平行線
平行線〜お届けします٩(〃._.〃)ว
三日月舞
ブラン城編〜平行線〜
ゆかとエミリーが黒い障壁の向こうへ消え去り、気配も空間ごと完全に消失した。
静まり返ったブラン城の大広間に、舞とマユリの二人だけが取り残される。
「あの二人、大丈夫かな……」
舞が消えた空間を見つめたまま、ぽつりと呟いた。
舞とマユリは警戒する……
「大丈夫なのだよ、あの二人は舞と結が来るまでずっと二人でフェアリーのエースコンビだったのだからね」
静かに時だけが流れていく。
しばらく待ってみようと、マユリが簡易なコーヒーを作ってくれた。
「ありがとう、マユリ」
紙コップのコーヒーに口をつけようとした。その時……
揺れるコーヒーの液面に自分の顔が映り込む
――いや。違う!そこに映ったのは、〈金色に輝く自分〉だった。
何か必死で叫んでいるようだ。(何か言ってる?)
「ん?猫舌なのかい?」
動きを止めた舞にマユリが話しかけた。
コーヒーのいい香りがしはっと現実に引き戻された。
「大丈夫よ」
ひゅっと風が吹いた。
舞とマユリがハッとなり振り返る。
「今――ゆかとエミリーの声が聞こえた」
「たしかに聞こえたのだよ!声というか思念というか」
「でもあの思念が……本当なら――」
舞の目から涙が溢れる。
そっとマユリが舞の肩に手を添える。
「私達は――未来を託されたのだよ」
「そうね……進むだけだね」
その瞬間――
!!!舞の本能が反応する。
マユリの頭部に向かって音もなく何かが飛んでくる!
舞が居合で叩き落とす。
マユリがびっくりして戦闘態勢に入った。
「舞、ありがとう!助かったよ。」
飛来物は物質ではなく斬撃だった。
舞は同じく鞘の中の刀にエナジーを込めて居合と共に斬撃をその瘴気に向かって撃った!音もなく舞の斬撃が止められたようだ。
瘴気が凝り固まり人型になっていく。
凄まじく美しい女が現れた。
しかしその口元には獰猛な牙が生えて虹彩は縦長に伸びていた。背には禍々しい蝙蝠の翼がゆらゆらと揺れている。
「あなたが愛理?」
女は答えない
「結はどこ?」
女の切れ長の目が鋭く光を放つ。
「お前か?お前が結様を混乱させる元凶だな?」
「何言ってるの?お前らヴァンパイアが結を困惑させているんじゃない?」
「お前たち人間は何故に?そんなに傲慢なのだ!
私達は!ヴァンパイアは太古の昔より忌み嫌われ
迫害され殺され続けた……」
マユリが一歩前に出る。
「それはお前たちヴァンパイアが人を襲い血を吸い眷属を増やし人に害を与えてきたからなのだよ!どちらが先になど言うまいな?自業自得で恨み言を言うなど、へそで茶が沸くのだよ!」
マユリの言葉が引き金となり愛理は激昂した!
「あの人間どものせいで、三賢者も死に絶え消滅した!まさか相打ちを狙うとは忌々しい!」
舞は直感でゆかとエミリーだと悟った。
「あの二人は?相打ちって何よ?無事なの?」
聞きながら直感した、ゆかとエミリーが命を賭けて道を切り開いてくれたと……託された未来!
「人間の事など知らぬ!お前たちの血で償え!」
といい襲いかかってきた!
舞は刀を抜刀し正眼に構えて迎え撃つ。
ヴァンパイアが一人、目を瞑り座っていた。
結だった。
その姿は以前の結とは全く変わってしまって皮膚の質感さえ変わっていた。
ただ一つ、紅く縦長に伸びた虹彩の奥の光だけが以前の結のままだった。
結は祭壇の床で結跏趺坐して精神統一し、己の中の己と葛藤していた。
ヴァンパイアの王として遺伝子に刻まれた人間を憎む心は今も心の中で渦巻いている。
人間として生き、愛する人と出会い、共に生きようと決めた太陽のように熱く光り輝く感情を感じる。
(日光が弱点のヴァンパイアなのに心は塵にならないのね)
一人皮肉を思い苦笑する。
憎悪渦巻く心の中で闇に染まりそうになっても最後の一欠片がどうしても消えない。
しかしあの言葉
「コロセ!」
自分で発した言葉が結の人を愛したい気持ちを蝕む
「私は舞になんてことを……」
ほつれた心が、後悔と懺悔でまた固く縛られる……
心は千々に乱れ、答えの無い問いが続く。
右目からは人間を憎む怒りの血の涙が、
左目からは透明な舞を愛する悲しみの涙が、
頬を伝う……
行こう!
この目で、舞を見よう。
この鼻で、舞の香りを嗅ごう。
この耳で、舞の声を聞こう。
この口で、舞の名を呼ぼう。
この手で、舞に触れよう。
――この全てで
行けば、舞に会えばこの絡まった感情が何とかなるのか?分からなかったがとりあえずは今の私のまま会いに行くのだ。
結は翼を広げ舞の元へ羽ばたいた。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
そしてよろしければブックマークや評価など頂けると
私自身の励みになります。
どうかよろしくお願いいたします。




