〜帰還〜
〜帰還〜お楽しみください
三日月舞
舞と結は並んで雑居ビルに入った。
エレベーターに乗り込み秘密の地下へ降りてマユリのLABOへの通路を進んだ。
「ここが、マユリが秘密裏に作ったLABOよ」
「すごい……これをティアに悟られることなくするなんて……」
「そしてこの地下に私たちが目指すものがあるのよ」
二人は気を引き締めて先を進んだ。
LABOがあるビルの入口が見えるところに大きなトラックが止まっていた。
「目標の二人がビルに入りました」
報告が入る。距離はかなり離れていた。
「あの二人は只者ではない。近いと間違いなく気付かれる。よし、車をビルの近くへ!」
軍服を着た男が命令を下した。
トラックの内部は作戦司令室のようで、武装した兵士も乗っている。
「監視体制は?」
「衛星にて、あらゆるモードで監視しています」
「今回の任務はこのビルの制圧と、先程の二人の捕獲だ」
命令を下したのは大陸の大国、アジア連邦の士官だった。近年彼らはふたなりのエナジーのエネルギーを軍事、国家エネルギーとして転用する技術で世界を牛耳ろうとしていた。
「必ず生け捕りにするのだ!特にあの二人は我が国のエナジー兵器の研究をさらに加速させる実験体となる」
賑やかなアットホームな雰囲気だったLABOが、今は無人で寂しさが込み上げる。
『やっと戻ったのかい?待ってたよコーヒーが冷めてしまったじゃないか』
マユリの声!!二人ははっとして振り返ったが、ただ灰色の壁があるだけだった。
二人は溜息をつき進んだ。
「この先、まだ下なの?マキナって」
結が聞く
「そうだよ……元々アンドロギュノスの意思決定をしていた高機能AI〈デウス・エクス・マキナ!〉」
エレベーターの電源は生きておりすぐさま扉は開いた。
舞と結は手を繋ぎ覚悟を決める。
ボタンは二個しかない。ここと下だ。
舞は下のボタンを押した。
数階分降りたところで止まった。
扉が開くと前にマユリと見た、その景色そのものだった。
人を検知し電気が点灯する。
ブーンという音と共に本物と区別がつかないほどのリアルな立体映像でマキアが現れた。
その瞳には幾億もの膨大なデータが青色の滝のように流れていた。
「やぁ舞……久しぶり。よくぞ戻ったね……そちらは結だね、初めましてマキナです。結もよく戻ったね」
舞が一歩踏み出して言う。呑気な挨拶をするマキナに、少し苛立ちを募らせていた。
「そんなありきたりな挨拶をしにきた訳じゃないのはあなたが知ってるでしょ?マユリは死の間際、このデバイスをあなたに渡せと言った。これはなんなの?あなたに渡すとどうなるの?」
「貴女はこれを私に渡すとどうなると思っているのですか?まさかマユリが生き返るとでも思ってるのですか?」
二人は動揺する――
「そんなこと……」
「願い思わなくはないけど……死人は生き返らない」
「舞と結が思ってる通りです。死人は生き返りません。しかしこのデバイスには死の間際までのマユリの全てがここに入っています。そしてその膨大なデータは私のこの広大なデータベースの約半分を占めるものです。それをシステム化し私のようにAIとして生まれ変わらせることは私の全てのリソースを使って処理することになるのです」
「何が言いたいのよ!難しいこと言わないで!わかんないわよ!」
舞が壁を叩き、デバイスをマキナのコンソールに叩きつけた!
