〜因果〜
〜因果〜
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三日月
ライカン編〜因果〜
殺風景な部屋だった。
何も無い空間。
冷たい床。
毛布に包まり、暖を取っていた。
ダンボールのテーブルに非常食が置いてあった。
あのLABOへの襲撃から既に一週間が過ぎていた。
三人いや――二人と一台は廃ビルの一室に身を隠し、体力の回復と情報収集に明け暮れた。
舞と結が固いパンを齧りながら聞いた。
「しかしあの時どうしてデバイスの中のマユリは消えなかったの?」
四角い箱のマユリが答える。
「私はギリギリでマキナの裏切りに気がついたのだよ!しかし何故かマキナも私をデリートしないように細工していた痕跡もあるのだよ、まるでティアにバレないように私の意識をこのデバイスに残したかったのだろうかね」
あのマキナが?
「念の為に私は私にプロテクトをかけていたのだがね」
「ギリギリだったけど助かったという事ね」
結がにこやかに言う
「こんな小さなデバイスに成り果てたのだが……結?これで助かったとは言えないのだよ。あの身体は私がいざという時のために作ったというのに……マキナに奪われるなんて許せないのだよ」
舞がマユリをわしづかみにして口元に持っていき大きな声で聞く。
「マキナとティアは一体何がしたいの!?」
「舞!そんなに大声で叫ばなくても聞こえるのだよ」
舞を落ち着かせるように静かに答える。
「四柱計画であろうな……」
結が思い出しながら言った
「人ならざるものが持つ力。私の牙のチャクラ。舞の角のチャクラ」
「あとの二つは?」
箱マユリが答えた。
「予想はついているのだよ、おそらく一つは尾のチャクラ!!もう一つは翼のチャクラ!」
「牙と角と尾と翼……それって?……」
「まだこれも確定的な根拠がある訳でもないのだがね、あくまでも私の個人的推測なのだよ」
「鬼とヴァンパイア、そしておそらく獣神ライカンスロープの因子を持つ者!それと……それと……」
「翼の生えた何よ?」
マユリが返事に窮していた。
「…………なんか飛ぶヤツなのだよ!」
舞と結が見事に揃って
「ふーーーん飛ぶヤツねぇ」
と笑った。
「マユリ?箱だけどなんか熱いよ」
と箱を撫でる。
「やめてくれたまえよーー」
三人に笑顔が戻る。
箱の上に舞の手と結の手が重なる。
マユリの金属ケースの表面温度が二人の体温と揃っていく……
「マユリ……絶対に身体を取り戻して三人でスイーツ食べながら笑おうね」
「ああ……手伝っておくれよ!」
「まずはマユリの言うライカンスロープに関する情報だね」
「それよりも少し気になる情報があるのだよ」
「何?」
「……人工ふたなり!」
空気が瞬間で帯電したようにピリピリした。
「なんですって?」
「人工ふたなり?」
言葉に少し怒気が混じっている。
「どういうこと?」
「詳しくはわからないのだよ。極秘の国家機密からこの私が見つけ出したのだからね」
「人工的にふたなりを作るってこと?」
「そうだろうな」
「それでどうするつもりなのかしら?」
「私の予想なのだが、エナジーのエネルギー利用じゃないかと思うのだよ」
結が唸るように……
「エナジーのエネルギーを……」
「ふたなりのエナジーは、外部燃料を必要とせず生命活動そのものから生み出される。利用する側から見れば、夢のようなエネルギーなのだよ」
「数が集まれば、もしくはその中に何かしら人外の因子を持つものがいたなら一人で発電所に匹敵するほどのエネルギーを秘めていると言われているのだよ」
「そしてふたなりは数が少ない。協力的でない。見つからない。捕まえられない。とくれば、権力者の考えることは、後は一つしかないのだよ!」
「作れって事ね」
「そういうことなのだよ」
「でも……その……人工的にふたなりを作るって……手術して……ってこと? そういう外科的なことではないと思うのだけど」
「そもそも性別とは何か知っているかい?」
「確か染色体の二十三対目がXYなら男性、XXなら女性だったよね?」
「そう!」
マユリは続けた。
「では、ふたなりには何が違うと思う?」
「知らないわ」
舞が首を横に振った。
「普通の人間には二十三対、四十六本の染色体がある。だけど私たち《ふたなり》には、それだけでは説明できない特殊な配列があるのだよ」
「二十四対目?」
「いや、正確には染色体そのものではない。既存の二十三対に重なるように存在する、通常の検査では観測できない特殊配列――私はそれを便宜上《二十四番目の因子》と呼んでいるのだよ」
「そんなこと、ありえるの?」
舞と結は、自分の共鳴紋が震えているような気がして、服の上からそっと触れる。
「人ならざる因子を宿すための、ふたなりだけが持つ特殊な配列……いわば、神の悪戯のようなものなのだよ」
「でも私たちは、生まれつきそれを持っているってことよね?」
「そういうことなのだよ」
結が疑問を口にする。
「じゃあ人工ふたなりって……後天的にその《二十四番目の因子》を作り出すってこと?」
「そんなこと可能なの?」
「因果さ!」
マユリの声色が変わった。
「人の因果を狂わせるのさ! 本来その人が持つはずのなかった《二十四番目の因子》を、無理やりこの世界に発現させるのだよ」
「そんなこと……」
「そして、それを可能にするほどの力が――人ならざる者のチャクラから生み出されるエナジーなのだよ!」
舞と結の表情が強張った。
「だから私は、この人工ふたなり計画の基礎には、四柱の誰かが関係していると考えているのだよ」
「もちろんマユリのことだからだいたいの場所は掴んでるのでしょ?」
「もちろんなのだよ!その人工ふたなりの実験が行われてるであろう場所は……モルディブ諸島なのだよ」
「な!!」
廃ビルの冷たい空気がますます冷えたような気がした。
舞と結が絶句する。
二人の脳裏にあのモルディブの青い海と空の景色、モカとカリンの顔がはっきりと蘇った。
「関わってないといいけど」
「とりあえず行かなくちゃだよね」
舞が拳を握りしめて立ち上がり、箱のマユリを見下ろした。
「で?マユリはどこがいい?」
「ん?なんの事だい?」
「ずっとバックの中も飽きたでしょ?」
舞はそういうとマユリデバイスをジャケットの胸ポケットに入れた。
マユリの箱がピッタリと収まった。
「おわっ!そ!そこか!そこなの?」
マユリ箱が発熱し舞の胸と同じ温度になった。
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