マキナ
〜マキナ〜お楽しみください
三日月舞
ブラン城編〜マキナ〜
「マキナは元々アンドロギュノスの地下深くにあって、組織の理念や行動原理を統括していた、いわば本当の監督官だったのだよ!」
マユリは熱を込めて語る。その瞳の奥には、科学者としての誇りが見えた。
「設計には私も深く関わっていたのだよ」
マユリは続ける。
「私はこの歪んだ世界を正すためには人の判断力ではもう間に合わないと思ったのだよ」
「でも最終的に計算では導けない人の衝動が未来を決めると私は信じてるわ」
舞が真っ直ぐに見つめながらいう。
「舞の言う『人が動く動機』という意味ではその通りなのだよ。私は全てのデータを精査し、無駄のない作戦立案、計画、するためにはAIが不可欠だと信じていたのだよ」
「それはそうだと私も思う、人はどうしても計画の段階で成功を組み込んでしまうものね」
「人の偏見や思考の曖昧さでは合理的には進めない。私はその意志を持ってこのマキナに膨大な思考パターンを書き込んだのだよ!」
「その思考の最も核となるメインフレームに刻まれた最初の言葉。......それは『愛』なのだよ」
「愛一一」
舞はその言葉を反芻する。
「そう!私はその理念に賛同して、マキナの名のもとに動いてきたのだよ。.....しかし、ティアという稀代の魔法使いが、ある野望を抱いた」
マユリの表情に、微かな陰りがさす。
「マキナを停止させアンドロギュノスを自らの野望のための道具として利用しようとし始めたのさ。私はそれを阻止すべくマキナを停止したと思わせるようにしてこの新しいLABOを作りマキナの機能を全てここに集約したのだよ!」
一気に捲し立てたマユリは、ふっとトーンを落とした。
「などと仰々しく言ってはいるけど私は――
あの女が怖かったのだよ、全てを奪っていかれるような……」
「大丈夫よ何も奪わせはしないわ」
舞がマユリの手を握る。
「ティアの野望ってなんなの?」
「舞?少し前に、もし神様がいるならそれはふたなりだと思うって話をしたのを覚えているかい?」
舞が頷く。
「もちろん覚えているわ」
「ティアは自分がふたなりであるなら自らが神になれると考えたのだよ!」
マユリは大きく息を吸い込んだ
「そのための壮大な計画が[四柱計画]なのだよ!」
舞は聞きながら体温が低くなるのを感じていた。
「四柱?計画?……神……そんな大それたことを……」
「本当の具体的なことはマキナにも解析できないけれど……結と舞、君たち二人がその『四柱』のうちの二柱であることは分かっているのだよ」
舞は言葉を失い、自分の手を見つめた。
「私達がそんな……」
「もう君たちは世界の存亡の一端となっているのだよ」
マユリは苦しそうに言葉を継ぐ。
「実は、あの検査……二人をCOCOONに入れて記憶をえぐるような真似をしたのにも、理由があるのだよ。エナジーを安定させながら、あえて辛い記憶を少しずつ思い出させること。それが、エナジーの暴走を抑える唯一の方法かもしれないと考えたのだよ」
実験の過酷さよりもマユリの葛藤が舞の心に染み込み胸を締め付けた。
「ここ最近のミッションがほとんど罠だったのも、ティアのなりふり構わない行動のせいなのだよ。彼女は、君たちを過酷な状況に追い込むことで、チャクラを無理やり覚醒させようとしていた……。私はそれを少しでも止めたかったのさ」
「……辛い思いをさせて、本当に悪かったのだよ」
「結果的に結の覚醒を阻止出来なかったのも私の不甲斐なさがもたらしたのかもしれない」
マユリの告白は、絞り出すような声だった。
COCOONの中で二人が流した涙は、マユリの心の器にも、溢れるほど溜まっていたのだ。
「マユリ……。あなたこそ、私たちのために辛い思いを押し殺して、守ってくれていたのね……」
舞の目に涙が浮かぶ
「そう言ってくれるなら私はもっと頑張れるのだよ」
マキナが口を開く。
心地よい女性の優しい声だ。
「私は貴女を含め全ての人、私とは対極の存在である人間を守りたいのです。マユリは私の腕となり足となりその理念に賛同してくれました」
「私は人を愛したいのです。――いえ、愛してます。
貴女も結さんのことも愛してます。ずっとお二人のことはマユリから聞かされてお二人への愛が伝わりました」
「ゴホッゴホ!」
マユリが秘密を暴露された子供のように真っ赤になって大袈裟に咳払いして誤魔化そうとした。
「まぁそういう事なのだよ……」
「四柱計画――結がその一人として覚醒してしまった。きっとティアは私をまた覚醒させようとなにか仕掛けて来るよね?後の二人については何かわかっているの?」
「それが全くわからないのだよ……計画の全貌もマキナには知られないように、ただティアの頭の中にだけあるということなのだよ」
「私は結を元に戻したい……そしてまた3人でスイーツを食べて笑い合うような日常を生きたい。そのためには結に会わないと……どこにいるのかな?」
「結がいるところは見当がついているのだよ!!」
「本当?!」
舞が顔を上げた。
「ヴァンパイアの故郷とも言える場所ルーマニアのトランシルバニア地方――ブラン城!」
マユリがキーボードを叩くとモニターに荘厳な中世の城が映る。
ブラン城。14世紀にドイツ騎士団によりオスマントルコ帝国の侵略から守るために建てられたという。
舞はモニターに映し出されたブラン城を見ながら
潜入方法を脳内シミュレーションしてしまう自分に少し笑ってしまう
「根っからになっちゃってる。」
少し苦笑いが溢れる。
「待ってて……結!絶対に!……きっと連れて帰るからね……」
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