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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月
W Mission

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生贄

生贄〜お届けします。


三日月舞

W・MISSION〜生贄〜




 機関銃の「タタタタタタッ」という銃撃音を伴奏に、愛理がメロディを歌い出す。

 

 薬莢が床に落ちる乾いた音が、残酷なリズムを刻んでいた。

 

 観客はまだ誰も理解できていなかった。

 これが演出なのか、本物なのか――


 ただ先頭の列から順に機関銃で容赦なく撃たれていく。

 悲鳴が前列から後列へ伝播していく。

 突然ドームスタジアムの全てのゲートが閉ざされた。

 

 スタッフもバンドメンバーも楽器や道具の代わりにマシンガンを持っていた。

 観客四万人を贄とする儀式が始まった。

 

 ファンサービスのように観客席へ近づき、笑顔のまま銃口を向ける。

 

 阿鼻叫喚とは、まさにこの事だった。

 結は全く状況が飲み込めず、混乱し結の脳が現実を拒絶していた。

 

「ちょ……ちょっと待って」

「……何?なんなの?愛理……」

「愛理さん?何?え?や……やめて……やめて……」

 

 なんとか身体を動かして愛理の元までヨタヨタと歩き、歌っている愛理の肩を掴む。

 

「やめなさいってば!」

 

 愛理がゆっくりと振り返る。

 

 その目が黄色く濁り、虹彩が獣のように縦へ裂けていた。

 口には大きな牙が生え、爪が鋭利な刃物のようだった。


 愛理は――ヴァンパイアだった。

 

 結の喉から、魂が崩れそうな悲鳴が漏れた。

 

 しかし結の魂は崩れはしなかった。一筋の光である舞の顔を思い出し、エナジーを振り絞り腰からハンドガンを抜き愛理に向けて撃ちまくった。全て爪で弾かれてしまう。

 普通の弾が通用しない。

 

 結はすぐにハンドガンにエナジーを注ぎ込む。

 インジケーターに《EM》エナジーモードと表示される。

 キュインっと弾丸がエナジーになる。

「これなら!」

 撃った瞬間、スタッフシャツを着た男性が愛理の盾になった。

「いけない!」

 結は弾道を曲げ弾丸は壁にめり込んだ。


「ど、どうして?」

「あはは、みんな私のファンみたいよ」

 次々とスタッフが愛理の壁になる。

 

「どきなさい!みんなどいて!」

 その間にもバンドメンバーが観客を襲う。


 結は力の限り叫んだ!

 

「舞ぃぃぃぃ!」

 

 声が届かないことは分かっていたが、舞の名を呼ぶ事で結は自我を保っていた。

 

 スタッフの肉の壁が剥がれていき愛理が結に近づいていく。

 瞳の虹彩は黄色く縦長で美しい口角の口からは禍々しい牙が生えている。

 手はかぎ爪で触れたもの全てを切り裂きそうだった。

 その愛理が結の前で頭を垂れた

 

「結様――我々ヴァンパイアの王たるものよ」

 

 

 舞は目の前の立体映像を瞬きを忘れるように見ていた。いや、目を離すことが出来なかった。

 

 何が起きてるの?

 東京ドームも罠?

 南米も罠?

 どうなってるの?

 これはフェイク動画?

 身体は傷だらけで生存者はいるのか?

 集中力もかけていて気配を探ることも出来なかった。

 疑い始めるとキリがなかったそれに結も写っている。

 こちらの声は届かない。

 スピーカーから自分を呼ぶ結の悲痛な叫びが聞こえる。

 うわ言のように

「結!結!結!」と繰り返す。

 そしてはっきりと聞こえた。

 「結様――我々ヴァンパイアの王たるものよ」と――

 

 その言葉は、ドームの狂騒を突き抜けて、南米の密林にいる舞の鼓膜を汚すように響いた。

 

 結がヴァンパイアの王?

 

 舞の身体がガクガクと震えた。


「私は王なんかじゃないわ!」

 と叫ぶ結に、愛理が答える。

「そう今はまだ違う」

 

 タタタタタタタタタ!話しながらもマシンガンは生贄を求め続けていた。

 

「しかし今から結様!あなたを王にする儀式が始まるのよ!そのためにはこの大量の犠牲による生命エネルギーとの共鳴が必要なの」

 

 タタタタタタタタタッ!

 

「あの女にチャクラの開き方は教えてもらったようね

 さぁ儀式を始めるわよ」

 結はじっと愛理を見ている。

 

「誰が言うとおりにすると思うの?この酷い行為の報いは必ず受けさせる!」

 

 愛理は無視して両手を広げて呪文を唱える。

 東京ドーム全体に魔法陣のような模様が現れ大量の流された血が魔法陣を活性化させていく。

 

「まさかこのために??これだけの人を殺めたというの?」

 

「人間など一人殺しても、僅かな生命エネルギーしか得られない。そんな存在は我々には邪魔なのよ!!でもこれだけの魂の根源!お前たちはエナジーと呼んでいるな!これだけあれば開ける!さぁチャクラを開くのだ!」

 

 確かに休暇中に舞にヨガを教えてもらいチャクラの概念は理解している。

 しかしあれは単に体の背骨に沿って存在する七つのエネルギーの源を活性化して体調を整えるだけのもの。

 

 あの感覚は心地良さはあったとしても到底よく分からない王になるきっかけになるとは思わなかった。

 

「愛理!こんなことしても私は変わらないわよ!」

 

「本当に何も知らないのね!いいわ教えてあげる」

 

「人間には七つしかないチャクラだけどエネルギーは

――ムーラダーラ。

――スワディシュターナ。

――マニプーラ。

――アナーハタ。

――ヴィシュッダ。

――アージュニャー。

――サハスラーラ。

 と巡る度にプラスではなく《掛け算》で増大していく」

 

「そしてふたなりは普通の人間より一つ多くチャクラを持ってると言われているわ」

 

「もちろんふたなりすべてがそれを持ってるわけではない。

 選ばれた遺伝因子!結様、あなたのDNAが記憶しているヴァンパイア因子を持つものがあと一つ開くことが出来る禁忌のチャクラ!

――それが『牙のチャクラ』!!!」

 

読んでくださりありがとうございました。

次回更新は明日19時です。


そしてよろしければブックマークや評価など頂けると

私自身の励みになります。

どうかよろしくお願いいたします。

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