涙闘
涙闘〜お楽しみください。
三日月
ブラン城編〜涙闘〜
マユリがブラン城の荘厳なドアの前に立っている。
「インターホンはないみたいなのだよ」
言いながらドアをノックしたが何の反応もなかった。
ゆかが一歩前に出て
「私がノックしてみるわ!」といいグローブの起動ボタンを押す。
超伝導ナックルグローブが超振動してブーンと音を立てている……
ゆかの拳がドアを叩いた!
ドゴンっ!
凄い音がしてドアが内側に壊れながら開いた……
――中からむせ返るような血の匂いがする。
四人の顔が嫌悪感で歪む……
「こんなに…………」
エミリーが思い出すように言う。
「ここに来る前、例の集団神隠し事件の街の様子も見てきたけど、街が本当にもぬけの殻……そこら中に血の跡がこびりついて私も目を背けるぐらいだったわ。もしかしたら……全員…………」
中に入り進んでいく……
中央まで来た時、
壊れたドアがまた轟音と共にしまった!
壊れている分少しスキマが開きその隙間から夕焼けの陽光が入り、光の筋を広間に刻んでいた。
すると部屋のドアがカチャリと開き、次々とヴァンパイアが出てきた!
嫌な予感が的中した。
エミリーが歯軋りしながら怒気を含んだ声で叫ぶ。
「ヴァンパイア共――やりやがった!」
その姿を見て、四人はすぐに察した。
着てる服があの無人になった街の人のそれと変わらない。
完全に支配されており、言葉も通じなかった……
エミリーがマユリに聞く。
「マユリ!あの人達を元に戻す方法はあるのか?」
「…………ない……と思う。もう多分血の質が変わってしまっているのだよ」
と伏せ目で答えた。
ゆかが黒く塗りつぶされた板で閉められている窓に銃弾を撃ち込んだ。
銃弾の穴から夕方の陽光がレーザービームのようにヴァンパイアを焼いた。悲鳴と咆哮が入り交じり。ヴァンパイアたちは部屋に逃げ込んでいく。
「やっぱり日光が弱点なのだよ……フィクションだと思われてたのに物語や伝承なども一概にはバカにできないのだね」
マユリがリュックから簡易食料を出した。
「今のうちに腹ごしらえなのだよ」
三人は意味が分かっていた。
夜になれば間違いなく戦闘になるそれも激しい戦闘だ。
食事をしながら覚悟を決める。
時と共に入ってくる陽光は弱くなっていく。
「きっと日が沈むとヴァンパイアとの戦いになる。そしてそれは昨日までの街の人だ……」
「私たちは進まなければならない」
「いいね?みんな!」
そして日が沈みヴァンパイアの時間がやってきた。
日光の危険がなくなりヴァンパイアたちがゾロゾロと出てくる、牙を向き威嚇してくる。
四人は顔を見合せ、頷き四方へ走った!
エミリーはマユリが開発したという紫外線弾を両手のハンドガンで撃ちまくる。
紫外線弾が当たったヴァンパイアは塵になって消えた。
ゆかは超振動パンチでヴァンパイアを破壊していく!
