紫焔
紫焔〜お楽しみください( ⌯ノㅿノ)
三日月
ブラン城編〜紫焔〜
――結は上空から戦場を見ていた。
舞とマユリが愛理と激しく戦っている様子を見ていた。
舞が刀で愛理の攻撃を受け、返す刀で袈裟に切り込む!
愛理が後ろに飛び、避けた。
横からマユリが紫外線手榴弾を投げるが爪で真っ二つに切られる。
愛理の牙がマユリに襲いかかるのを舞が回り込んでその牙を刀で受ける。
ガキン!っと音が鳴り愛理の牙がギチギチと刀を咬む。
「マユリ!私の後ろに!」
マユリの手を握り自分の背後に引っ張って庇う。
結は目を疑った……
舞と一緒に戦っているマユリを見た。
戦いながら舞とマユリの目が合う
(ドクン!)
何?あの二人の空気?
(ドクン!ドクン!)
身体を張ってマユリをガードする。
舞に愛理の爪が襲いかかる。
全て刀で受け流し刀を上段に構える。
(血が逆流する!)
マユリが『助かったよ、舞』と微笑み、舞のサポートをする。
舞の右腕から流れる血を拭き、止血スプレーをかける。
「サンキュー!マユリ」
視線は愛理からは切れないが、微笑みマユリに感謝する。
結の網膜に真っ赤なフィルターがかかり、目の前が真っ赤に染まる。
それは愛しているからこその拒絶。
舞の瞳の中に、自分以外の誰かが映っていることが、千の杭を打ち込まれるよりも結を傷つけた。
全ての景色が紅蓮に染まり結の口から咆哮が轟いた!
――ゴルゥゥアーー!!
場の全てを威圧する咆哮が聞こえ烈火のごとく結が降りてきた。
舞が叫ぶ!
「結ぃぃぃぃ」
愛理が歓喜の声をあげる
「結様ぁぁ〜」
マユリが言った。
「結!ひどい有様だな、話も出来ないではないか!」
結はマユリを振り返り牙をむいた
「ぐろあぁぉ」
マユリに爪を振りかざす
「怒らせてしまったようだね?」
飛び避けながら呟く。結は聞く耳も持たないように狂ったように獣の咆哮を上げながら鋭い牙をマユリに打ち立てようと迫る。
「怒ってる。という訳だけでもなさそうなのだな」
その狂気に満ちた視線にマユリは冷や汗を流す。
舞がすごい速さで回り込んでマユリとの間に入りエナジーシールドを貼る。ガキン!と一撃でシールドが壊れる。
「結!やめて!私とマユリなのよ!」
舞を翼でなぎ払い、そこに愛理が爪の斬撃を放つ!ギリギリで刀で受け弾く。
「つ……強い……」
愛理が結の影響なのか速さと力が圧倒的に上がった。
舞が愛理の斬撃を弾いた一瞬の隙に、結は舞の脇を抜け、マユリへ襲いかかった。
マユリの背中が切られ服が破けた。
結の目にマユリの背中の古傷が見えた。
初めて二人が異形化した時に舞がマユリを傷つけたあの二人の絆のような傷跡。
(舞!私だけじゃなかったの?)
怒りではない。もっと湿った感情……醜い嫉妬だった。その感情が紫色の炎となり、結の精神を焼き尽くしていく。
結は狂ったようにマユリの背中を爪で引っ掻いた。
マユリの背中がズタズタになる。
マユリを攻撃していると言うよりその背中の傷を掻き消そうとしているようだった。
「ああーー」
マユリの悲鳴が響き渡る。
「マユリ!!」
舞の視界が赤く染まる。
「くぁぁ、、おおあああ!」
舞の額から1本の角がメキメキと伸び鬼化した。
凄い速さで移動して、マユリに襲いかかる結の爪を叩き切った。
鋭利な刃物のような爪が地面に落ちた。
結が、悲鳴とも怒号ともつかない咆哮を上げる。
その目には、舞への怒りと、捨てられた子供のような悲しみが入り混じっていた。
(またこの女のために!!)
