東京事変〜叱咤〜
東京事変〜叱咤〜
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三日月
東京事変〜叱咤〜
結は暴徒と化した人々を止めるために街を疾走した。
商店はシャッターが壊され、金品が略奪され、特に食料品店は酷い有様だった。
結の前に警察官が走ってきた。
「助かったわ!一緒……に!」
結の言葉が耳に入ってないように、警官は結を無視して食料品店に入っていき物をカバンに詰め始めた。
よく見れば警官の制服は汚れ、目の焦点が合っていなかった。
すぐに奪い合いが起こった。
「俺のだ!」
警官が警棒を抜いた!
「いけない!」
結はエナジーライフルを構えて、警官の警棒だけを狙って撃った。
警官の警棒が弾け飛んだ。
結は走り寄って警官の頬を平手で張り倒した!
警官は吹っ飛んで商品棚に突っ込んだ。
結は警官の胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「しっかりしなさいよ!あなた警官でしょ?」
男は我に返る……
「あ……あ……でも」
「でももへったくれもないわ!他の警官は?」
「分からない……もう命令系統も何も機能していないんだ」
「私は結。あなた名前は?」
「俺は佐藤学」
チラリと階級章を見る
「佐藤巡査!聞いて!今パニックになっている原因のあの根は危害を加えた者にしか攻撃性を出さないの!」
「あとむやみに触れても生命エネルギーを吸い取られる!これを伝えたい!」
「力を貸して!」
結の真っ直ぐな瞳が佐藤巡査のパニックを解いていく。
「君は……」
「冷静になるのよ!」
「……わかった冷静さを失っていたよ。俺は警官だ。思い出させてくれて、ありがとう」
そうしている間も隣では略奪が続いている。
結はすれ違いざまに首に手刀を打ち込み、強奪者を気絶させていく。
「き……君はいったい?」
「通りすがりの正義の味方よ」
「パトカーでサイレンを鳴らして注目を浴びてマイクで訴えるというのはどうだろう?」
「出来ることはやってみよう!ありがとう、佐藤巡査」
結のたまらなく優しい微笑みが佐藤巡査に沁みていく。
「え……あ……そ……そうだ、な……」
佐藤巡査はシドロモドロになり結の一挙手一投足に見蕩れていた。
「しかし結さん、君はライフルを持っているけど何者なんだい?」
少し赤くなった顔をバレないように引き締めながら聞く。
「終わったら教えてあげるわ!」
と言うと警察署に向けて走り出した。
警察署で署員が根に攻撃しそのせいで数人がやられていた。
結は攻撃を加えようとしている署員に話して回るが効率が悪すぎた。
「ダメだ埒が明かない!」
その時、警察無線がけたたましく鳴った。
警察無線の全一斉呼び出しに佐藤巡査の声が響いた。
「全署員に伝える!その根は攻撃しなければ襲っては来ない!攻撃をやめるんだ!」
佐藤巡査のよく通る声が所内に響き渡った。
少しづつ署員たちの落ち着きが戻っていく。
「むやみに根に触れても体力を吸い取られる!注意!せよ!」
「警察がパニックを起こしてどうする!今こそ我々が冷静になるんだ!」
「今から街に出て混乱を収拾しつつ市民に避難を指示していこう!」
佐藤巡査の叫びがみんなに届き始めた。
警察署が一気に冷静を取り戻していく。
署長が結に
「ありがとう。私たちもこんな事態になって少し動転してしまっていた」
「全署員に通達!全パトカー、全車両で市民に根のことについて周知させるのだ!」
「市民球場を避難場所にしてそこに集まるように!」
パトカーは市内を巡回しながら暴徒を見つけたら止めて進んだ。
スピーカーからは結の声を流し続けた。
「市民の皆さん。
今、皆さんの生活を脅かしている根の正体は分かりません。
ですがこちらから何もしなければ攻撃してくることはありません。
それとむやみに触らないでください。
衰弱してしまうと思われます。
私たちは必ず、元の生活に戻れるようにして見せます!
その時、家族、恋人、友人達大切な人たちと再会した時、その手が略奪、暴行に染まった手でいいの?
その手は愛する者を抱きしめるためにあるのよ!
今こそ、冷静になり市民球場に避難してください」
その凜として、慈愛に満ちた言葉が街に響き渡った。
食料を奪おうとパイプを持った暴徒の手が止まる。
その手を見つめて立ち尽くした。
——カラン
その手から鉄パイプが地面に落ちた。
全パトカーが徐行しながら繰り返し流していた。
女の子がその声に反応する。
ハッとして家から飛び出して、その声を聞いた。
(結さんが戦っている……)
口から自然に大声が出る。
「皆さん!今の声は本当に信頼できる人の声です!お願いします」
家族の元に帰っていた、サナだった。
かつてゼノバイオ製薬に友人二人と共に捕まったが、その身を挺して友人を守ろうとした女の子だった。
そのサナが必死で市民に訴えていた。
「お父さん!お母さん!この声の人が私達の命の恩人なのよ!」
サナのお父さんが声を上げて言い回った。
「この放送を聞いてください」
お母さんも声を上げた。
お父さんの知り合いに伝播し、お母さんのママ友たちにも広がり、それは確実に広まっていく。
少し離れた町ではリナが声を上げる。
隣町ではミナが人々に訴える。
結の声を聞き訴えを広めていた。
いつしか合言葉のように
「市民球場へ」
という声が広がっていく。
市民球場は広くどんどん市民が集まってくる。
所々に根は顔を出しているがみんな刺激を与えないように近寄らないようにしていた。
結もふぅと一息ついた。
佐藤学の声が響く。
「みんな、冷静に!!」
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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