きではなく明らかに石を積むことが目的になっていた。
マユリが小さく呟く
「目的と意志か……その先にあるのが知識……」
次に居たのは穴を掘っている蝉の顔をした犬だった。
マユリが驚いた声で言った。
「あの蝉犬……道具を使ってるのだよ!」
蝉犬の手は人間の手で五本の指でしっかりと木の棒を持ってそれで穴を掘っていた。
「知の進化……」
マユリの背中が汗で冷たくなっていく。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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