〜侵食〜
〜侵食〜お楽しみくださいませ(^^)
三日月舞
世界樹編〜侵食〜
それはほぼ同時に世界中で起こった。
地下から何か植物の根にしか見えない物がアスファルトやコンクリートを突き破って出てきて、
集落を、村を、街を、都市を、地域を、国を、大陸を――そして世界を侵食していった。
ビルに根が絡みつき、侵食していく。
インフラが破壊され人々の生活が事実上崩壊した。
「な!何なの?これがティアの言ってた世界樹が世界を包み込むってことなの?」
舞たちは貸ビルの一部屋で過ごしていた。
ノートパソコンでニュースを流していると世界各地からの根の侵食のニュースが流れ始めた。
「本当に世界が侵食されていってるのだよこれは……」
メディアでは原因不明の――根侵食とアナウンサーが叫んでいる。
「根に触れないでください!この根に触れると体力が奪われ衰弱してしまうという報告があります」
と警告を発している。
結とモカとカリンも画面にくぎ付けだった。
「こんなこと……ティアの魔法?なの?」
「これは魔法とかではないのだよ」
「あ!軍隊が出動してる!」
モカが沢山並んでいるパソコンのウィンドウから見つけた。
各国の軍が独自に対応し根に攻撃をしていた。
兵がチェーンソーで根を切断しようとする。
歯を当てた瞬間別の根が兵士を襲った。
動画を撮っている兵士が絶望の声を上げ逃げ出す。
根が兵士を貫いた。
そして養分を吸い取るようにドクンドクンとまるで生物のように動いた。
兵士が動かなくなると根もまたそのまま動かなくなった。
別の国で火炎放射器で根を焼いている動画が見えた。
兵士が火で根を焼く。
根が生き物のようにのたうちながらその兵士に向かって、触手のように伸び体に巻き付き生気を吸い取っていく。
すぐ横の撮影班には襲いかからない。
銃撃しても、その攻撃を排除するためだけに動いているように思えた。
「まるで危害を加えなければ手荒なことはしない」
と言っているようだった。
アナウンサーが画面の向こうで叫んでいた。
「皆さん!根には触れないでください!危険です。可能な人は避難所へもしくは家から出ないように!」
と言った瞬間放送が途絶えた。
世界の通信が途絶えた。
――世界が孤立していく。
ドン!
外で爆発音が響いた。
5人は屋上に駆け上がり、外を見て言葉を失った。
至る所で火災が発生し街の人間は一部、暴徒となり略奪行為が始まっていた。
都庁のビルが燃えていた。
「これは酷い有様なのだよ」
カリンが「止めに行かないと!」と飛び出そうとする。
結が肩を持って首を振る。
「どうして止めるの?」
「この光景を見て!全部あの暴徒を止めることが出来ると思うの?」
「そんなのやってみなくちゃわからないよね?」
「カリン!今はこの状況の元凶をどうにかする方法を考えないといけないのよ!」
「元凶?」
「噂の域は出ないけどオーストラリアのエアーズロック……世界最大の一枚岩、ウルルが元凶ではないかと言われているわ」
「そして私もこの根は全てウルルから世界中に伸びていると思っているわ!もしそうなら私たちはそこへ行かなければ、その時カリンあなたのフェニックスの飛ぶ能力は必ず必要になる」
「でも……目の前で人が……」
カリンの目が潤む……
「だからここは私が行くわ!」
結がカリンの涙を指ですくいながら優しく話した。
「私も!」舞もすぐさま名乗り出る。
結が手で舞を制止させる。
「舞、ありがとう。でも貴女が行くと喧嘩になっちゃう」
と笑った。
「ここは私に任せて!私は舞のおかげで強くなれたのだから」
結の瞳はあの出会った頃の助けを必要としている目ではなく人を護れる目だった。
舞はにっこりと笑った。
「わかった任せる!」
結の肩を拳でトンッと、叩く。
「情報を集めてみるのだよ。少し集中させてくれないか?」
みんなが静かにマユリの背中に手を当てエナジーを送っていく。
