兆し
〜兆し〜お楽しみくださいませ(^。^)
舞@妖精
救出編〜兆し〜
ゆかと結は三人を安全な場所に移動させて再び舞を探し奥へと進んだ。
「まだ地下があるのかしら?」
「あ、ゆかさんあそこ」
結が指さしたところに厳重な扉とIDリーダーがあった。
先程拘束した男からはIDと銃を奪っておいた。
そのIDでOPENのランプが光る。
ゆっくりとドアを開けると異様な実験室のようだった。
気味の悪い機械音がなっている。
静かに進むと突然目の前に信じられない光景があった。
息がつまり全身の血が逆流するような衝撃が結を貫く。
「舞!!!!」
結が絶叫した。
舞は万歳のカッコで拘束台に固定され、頭にはヘルメットのようなヘッドギア。
下腹部には目を背けずにはいられないような装置がつけられそこから伸びたホースが吐き気をもよおすような音を立てている。
怒りで目の前が真っ赤になり結は走り出した。
分厚い強化ガラスにぶつかる。
その部屋には行けなかった。
「舞!舞!」
ガラスをドンドンと叩くがびくともしなかった。
その時――陰から別の男が結に向けて銃で狙いをつけていた。
ゆかが走り込み結を抱えて逃がす。
結のいた場所に弾が撃ち込まれた。
「大丈夫?結さん?まさかここまでとはね、一般市民を撃つなんて」
ゆかの怒りに火がついた。
ゆかはさっきの男が持っていた銃で、男を狙い連射した。銃と腕を撃ち抜いた。
残りの弾でガラスに向けて撃ったが防弾ガラスでビクともしなかった。
弾が尽きて銃を捨てた。
舞の拘束台を操作するコンソールの影から、一人の男が悠々と姿を現した。
結の喉が恐怖と嫌悪感で凍りつく。
そこにいたのは、拉致実行犯のリーダー格の男だった。
ガラス越しに直接声は届かない。
天井のスピーカーから男の声が聞こえた。
「おやおやこんなところまで何しに来た?まさかこいつの代わりにお前が検体になりに来たのか?」
「舞を返して!」
男が耳に手を当て聞こえないというジェスチャーをして結を挑発する。
悔しさで理性を失いそうになる結をゆかが背中で制し、落ち着きをあたえた。
しゃべりながらも結を男の射線上から外すように巧みに動かす。
「この女のことはよく知ってるんだよ。もう6年か?まだガキのこいつから散々搾り取ってやったんだよ、あっはは、初体験が忘れられなくて戻ってきたってか?」
「黙れ!黙れっ!」
ゆかが背中で結を死角に押し込む。後ろ手で結に自分の銃を渡してきた。
鉄の塊とは違う重さと冷たさが手のひらに染み渡る。
「結さん、これを――そしてここからはあなた自身が決めるのよ!」
「何を決めるの?」
男がゆかを見て何か思い出したように言った。
「あれ?そういえばお前か?六年前こいつを助けたのは?……『フェアリー』ってほんとブンブン飛び回って目障りな羽虫だぜ!」
六年前の舞の悲劇があの姿がゆかの脳裏に鮮明に蘇る。
(どうして、またこの子が!)
ゆかの拳が悔しさで激しく震える。
男が面白がりコンソールのスイッチを回す。
舞が繋がれている機械の出力が跳ね上がり、舞の口から引き裂かれるような悲鳴が上がった。
ゆかと結の臨界点が同時に爆発した。
「何をって?――『揺るぎない覚悟』よ!」
ゆかは強化ガラスに走りながらグローブのスイッチを入れる。
ゆかの体からエネルギーのようなものが膨れ上がりグローブの拳がブーンという音とともに燐光を帯びた。
ゆかの超伝導ナックルが唸りをあげる。
「おりゃ〜」
裂帛の気合と共に強化ガラスに右ストレートを、
ガラスにヒビが入る。
男の顔に動揺が浮かぶ。
続く左ストレートでガラスの欠片が床に落ちる。
男が懐から慌てて銃を取り出す。
その瞬間――結の意識が透明になっていた。
(揺るぎない覚悟!)
周囲の動きが少しスローモーションのようにに感じられる。
ゆかの最後の右ストレートが防弾ガラスを粉々に砕いて、ゆかが部屋に飛び込んだ。
男が銃をゆかに向けて撃つが素早い動きで狙いが定まらない。
間合いに……ゆかが男に接近する。
その時、小さなガラスの破片に足を滑らしよろけてしまった。
「――しまった!」
パンッ!
乾いた音がして、弾丸がゆかの肩を貫通した。
「くぅ!」
「ゆかさん、危ない!」
男が倒れたゆかの頭に銃口を向けた。
結の視界から音が消えた。
無意識に銃を構える。結の身体からオーラのような光が溢れ、銃が燐光を放つ。
男がゆかの頭に照準して撃った!
