USA動乱〜鳥に乗った少女〜
USA動乱〜鳥に乗った少女〜
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三日月舞
USA動乱〜鳥に乗った少女〜
アメリカ合衆国大統領、ジョン・ストライクは深い溜息をついた。
世界は一変してしまった。
根と言われる謎の意思のある植物が世界を覆い尽くす。その根には意思があった。
いや、意思というより本能に近いものなのかも知れなかった。敵意に対して攻撃的で基本何もしなければそこに生えているだけの存在だった。
しかし人間は自らが作り上げてきた文明を奪われることを肯とはしなかった。
いや受け入れることなど出来るはずもなかった。
人類史上最も醜悪な兵器――核ミサイルが発射されようと計画されていた。
根の発生源と見られているオーストラリア中央部ノーザンテリトリー州にあるウルルと呼ばれる世界最大の一枚岩が種子のようになりそこから世界全土に根が伸び、触れるものから生体エネルギーを吸い取っているという。
そこに向けて核ミサイルを撃ち込むという計画が確実に進行していた。
アメリカ本土では略奪やテロが蔓延しほぼ無秩序状態になりつつあった。
ギリギリのところで軍や警察が踏ん張り、国としての体裁を保っていた。
ホワイトハウス内大統領執務室でアメリカ大統領、ジョン・ストライクはずっと自問自答を繰り返していた。
「私はいったいどうすればいいのだ?」
……
「人がまだ居るところに核を打つなど」
……
「しかしこのままでは文明が奪われてしまう」
……
「今、まだ我々にボタンがあるうちに何とかしなければ」
……
「しかし核であれがどうにかなるのであろうか?」
……
誰も答えてはくれなかった。
独り言のように大統領補佐官のマーガレットに話していた。
彼女は大統領が新人議員の頃からの秘書で大統領が信頼する人の一人だった。
結婚してすぐに病気で妻を亡くしているジョンはここ数年支えてきてくれたマーガレットにずっとプロポーズしていた。
しかしマーガレットは頑としてプロポーズを受けず断り続けている。
「ジョン・ストライク最大の選択ね」
マーガレットは静かに言う。
「世界の進むべき方向をあなたは決めなければならない。その時は私も同じ方向を向くわ!たとえそれがどんな道でも!」
その声は、長年彼を支えてきた者だけが持つ確信に満ちていた。
ジョン・ストライクの顔に疲労の色が濃く浮かぶ。
判断の期日は迫っている。
情報分析官がノックの後入ってきた。
「大統領!ウルルが光り始めています!」
「高エネルギー反応です。」
ジョン・ストライクはホワイトハウス内作戦本部へ急いだ。
ホワイトハウスにはまだ根の侵食はない。
地下深く。
ホワイトハウスを囲むように何層もの防壁がある。
根にそこまでの侵食能力はなかった。
アメリカには幾つものそういう厳重な防御壁のある施設や避難所があった。
個人で核シェルターを所持する者もいた。
しかしほとんどの国民は侵食する根に恐怖し情報不足から銃で攻撃してしまう事案も多くなっていた。
作戦本部には幾つものモニターが並びその1つにドローン映像からのウルルの姿が映っていた。
一定周期で薄く光り、岩が明らかに岩の質感ではなかった。
「うむ……エネルギーとは?」
「内部に高エネルギー反応があります」
「そしてこの波動は我々も最近観測した波動と一致するのです」
「それは?」
「我々も作戦に参加していて失敗に終わった。人工ふたなりのエネルギー実用化実験。ふたなりからのエネルギー波とウルル内部のエネルギー波がほぼ一致します」
「つまりあの岩は生きていると?」
「少なくとも鉱物ではありません」
マーガレットが痛々しい顔をする。
「あの作戦か?あれは私も君も知らなかったとはいえ、してはいけない作戦だったな、これは報いなのか?」
「あの時逃げ帰ってきた司令官は?」
「ロメオ大佐は咎められることなく任務に付いています」
「しかしまたふたなりか……」
「あの組織……なんと言った?」
マーガレットが答える。
「アンドロギュノスでしょうか?あの組織はもう機能していません。しかし少人数はまだ活動しているようで、そういう報告も受けております。」
「あの女性?いやふたなり達は確か…………」
「フェアリー……妖精です」
「デーモンやビーストになるらしいな」
「味方なのか?敵なのか?慎重に……」
大統領が無意識に胸ポケットへ手を伸ばすのを見て、マーガレットがたしなめるように言った。
「大統領!禁煙です!」
「そうだったな……すまん」
ジョン・ストライクはまた一つ大きな溜息をついた。
その時、作戦本部に警告が鳴り響く。
「北米航空宇宙防衛司令部より太平洋をすごい速さでアメリカ本土に向かう飛行物体あり」
「速い!マッハ1.5」
「空母よりF22スクランブル発進!」
「警告後進路変わらなければ撃墜!」
慌ただしく命令が交差する。
F22が二機スクランブル発進する
「アフターバーナー最大!」
パイロットが加速Gに歯を食いしばる。
「レーダーに捉えた!接近警告する!」
F22が接近した。
「な!なんだあれは?」
「鳥です!光る大きな鳥です!オーマイガー!鳥に少女が!少女が乗っています!何か言ってる?なんだ?」
鳥に乗った少女はF22のパイロットに叫んでいた。
風に吹き飛ばされて言葉は聞こえないが口の動きが
「大統領のお家どこーーー?」と言っているようだった。
フェニックスの背に乗ったモカが叫んだ。
「ジーザス!俺は何を見てるんだ!」
「F22!状況知らせ!」
未確認飛行体は大型の鳥状生命体。
――搭乗者は少女一名。
目的は――大統領への接触と推定。
「……………………」
通信が声を失った…………
モカが戦闘機に向けて、なぜか陽気に敬礼した。
「カリン!あっちだ!」と鳥に囁く。
鳥が羽をたたみ流線型となる。少女が羽毛の中に埋まった。光が眩く。
バシュッ!
音を置き去りにして鳥が加速した。
鳥はF22を置いて飛び去っていった。ホワイトハウスの方向へ。
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