〜静笑〜
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三日月舞
結と舞、それとデバイスのマユリ達三人はモルディブ諸島に着いた。
大小1200とも言われる島々からなるモルディブ。
モルディブの強い日差しと潮の香りが三人を迎える。無数の島が遠くから見るとエメラルドの海に散りばめられた宝石のように見える。この美しい景色の中に人工ふたなりなどという狂気の実験をしている島があるのだろうか?
舞が地図を見ながら言う。
「かなり沢山の島があるのね」
結が続けた。
「無人島もかなりあるので実験を隠すのに理にかなった立地とも言えるね」
「そうなのだよ!それにある程度の規模の施設が必要なはず……」
「しかし宛もなく探すには大変ね……」
マユリが自信ありげに提案する。
「とりあえず首都マーレへ向かおうか?情報収集と少し用事があるのだよ、少し前に二人はここに来たのだろ?」
「ええ……休暇バカンスでね。色々あったけどいい休暇になったのを覚えているわ」
モカとカリンとの冒険を思い出す。
どうしているだろうか?
あれから舞と結のところに電話がかかってきたことはなかった。
あの名刺が二人の希望となっていてくれることを祈った。
舞が脳裏にあの妖精コスプレを思い出す。
カァっと顔が赤くなった。
デバイスのマユリの生体センサーがピッっと鳴る。
「ん?舞?心拍数が上がったけど大丈夫なのかい?」
「だ……大丈夫よ」
結が口に手を当て押し殺すように含み笑いをしていた。
三人は首都マーレに着くとマユリの指示でとあるビルに向かった。
結がふと立ち止まる。
靴の紐を結ぶフリをして二人に話す。
「尾行されてるわ」
「!言われてみれば……でもこれって……」
「隠すつもりもないよね」
「軍や傭兵でもなさそう」
「どちらにしても向こうから動いてくれたら情報が入るから、一石二鳥ってことかしら?保留ってことでいいよね」
「念の為にマユリ……この区画の防犯カメラのハッキングだけはしておいて」
「もう終わったのだよ」
「流石ね」
イタズラっぽく胸ポケットのマユリを緩く撫でる。
「や……やめるのだよ」
尾行者はそのままにしておくことにして三人は目的のビルに向かう。
――軍作戦司令所――
「あの女の仲間を衛星から監視していたら、とんでもない大物が網にかかったみたいだ」
「間違えても直接あの二人にカメラを向けるんじゃないぞ!必ず気付かれるからな」
「突入部隊編成急げ!」
軍の動きも活発化していた。
尾行者が監視されているようだった。
「約束の場所はここなのだよ!さぁ入って入って!」
ビルに入るとエントランスで奥に廊下が伸びていく。
1階の一番奥の部屋に人の気配がする。
「誰かいるわ」
「一人だね」
「敵意は感じないけど油断しないで!」
「舞、結、大丈夫なのだよ!君たちも知っている人だ」
言われてゆっくりとドアを開けた。
そこにはマユリのLABOにいたスタッフのリーダー美由紀がいた。
利発そうなメガネをかけたチャーミングな美由紀が、にっこりと笑い迎えてくれた。
「舞さん、結さん、あのLABOの騒ぎの時はありがとうございました。局長も連れてきていただきありがとうございます」
美由紀の元気な声が部屋に響く。
聞いているこちらも元気を貰うような不思議な声だった。
舞が疑問に思っていたことを聞く。
「美由紀さんは、あの時マユリがデリートされてないとわかっていたような感じだったね」
「私はあの時……マキナが私の白衣を奪った時には私は局長がデバイスから消去されてないことに気付いてました。マキナが小声で『ティアに気づかれるな!』って言ったのです。どうしてなのでしょうね……」
「マキナは私をデリートしないようにしていたし、完全に裏切ったわけでもないのかもしれないね」
「そんなことが……次に会ったら聞いてみないとね」
「それはそうと、局長!言われていたこれ、間に合いました」
矢継ぎ早に話す。
「ありがとう!美由紀」
美由紀が机の上にケースを置いて二人を見て頷く。
「舞さん、結さん、どうぞ」
ドクン!
二人の心拍数が上がる。
「こ、これは!」
「開けてみたまえよ」
二人は同時にケースを開けた……
舞の前にナイフ二振りが青白い光を帯び持ち主に呼応するように燐光を放った。
結の前にハンドガンが二丁光っていた。結がグリップを握ると結に呼応するように燐光を放つ。
「マユリ……美由紀さん……これ……」
「あれからすぐにマユリ局長から指示があったのですよ『すぐに二人の装備を!』と」
「それでモルディブに持ってきて欲しいと!私も初めてのモルディブだったので二つ返事で了解って言っちゃいました」
「ふふふ、やっぱり2人には鉤爪よりもそれが似合う」
「ちゃんと服も用意を頼んであるのだよ!何事も準備が必要ということなのだよ!」
別のケースにフェアリーの戦闘スーツも入っていた二人はその場で着替える……黒の特殊繊維で編み込まれた服を身につける――ブーツと指先が開いたグローブを嵌める。たとえアンドロギュノスがなくなってもふたなりとして戦う勇者はフェアリーだ。
二人は戦闘スーツを着てその名を背負う。
結がトリガーガードに指をいれハンドガンをクルクルと回しながらホルスターに収めた。
舞がナイフにエナジーを込める……二本のナイフの刃と刃を触れさせる…………
バチッという音と共に雷光のように火花が弾けた。
そのまま腰のホルダーに収めた……
二人の立ち姿はあまりにも凛々しく美由紀は息をするのも忘れて見蕩れていた。
「私としては服は妖精のコスプレを推したのだがね」
舞の顔が一気に赤くなる。
「ちょっと!結……言ったのね〜」
舞は赤くなり結を睨んだ……
結がペロッと舌を出した。
「嘘でしょ」と頭をポリポリとかいた。
みんなが笑った。
みんなの願いは一つ。
この笑顔を護る……それだけだった。
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