結がものすごい咆哮を放った!
「ぎゃゃおおおあああああ」
なくなった爪がすぐに再生した。
さっきの爪より鋭利で凶悪な爪だった。
鬼の舞と結が激しく切り合う。
結に刃が当たる度に結の紫焔は大きくなって結の魂を焼き尽くしていく。
舞が袈裟斬りで結の肩口を狙う。
ガキンっ!
振り切れなかった……袈裟に斬った刀が爪で受けられ途中で止まった。
結が舞を思い切り蹴る。刀から手が離れて飛ばされる。
結の身体の硬度が上がりもう刀でも切れなくなっていたのか?舞自身に躊躇があるのか?
しかも愛理との連携でどんどんと舞は劣勢になっていた……
右手のアーマーで刀を呼び戻した。
左手のアーマーからアンカーを結の腹部に打ち込みそのままアンカーを巻き取り結に接近して刀を突き立てようとする。
(突きなら!)
しかし切っ先が結の体に刺さった瞬間――止まってしまった。
私が止めてしまったのか?
「結を切れない!」
結が両手で刀を挟み捻った。
パキン!と音がして刀が折られた。
(もうダメ)
結が舞に牙を剥く
「舞!何をやってるのだよ」
マユリが助けようと舞を引っ張る。
結の猛攻に意識を奪われていた。
その刹那、背後から肉薄した愛理の爪が舞の額の角を根本から断ち切った。
「あっあっ……」
宙を舞い、一本の角が床に転がる。
その切り口から噴水のように血が吹き出した。
鮮血と同時に舞の鬼の力がその身体から失われていく。
愛理の蹴りで簡単に壁際まで吹き飛ばされた。
「ぐぁぁ」
マユリが叫びながら舞のもとへ行こうとするが結の攻撃から逃れるだけで精一杯だった。
「舞!舞ぃ!」
「マユリ!!」
(あぁ……私はまた護れないの?)
すぐに愛理の爪が追撃してくる。
舞はとっさに左手のアーマーでその爪を受けようとした。
ガツン!!
鈍い音がして舞の肘から先が床に転がった。
「ぐ……ああ……ああああっ……」
角の跡と左腕からの出血が止まらない。
ドクドクと額と左腕から生命が流れ出していく。
(ああ……もうダメだ……みんな……ごめん……私はまたこうして逃げ出すことしか出来ない……)
舞が頭を抱えて子供のように丸くうずくまった。
愛理が呆れた声を出す。
「はぁ何それ?」
愛理が足で舞を蹴る。
吹き飛ばされてまた丸くうずくまった。
「あははは!無様ね!これが鬼の因子の力?もう終わりなの?」
蹴り転がす。
また丸くうずくまる。舞にはもう立ち上がる理由すら見つけられなかった。
「お前がいるから、結様が苦しむ!」
愛理が面白がって爪でプスッ!プスッ!と背中を刺していく。
(痛い……こわいよ……助けて……)
舞が幼子のように嗚咽していた。
マユリが叫んだ!
「舞ぃぃぃ」
舞は自分の意識の中に閉じこもっていた。
外からの情報を遮断してしまっていた。
その舞に小さくか細い声が聞こえ、舞はその声を聞き漏らすまいと精神を集中させた。
お……ね…………ちゃん…………
小さな声が聞こえた……いや……走馬灯?
違う……記憶の声だ……
愛理が背中をプスプスと突いている。
……その小さな声に集中した……
お…………ちゃん……おね……ちゃん……お姉ちゃん…………誰だっけ?……あ……少し前にマユリのCOCOONの中で聞いた声だ………
……私はこの声を知っている……
……思い出せない……
その声は必死に呼んでいた。
……お姉ちゃん……
胸の奥で何かが弾けた。
忘れていた名前をようやく思い出した。
――美衣!
思い出した。
双子の妹……美衣の声だった……
舞は記憶の底に沈んでいく…………
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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