美衣
美衣〜お届けします。お楽しみください
三日月
ブラン城編〜美衣〜
私と美衣は双子だった。
私が姉で、美衣が妹……どうして今まで忘れてたんだろう……
記憶がひとつずつ戻ってくる。
おじいちゃんの声がする……あれ?周りのみんな角がある……
美衣?あ!いた……美衣は角が2本なんだね!
私にはほら1本しかないんだよ!
おじいちゃんが私に何か言っている怒ってるの?
「鬼族に1本角生まれし時災い降り注ぐ——古よりの言い伝えじゃ!今すぐ姉を殺すのだ!ましてや見ろ!姉の方は『ふたなり』ではないか!」
生まれたての赤子の記憶?
母と父は鬼ではないが鬼の家系らしい……
「この禍の子が育つ前に今すぐ間引くのじゃ!」
「お願いです――命だけは!」
必死で助けを乞うている。
両親の必死の訴えで私は命を救われた。
両親は分け隔てなく私と美衣を育ててくれた。
美衣は鬼としてすごい才能を持っていた。
スピードやパワー全てにおいて私の遥か上だった。
私は鬼としての能力も低く、いつも美衣と比べられていた。
そして五歳の時、美衣が村で鬼の戦士たる試練にて最高の成績をあげる。
「美衣はすごいのぉ!それに比べて姉の方はやはりあの時殺すべきだった!」
お父さんとお母さんはいつも必死で私を守ってくれた。
「この子はまだ五歳なんです!」
「鬼の力が弱いからと言ってこの子に生きてはダメだと言うのですか!」
と両親は鬼の郷の掟に背いていた。
「お父さん、お母さん、ごめんね、私がこんな出来損ないで……」
「舞、あなたは出来損ないなんかじゃないのよ、もうそんなこと言っちゃダメ」
「そうだぞ!舞、お父さんもお母さんも舞と美衣の親で本当に幸せなのだから」
両親も美衣も決して私を蔑んだりはしなかった。
むしろ大切に育ててもらっていた。
十歳の時だった。
村の子供が私の一本角をからかった。
「一本角の出来損ない〜」
きつい言葉を浴びせながら私をからかい押して倒した。
美衣が怒りの声をあげる!
「お姉ちゃんに酷いことするなぁ!!」
美衣の二本の角から雷が出て周りの物を全て吹き飛ばす!子供に怪我は無かったがその様子を見ていた村の大人達が騒ぎ始めた。
「おおおおお!!」
村長が声をあげた。
「この美衣の力!恐るべきパワー!」
その日から美衣は『雷神』と崇められた。
それから私は常に《雷神美衣の姉》としてしか見られなくなった。
美衣に生かされた。
美衣と両親だけが私を認めてくれた。
「美衣、『雷神』なんて呼ばれて本当にすごいね。お姉ちゃんも嬉しいよ」
ある日二人の時にそんな話をした。
美衣は私の目を見て静かに答えた。
「お姉ちゃん、そんな称号なんて偉くも何ともないんだよ、戦う力なんていつかそれより強い力に負けるだけなのよ。私はお姉ちゃんの優しいところが大好きだから。それにお姉ちゃんもすごい力あるんだから……今はその出し方を知らないだけだよ!」
と言ってくれた……
そしてある日そんな日常が終わった。
村が襲撃された。
鬼狩りだった。
なぜ村が襲われたのか、当時の私には分からなかった。
誰かが人里を襲ったのかもしれない。
あるいは、鬼というだけで狙われたのかもしれない。
すごい数の兵隊が村に押し寄せ、銃やマシンガンで次々と村人を殺して回った。
お父さんとお母さんが私と美衣を裏口から逃がしてくれた。
「舞!美衣!強く優しく生きなさい!」
両親はそう話すと二人だけを裏口に押し進めた。
「お父さん!お母さんも!一緒がいい!」
「ダメだ!二人で行くんだ!」
「嫌だよ!そんなの!」
「美衣!お姉ちゃんを頼む」
