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フェアリー•レゾナンス〜ふたなりの私達が金色の竜となり世界を救う〜  作者: 三日月舞
W Mission

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30/62

ベーシスト

ベーシスト〜楽しんでくださいꈍ .̮ ꈍ


三日月舞

W・MISSION〜ベーシスト〜

 ひと足早く舞は南米のカンパニー組織の壊滅作戦のチームリーダーとして全力を尽くした。

 

 フェアリーは、世界各地で活動している結を除く8人全員が招集された。加えてサポートメンバー20人、総勢28人の部隊で拠点制圧作戦に挑む。

 もちろんゆかとエミリーも参加している。

 

 ブリーフィングでは初めて顔を合わせるフェアリーもいた。一番新米の舞がチームリーダーということで多少の軋轢はあるが、舞のこれまでの経歴を見ると全員何も言わなかった。

 

 

 結はマユリに呼ばれてLABOにいた。

「結と二人きりで会うなんて久しぶりなのだよ」

「そうかもしれないね」

「今回の任務の件は私ももちろん知っているよ!ティアの部屋で何があったのかも」

「ティア代表って何者なの?」

「何者なのだろうね?」

「マユリ言ってたじゃない?」

「なんの事だい?」

「前にふたなりとは?みたいな話した時にティアならもう少し知っているのかもって」

「もちろん彼女もふたなりなのだけど謎多き人なのだよ」

 何となくマユリの歯切れが悪かった。


「任務が要人警護だと聞いて、それで結にこれを持ってきたのだよ」

 結にケースを渡した。ゆっくりと開ける。

 ケースには二丁のホルスターに収められたハンドガンが入っていた。


 「この間の戦いでライフルも壊れてしまったし、今回はさすがにライフル担いでってわけにはいかないのだから、これなのだよ。さぁ握ってごらん」


 結はホルスターからハンドガンを抜いてグリップを握りしめた。

「エナジーを込めなくてもわかるわ。ありがとう、マユリ」

「私は結のことも守りたくてね」

 

 (声をひそめて)

  

「このミッションには気をつけるのだよ、何かしらの意思が介入している気がしてならないのだよ」

「何の意思?」

「それは分からない……とにかく気をつけてくれたまえよ。ところで保護対象者は一体誰なんだい?

一介の人間がフェアリーをSP代わりに使えるとは思え

ないのだよ」

「守秘義務はあるけどマユリになら」

「明日からの対象者は歌手……世界的歌姫、愛理さんよ」

 

「知らぬな」と言いながらキーボードを叩くと大画面にコンサートの様子が映し出された。5万を超える観客の前で歌うその姿と歌声はすごい迫力だった。

 マユリがモニターを見ながら呟く

「彼女もふたなりということなのかな?」

「そういう事になるだろうね」

「警護は24時間かい?」

「一応そうなってるけど、2日後のドームコンサート中をどうするかはまだ相手側芸能事務所と要相談って事ね」

 結はふぅーっと溜息をついた。


 

 結は姿見の前で身だしなみを整える

「こんなカッコ久しぶりだわ」

 折り目で紙が切れそうな、黒のスラックスとジャケット。ジャケットの左脇と腰にホルスターに収まった銃を装備していた。その他、警棒と予備弾薬。

 最低限の装備でフットワーク重視だった。

 

 

 顔合わせだった。

 部屋に入るとスタッフと共にあの世界的歌姫愛理が居た。

 年齢は正直全くわからなかった。

 公表データでは二十五歳ということだがそれ以上にもそれ以下にも見えた。近づき挨拶する。

「初めまして愛理さん。今日からしばらく警護させていただく、結、と言います」

 愛理は結の顔をじっと見つめて

「うふふ綺麗な人……嬉しいわ!よろしくお願いします」

 言うと手を握ってきた。暖かくふわっとしたオーラが全身から溢れ出していた。

「マネージャー補佐として身の回りの事もご一緒させていただきます」

「あはは、トイレはやめてよね」

 と笑った。

「今日はこれからコンサートの練習だからよろしく」

 まぁ初対面としては悪くない感触だった。


 