「死ね――」
手にかかる銃の重さ
呼吸。
心拍。
全てが噛み合う。行ける!
結の銃から発射された弾丸がゆかの頭に当たる寸前の弾丸を弾いた。
男が驚愕する
「バカな!弾丸を弾丸で弾いた??」
体内から湧き上がるエネルギーが視界を鮮明に変え、初めて持つ銃器であるはずなのに奇妙な一体感が襲った。
一発目!銃
ニ発目!右肩
三発目!左肩
四発目!右足
五発目!左足
流れるような連射で男の両肩両足を撃ち抜いた。
カラカラと薬莢が転がる乾いた音が響く……
額に汗を浮かべながら、銃を両手に握りしめたまま立ち尽くす。
硝煙の匂いが鼻をつき、心臓の鼓動が耳元で響いている。
ゆかの戦いぶりに触発され、自分の中に眠っていた何かが目覚めた。
我に返り、銃を落とした。
「わ!私、人を撃った!!」
手が震えだしその震えは全身に広がった。
ゆかが肩を押さえながら銃を拾い。
結の震える手を握りしめそして、震えを全て受け入れるように力強く抱きしめる。
「結さんに助けられたわ、あなたがいなければ私は死んでたわ。ありがとう」
その言葉で我に返る。
舞!と叫んだ。
ゆかは肩からの出血を押さえつつ、結とともに舞の拘束装置へ駆け寄った。
結の指が震えながらケーブルの接点を探り、一つまた一つとプラグを慎重に外していく。
舞の四肢は痙攣を続け、装置の解体が進むにつれて微弱な呼吸が整っていく。デバイスをゆっくりと外す。
「ああ、舞、もう少しだから」
最後のプラグが外れると同時に、舞の瞼が微かに震えた。
紫色の唇がかすかに開き、焦点の定まらない瞳がゆかと結を交互に捉える。意識が定まらず幻覚を見ているようだった。
虚ろな声。幼子の様な声で。
「美衣?美衣なの?」
うわ言のように呟いた
結が叫ぶ!
「結!結だよーー」
結の声に舞の瞳に光が灯った。
「結!!」
その叫びに結は涙を拭うことさえ忘れて舞の手を握り返した。
「舞……もう大丈夫。私が来たから。
ゆかさんと一緒に、助けに来たんだよ。一緒に帰ろう」
舞は弱々しく微笑み結の頬に触れた。
「……ごめんね、結……でも……結を守りたかったの」
「……舞のバカぁ……!!」
結の頬を、大粒の涙が伝う。
「なんで……私の身代わりになんて……!」
う ゆかも静かに頷きながら言った。
「無事でよかった……本当に」
三人は互いに支え合いながら、ゆっくりと地上へと向かった。
地上に出た瞬間、空気は一変する。
二人の兵士のような男が一斉に三人へと襲いかかる。
ゆかが舌打ちをする。
(三人も来てたのか!)
ゆかが前に出て銃を構える。
肩の傷から流れる血が動きを鈍らせる。
――その時。
轟音と共に、上空に一機のヘリが現れた――
次の瞬間、空から正確無比な射撃で二人の男を撃ち抜き戦闘不能にした。
ヘリが十メートル程の高さでホバリングし、一人の女性が軽やかに飛び降りてきた。
落下しているはずなのにやけにゆっくりと落下速度が遅かった。身体全体が淡い燐光を放っていた。
金色の髪が夜風になびき、深いブルーの瞳が戦場を鋭く見据えていた。
その視線は戦場を知り尽くした者の目だった。
その姿は、凛として美しく、そして圧倒的な存在感を放っていた。
撃ち倒した男二人を手際よく拘束し銃を奪う。
グリップの刻印を見て苦笑いする。
「……元お仲間か。相変わらず趣味が悪いわ」
ゆかが微笑み、結と舞に紹介する。
「彼女はエミリー。元傭兵のふたなりよ。そして私と同じ――この世界のふたなりを守る組織『アンドロギュノス』の特殊戦闘員『フェアリー』」
金髪の女性は軽くウインクし、朗らかに笑った。
「フェアリー・エミリーよ。無事でよかったわ」
そう言って、すぐに表情を引き締める。
「……ゆか、撃たれてるじゃない。すぐ医療班を!」
無線に素早く指示を飛ばす姿は、歴戦の戦士そのものだった。
そのやり取りを見つめながら、結はふと気づく。
ゆかとエミリーの間に漂う、言葉では言い表せない距離感。
それは、ただの仲間以上の――
深い信頼と、強い絆の証のように見えた。
舞がボソリと呟いた。
「あの二人出来てるわね」
お読みくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
よろしくお願いします(๑°༥°๑)