マユリが集中して半人半機の能力を駆使してアメリカ国防総省のネットワークに侵入していた。
クローンであるマユリの身体の中には各臓器や血液中に細胞レベルでナノマシンが動いている。
生きたAIと呼ぶことができた。
四人からマユリにエナジーが注ぎ込まれるとマユリの首筋の血管がうっすらと青白くネットワークパターンのように発光した。血液中の無数のナノマシンが強制駆動し、彼女の脳そのものが量子スーパーコンピュータへと変貌していく。
チカチカと両目の奥で電子の光を明滅させながら、マユリは衛星回線を経由し、一瞬でアメリカ国防総省の最深部へとアクセスした。
青い瞳に膨大なデータが滝のように流れていた。
「!!大統領が最悪の選択をしようとしているのだよ」
「何をしようとしているの?」
「今噂になっているこの根侵食の元凶らしいと言われているオーストラリアのウルル……ここに、あろうことか核を……核ミサイルを撃ち込む!」
「そんな!オーストラリアの人が全員避難完了したわけでもないでしょ?」
「マユリがハッキングで止められないの?」
「流石にそれは今は無理なのだよ!近くに稼働している高性能スーパーコンピュータがあればまた可能かもしれないが……」
「だったら私がアメリカに行くわ、そして大統領に会って、ミサイルの暴挙を止めてみせる!」
カリンが決意のこめた瞳で叫んだ。
「そういうことなら私が同行しないとだね!」
モカが一歩前に出て指をポキポキと鳴らした。
「ケンカしに行くんじゃないからね」
とカリンが心配そうにしていた。
「きっと二人なら大丈夫だよ」
マユリが改まって話し始めた。
「みんなそれぞれ戦いに行くにあたりやはりこのままではいけないのだよ」
舞が茶化す
「まだ何かあるの?」
マユリがニヤリと笑う
「私からプレゼントがあるのだよ」
「プレゼントって?」
「これからの戦いに必要なものなのだよ」
マユリがケースを取り出してテーブルに置き蓋を開ける。
四人の目が輝いた。
そこには新しい戦闘服が五人分入っていた。
モカとカリンか驚く。
「え?私たちの分も?」
「フェアリーじゃないのに?」
マユリがにっこりと笑って言う
「私の中では二人はもうフェアリーなのだよ」
モカは照れ隠しで笑い、カリンの目は潤んでいた。
舞と結がそれを優しい笑顔で見ている。
「四柱が揃い戦いは厳しくなるのだよ、その助けになるのならと用意したのだよ」
「モカ、カリン、この戦闘服を着たからにはもう逃げられないのだよ」
と笑う。
「へへ……フェアリーかぁ」
「私がフェアリー……妖精になるんだね」
五人はそれぞれの戦闘服を手に取った。
黒を基調に、それぞれの因子を思わせる意匠が施されている。
舞には角。結には牙。モカには尾。カリンには翼。
そしてマユリには、半人半機の身体に合わせた青白いラインが走っていた。
「みんなの特徴や攻撃スタイルや、イメージなどからこの私がデザインしたのだよ」
「軽いし動きやすいよ」
「これでみんな戦える!」
「ありがとう、マユリ」
みんなそれぞれ今から戦いに向かう
結は都内の暴動をおさめるために。
モカとカリンはアメリカの核ミサイルの調査と阻止。
舞とマユリが言う。
「私達はなんとかしてオーストラリアに向かおう!」
「どうやって?カリンに寄り道してもらう?」
「いやアメリカの問題ものんびりとしていられないのだよ」
「8000キロもあるって」
「自衛隊はどうかしら?」
「可能なのはC-2輸送機だけなのだよ」
「誰にお願いすれば乗せてくれるのかな?」
「総理大臣?」
「彼女なら話を聞いてくれるはずなのだよ」
「知ってるの?」
「ああ……とってもね」
「彼女はふたなりで元フェアリーなのだよ!」
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