 舞は緊張でなかなか眠れなかった。疲労が溜まってそうな舞を見かねて、ゆかとエミリーが声をかけてくれた。

 「今回は舞、あなたの命令でみんな動くわ――もちろん私たちも、だからといってあなたが全てを背負う必要はないからもう少し肩の力抜きなさい」

 優しく肩に手を置いてくれた。


 舞は相談してみる。

「正直、私には荷が重いとも思ってるの、一番の新参者だし実績もみんなに比べたら……」

 

「大丈夫よ、舞の実力からすれば妥当な人選だと思う」

 

「舞?私たちは命を背負われる者じゃないわ!あなたが背負うのは自分の命!それが一番大事な事なのよ」

 

「そうね、全部終わったらまたみんなで祝勝会でもやりましょ」

 

 ゆかとエミリーがいればこんな頼りになる人はいないと思えた。すっと肩の力が抜けたような気がした。

 


 ――結は悩んでいた。

 愛理を守るにあたり、念の為にサポート班と協力して24時間体制はとっているがどうしてもコンサート中はそばにいることができない。

 

 そばにさえいれば結は飛んでくる弾丸すら撃ち落とすことも可能だが舞台袖にいるとしてもどうしても距離が開いてしまう。

 

 今はリハーサル中だから歌っているすぐ横に待機しているがさすがに本番はどうするか?すぐ横で歌姫愛理が歌っている。その歌声は、まるでエナジーそのものが音色に変換されたかのように、聴く者の細胞一つひとつを活性化させていくようだった。

 

 魂が揺さぶられる歌声に結は必ず守ると心に誓った。

 

 そんな時事故が起きた。

 ベーシストが足を踏み外し舞台から落ちて、腕と足を骨折してしまったのだ。

 今から別のベーシストなど見つかるはずもないとスタッフ全員が頭を抱えた。

 結はひらめきと共に提案した。

 

「あの、私がベーシストのフリをして愛理さんの近くで警護するというのはダメでしょうか?運指を合わせるぐらいなら上手く出来ます」

 スタッフが怒気を含んだ声で言う。

「マネ?真似じゃコンサートのお客さんは絶対騙せないよ……無理だな」

 

 その時愛理が口を出した。

「やってみようよ!結さんビジュいいし、一度合わせてみようよ!結さんのベース経験あるんでしょ?」

 

「はい。……実は私、ベースはずっとバンドで弾いていました。挑戦させてください。とにかく近くで警護したいの」

  

 リハーサルで結のベースを試すことになった。

 スタッフは半ば呆れていた。

 ど素人のバンドのレベルと一緒にされてもらっては困ると。

「曲は覚えてるんだろうね?」

 と剣のある言い方だった。

「はい、近くで全部聞きましたから」

 結は曲を一度聴いただけで頭の中に全てのパートの楽譜を描くことが出来る才能を持っていた。

  

 結は、重厚なエレクトリック•ベースを肩に抱えた。

 カチ、カチ、カチ――ドラムがスティックでカウントを刻む。


 ステージが一瞬息を止めたように静かになる。

 次の瞬間――

 結の指が弦を弾いた瞬間、凄まじい重低音がリハーサル会場を爆音で震わせた!


「――なっ!?!」

 

 スタッフは飲んでいた飲み物を口から吹きこぼし、持っていた楽譜の束を床にぶちまけた。

 

 地鳴りのようなベースラインがドーム全体を揺らし、ベースだけで一気にボルテージが上がっていく。

 

 愛理のボーカルもノってくる。

「結さん……最高じゃん!」

 

 スタッフ全員、結をベーシスト案に賛成した。

読んでくださりありがとうございました。

次回更新は明日19時です。


そしてよろしければブックマークや評価など頂けると

私自身の励みになります。

どうかよろしくお願いいたします。

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