駄々をこねる私の腕を引っ張るように美衣が裏口に進む
その後振り返ると裏口が爆薬で崩れた。
きっと両親が二人を逃すために裏口を塞いだのだろう。
「美衣!どうして?お父さんもお母さんもあのままじゃ……」
「お姉ちゃん!お父さんとお母さんは私達を護る為にあそこに残ったのよ!いつか私達が人を護れる力を手に入れるために!」
私と美衣は泣きながら進んだ。
私と美衣は村を抜け、人間の領地へ向かって逃げ続けた。
けれど、いつの間にか兵隊たちに周囲を囲まれ始めていた。
美衣は辺りの気配を探る。
「お姉ちゃん、私はこの力でお姉ちゃんを護る」
美衣は私を小屋に押し込み、一人で外で戦っていた。
私は小屋の隅で頭を抱え、子供のように身体を丸めて震えることしかできなかった。
美衣は十歳とは思えないスピードとパワーだった。
兵隊を次々に倒していく。
角から雷が出て周りを吹き飛ばす。
鬼といえども銃で撃たれれば血も出るし、死ぬ。
一発……また……一発と無慈悲な銃弾が美衣の動きを鈍くしていく……美衣は撃たれてもすぐに立ち上がり戦っていたが、とうとう膝が折れ、立ち上がることが出来なくなっていた。
あの強い美衣が『雷神』と呼ばれた美衣が……
このままでは私の前から消えてしまう!
怖い……銃や鬼狩りよりもそれが怖い!
私はそれを見て飛び出した……
美衣!!目の前が真っ赤になり何も覚えてはいなかった。――――
視界が紅蓮の焔に染まり、ただ頭が痛くてその頭痛から逃れようとした瞬間、
身体の全てを得体の知れない本能に奪われた。
あれほど騒がしかった銃声が消え去り。
硝煙が立ち上がる中、見渡すと原型をとどめている者はなく全滅していた。
美衣は大量に銃弾を浴びて倒れていた。
「美衣!美衣!死なないで!お姉ちゃんを一人にしないで!」
「お姉ちゃんはやっぱり凄いよほら――これ全部お姉ちゃんがやっつけたんだよ?」
「私が?」
「でもお姉ちゃんの力はまだ制御出来ていないから」
「私にこんな力が……」
私は自分が怖くなった。
別の部隊の兵隊が大量に走ってくるのが見える。
「美衣逃げよう」
「お姉ちゃん、私はもうダメ」
「何言ってるの?ほら行くよ」
「お姉ちゃんにこれを」といい……私を引き寄せ額と額をくっつけ念じた――
美衣の二本の角が眩く輝き、その光が額を通じて私の中へ流れ込んできた。
角そのものが消えていくのと同時に、美衣の力と記憶が、私の魂の奥へ封じ込められていく。
「お姉ちゃん――お姉ちゃんが本当に守りたいものに会った時に美衣のこと思い出して!美衣はお姉ちゃんを護れて嬉しかったんだよ……今からきっとお姉ちゃんは記憶を無くすと思う……でもきっと……きっと美衣はそばにいるからね……」
そういうと美衣は最後の力を振り絞り私を崖下に突き落とした……落ちる瞬間――美衣がたった一人で大量の兵隊に立ちはだかるのが見えた。
「私はちっとも怖くないよ、だって最後までお姉ちゃんを護れたから」
角を失った美衣の最後の咆哮が兵士を震え上がらせた。
「追わせない!」
私は川に落ち、激流に流されていく。
そして下流で釣りをしていた育ての父に助けられた。
「どうしたんだ!君!傷だらけじゃないか!」
「あ……あ……私は舞……」
それだけだった。
美衣も。
父も。
母も。
鬼の事も。
何ひとつ思い出せなかった。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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