ある程度ならヴァンパイアは再生してしまう。
ゆかは心臓に杭を打ち込むが如く確実に心臓を破壊していく。
心臓を潰されたヴァンパイアも塵になって消えた。
マユリは新開発した、光学迷彩スーツで景色に溶け込み消えた。
手には紫外線発生機を持ちヴァンパイアに忍び寄り至近距離から紫外線を浴びせ塵にしていく。
舞はすごいスピードで動きながら抜刀し刀身にエナジーを込め次々と心臓を貫いていく。
舞の通ったあとはヴァンパイアの塵が大量に降り注いだ。
元は街の人達なのはわかっていた。
ヴァンパイアになってしまうと理性も何も無くなり元には戻れない。
わかっていたが着ている服が顔がどうしても街の人達を想起させる。
舞には、彼らにも昨日までの暮らしがあったのだと思えてならなかった。
幸せだった今日があり、もっと素晴らしい明日が来ると信じて生きていたはずなのに――。
ゆかが老婆の心臓をパンチで破壊した。
エミリーがお爺さんの頭部に紫外線弾を撃ち込んだ。
マユリが美しく着飾った女性を紫外線光線で焼き尽くした。
舞は少女を袈裟斬りにした。
誰かからのプレゼントだろうか?首に花飾りが見えた。
一瞬心臓の手前で刀が止まる。
しかし理性も人間性も失ったヴァンパイアの少女が牙をガチガチと鳴らして噛みつこうとしている。
舞は歯を食いしばりまた刀を進め心臓を断ち切った。
塵になり床に花飾りだけが落ちた。
四人は涙を流しながら戦い続けた。
涙で滲んだ視界のまま次の敵に疾った。
「人の命を!こんな風に……許さん!」
握りしめた刀の柄から、舞の激情がエナジーとなって溢れ出す。その熱量は、マユリの計算を遥かに超え、周囲の空気を歪ませ始めていた。
◇
——ブラン城、最奥——
雑兵ヴァンパイアが次々と塵になって行くのを愛理と三賢者が見ていた。
三賢者メルキオールが憤怒し、叫んだ。
「見ていられないわ!私が行って皆殺しにするのよ!」
バルタザールが幼女のような顔で
「キャハハハ!メルキオールであの四人に勝てないっしょ??キャハッ!それよか王はどうしちゃったのぉ?」
カスパーがしわがれた声で
「わしの秘術で終わらそうかい?」
結は時々人格が入れ替わるようになり不安定になってきていた。
愛理がモニターに映る舞を見ながら言った。
「あの女が近くまで来ているからよ……! 結様の心が、あの女の記憶に引っ張られて拒絶を起こしているの。目の前で八つ裂きにしてやれば、未練も消えて、結様は本当の孤高の王になるわ!」
愛理がモニターを睨みつけて叫んだ瞬間、肉を裂く鈍い音が響いた。
「――あぐっ……!」
メルキオールが、自身の長く伸びた禍々しい爪を、愛理の肩深くへと容赦なく突き刺したのだ。
「お前が傍に仕えていながら、なぜ王をそこまで苦しませているの?……この、無能め」
愛理は痛みを堪えながらすごい目でメルキオールを睨む。
「わかっているわ!」
メルキオールの爪が抜かれた。
傷がシュゥっとすぐに再生した。
愛理が結の様子を伺うと、結が頭を押さえて苦しんでいた……
結の精神は、ヴァンパイアのどす黒い瘴気に覆われていた。
それでも意識の最深部には、まだ消えない一筋の光が残っている。
――舞。
その顔だけが、結をかろうじて闇の底へ沈ませずにいた。
「後ろの二人はあなた達に任せるわ!」
愛理がメルキオール、バルタザール、カスパーに視線を送りながら言う
「仕方ないわね」とメルキオールが爪を研ぎながら背中から翼を生やし飛んでいく。
バルタザールが「キャハハ!つまんなかったら愛理!あんた殺すから!」といい飛んでいく。
カスパーは何やら手で印を切りながら呪文を唱える。
◇
——大広間——
舞とマユリ。ゆかとエミリーの間に突然黒い壁が現れた。
ゆかとエミリーが黒い壁に飲まれていく……
舞が抜刀し黒い障壁に斬撃を叩き込むが、刀が素通りした。
実体のある壁ではなかった。
マユリがその壁を見て言った。
「空間転移なのだよ!」
舞が叫ぶ!
「ゆか!エミリー!死なないで!」
二人は親指を立てて何かを言う。
言葉の音はもう届かなかった。
言葉を交わすことなく意思の疎通が可能な指と手の動きで表すフェアリーサインで伝えた。
「ありがとう。舞とマユリも生きるんだよ」
はっきりと見えた。
ゆかとエミリーが黒い障壁に包まれてどこかに転移させられた。
広間に残されたのは舞とマユリだけだった。
静寂が広間を支配した。
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次回更新は明日19時です。
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