デバイスがピッと鳴り反応した。
「舞!そんなに叩きつけたら痛いではないか!あはは!君は少しも変わらないのだな」
マユリの声がデバイスから聞こえる。
――舞と結の目がこぼれ落ちそうなぐらい大きく見開いた。
「マユリ!その中にいるの?」
「デバイスをそのコンソールに置くことが再起動のスイッチなのだよ!」
結が叫ぶ
「マユリ!よかった……生きているのね?」
「生きているも何も私はあの時、君たち2人の膝枕でご臨終したではないか」
「だけども……こうして!」
「今の私はただの箱なのだよ。こうして話してるのは、ただの私を模した電気信号なのだよ」
マキナが黙ってやり取りを見ていた。
「隣の隠し部屋にきたまえよ!マキナ、開けてくれないか?」
マキナを見る。
「どうぞ……これは私の望みでもある。」
マキナの目がキラリと光り、何も無い壁に四角い切れ目が入りドアのように開いた。
所狭しと機械が設置されており、全ての技師が忙しなく動いてキーボードを叩き。データーを検算していた。
「あなたたち……ここに?」
「舞さん。結さん。おかえりなさい。」
リーダーの美由紀が嬉しそうな声で迎えてくれた。
「あの南米のミッションの最中、局長が舞さんの後を追って行く時にはもう本部を引き払ってここに移動する手筈になっていたのです」
結が嬉しそうに言う。
「そうなのね……本当に良かった」
!!ふと、美由紀の背後にあるものに意識を奪われた。
目の前に大きなガラスの円柱があった。
結はその中にあるものを見て――
息を呑んだ。
「マユリ!!!」
裸のマユリが培養液の中でフワフワと浮いていた。
「こ!これは……」
舞も驚愕の表情でその培養液に浮かぶマユリを見ていた。
「こら!デバイスが来る前に服をちゃんと着せておいてくれたまえよ、とお願いしてたと思うのだが?あんまりジロジロ見ないでおくれよ!作り物とはいえ私なのだから」
「作り物?このマユリが?」
「そうとも!私とマキナとここの仲間が心血を注ぎ作り上げたクローン技術とナノアンドロイド技術を駆使して作った半人半機の体なのだよ!」
「半人半機!……難しいとこは分からないけどとにかくマユリが生き返るのね?それならはなんの問題もないじゃない?早くその中に入りなさいよ!」
「舞、相変わらず君は脳筋だね……まぁそこが可愛いところなんだよね?結?」
「え、あ、あ……」
結が急に振られてドギマギしてしまう。
「私は結のそういうウブなところが大好きなのだよ」
「さて、からかうのはここまでにしてそろそろメインの話をしようではないか」
空気の質がビリッと変わる……
「私がその身体に入るためには二つの条件があるのだ
よ!」
マキナが続きを話した。
「私とマユリは今、同じデータフレームの中に混在しているのです。つまり片方だけが消失するともう片方もきっと消えてしまう可能性があるのです。マユリはそれを望んでいないようですが……」
「それについては賭けみたいなものだけど勝算はあると言っておこう」
箱のマユリが続ける。
「舞、結二人の力が必要なのだよ……もう一つの条件もそれに関係するのだよ」
二人は声を揃えて
「私達に出来ることは何でもするわ!」
「ありがとう。私の魂と呼ぶものはこのデバイスとマキナの中にあるがそのなんと呼ぶべきか……そう!魂の座標はあのブラン城のあの場所、二人の膝枕のあの場所にあるのだよ。」
「その時のチャクラ……そう、結の『牙のチャクラ』と、舞の『角のチャクラ』を回し、私のチャクラを共鳴させてほしいのさ」
マユリの声に、科学者としての熱が帯びる。
「普通の人間には、精神を司るチャクラが七つ存在する。だが、異形の因子を持つ我ら特別な《ふたなり》には、その奥に眠る、八番目のチャクラがあるのだよ。私の予想が正しければ、二人のエナジーでこの半人半機の身体の『八番目』を強制駆動させられたなら、マキナのシステムを巻き添えにすることなく、私はこの器に魂を定着させられると確信している。……やってくれるかい? 針の穴に糸を通すような、難しい精神作業だよ」
「もちろんやってみせるわ」
マユリの器がガラスシリンダーから出され床に仰向けに寝かされる。
舞と結が膝にその頭を載せる。
膝が感じる体温の全く感じない頭の感触が、二人にあの時の記憶を蘇らせ、顔が曇る。
しかしあの時とは違う、今度はマユリをここに還すのだ。
「結、やるよ」
「舞……想いを一つに」
エナジーを少しづつ体に巡らせていく……
二人の身体が燐光を放ち始める。
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