ライカン編エピローグ
ライカン編エピローグ
お楽しみください。
三日月
ライカン編エピローグ
激動の第456島の事件から一ヶ月が過ぎた。
カリンの背に乗って島から脱出したのが昨日のように思える。
四柱が揃った今、いつティアが接触してくるか分からなかった。
四柱計画の具体的なことは、何一つわかっていなかった。
五人は街でひっそりと情報収集しながらティアの行方を探っていた。
アスカはモルディブの家族の元へ帰った。
共性化は収まらなかったが、力が暴走する危険もなかった。
アスカは泣きながら五人と行動したいと言ってくれた。
だがその時がきたら、アスカの力を借りたい。
必ず呼びにいく。と約束すると、渋々モルディブへ帰った。
「私もフェアリーとして戦いたい!あなた達が戦う時には私も必ず駆けつけるからな!」
そう言い、アスカはモルディブの家族のもとに帰った。
その他の生存確認が取れた旧アンドロギュノスのメンバーも同じく家族がいるものは家族の元へ帰っていった。
あの3人娘、サナ、リナ、ミナも同じくそれぞれの家庭へと帰っている。
サナが両親と固く抱き合い、
「もう共性、レゾナントということから逃げない!お父さんとお母さんの娘で良かった」
三人の涙を見て心配で遠く影から見守っていた結の瞳が熱くぬれていた。
◇
ビルの屋上でマユリが手摺にもたれて風に髪をなびかせていた。
「最近よくここで一人でいるのね」
マユリは振り返らず答えた。
「自分探しの旅なのだよ」
「まだマキナの声が聞こえる?」
「マキナがこの身体を使っていた間の情報が、脳やナノマシンのどこかに痕跡として残っている可能性はあるのだよ。ティアとの記憶を少しでも拾えればと思ってね」
「マユリ自身はどうなの?」
「箱は箱で良かったのだがね……やはり肉体があるというのはいいものなのだよ」
あのアスカの力の奔流の中で2人で交わした言葉が脳裏に蘇る。
暖かい何かが、心の奥から滲み出るような……
舞の指がマユリの髪に触れた。
「私は、箱よりもこっちの方がいい」
マユリがくすぐったそうに肩をすくめた。
そのくすぐったさは生身の実感を感じさせ、トクン…トクン…と言う心臓の鼓動のリズムと共に、魂の奥でマキナが《良かった》と笑ったような気がした。
マユリが舞の手に自分の手を重ねた。
体温以上のものが溶け合っていく。
――その時!
「仲のいい事ね」
突然二人がいる屋上よりもまだ上から声がした。
「人の逢瀬を覗くとは趣味が悪いのだよ!ティア!」
マユリが上空を睨んだ。
「マキナの犠牲で得たその身体……大切に使うのね」
「犠牲?そんなチャチな言葉で表さないで欲しいのだよ!」
舞の眼光が鋭く光った。
「ティア!そんなくだらないことを言いにきたの?」
「歓迎ムードではないのね」
「何しに来たの?って聞いてるのよ!」
ティアの顔からスっと感情が薄くなった。
「まもなく世界樹が世界を包み込む」
「何!?」
「どういうことなの?世界樹って一体」
「あなた達の選択を楽しみにしているわ」
と言うとゆっくりとティアは薄くなり消えていった。
不穏な空気を察知したのか屋上に結とモカとカリンが飛び込んできた。
「すごい気配がしたけど今のはティア?」
舞が頷く
「そう。意味は分からないけど、もう少しで世界樹が世界を包み込むって……」
「そして私たちの選択……」
「謎が多いね」
五人は屋上から見える景色を目に焼き付けた。
人々の営み。
行き交う車。
沈んでいく太陽が、眩しい。
この世界を壊させたりはしない。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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