モルディブ妖精
モルディブ妖精〜お楽しみくださいね
三日月
バカンス編〜モルディブ妖精〜
男達が洞窟の奥の広間で、カリンの腕を掴み乱暴に持ち上げていた。男の手がスカートを乱暴にめくった。
カリンの腹部から下腹部にかけて共鳴紋が露わになった。
「ヒャッハーほんとに共性だぜ!」
下卑た笑い声が洞窟に響いた。
「み!見ないで!」
カリンが羞恥と恐怖で顔を真っ赤にして必死にもがいた。
「やめろーお前たちなんか妖精さんが来て酷い目にしてもらうからなー」
「ハイハイわかった!わかった!妖精さんね、その妖精も共性だったらいいのによ〜」
ゲスな笑い声が響き渡った。
「妖精のことは知らねぇけど、もう一人のガキもそうだからさらっちまおうぜ!」
その言葉を聞いてカリンは
「モカには何もしない約束だったはずでしょ!だから私が——!」
「はあ?聞こえませーん」
「お前らー」
カリンが足をバタバタする。
足が男のスネに当たり、カッとした男がカリンの頬に平手打ちをした。
「いてえ!このガキ!」
――バチッ!!
頬が赤く腫れジンジンと痛みが広がり目から涙が溢れ……痛みで抵抗の意思も飛ばされた。
――そこに棒を持ったモカが飛び込んできた!
木の棒を構え、叫んだ。
「カリンを返せ!」
カリンは驚きとともに怒りのこもった声が出た
「モカ!!バカ!どうして来たのよ?」
「カリンこそバカだ!私があんな下手くそな書き置きで、はいそうですか。なんて言う訳ないだろ!?」
男達は笑いながら手を叩いて喜んだ。
「こりゃ最高だ!向こうからやってきたぜ」
といいモカの手を掴もうとする。
モカは木の棒で男の手を叩く!
バシッ!!
モカの力では、そんな棒で叩いたところでたいした痛手にはならないはずだった。
それなのに——棒が当たった腕がバチン!と弾けた。
「いてぇ」
男は腕を抑えうめいた。
まるで勇者の聖剣のようだった。
仲間がその様子を見て、呆れた声で言う。
「お前、なにやってるんだよ?そんな棒に!」
打たれた男は
「いや――わかんねぇ、けど、バチンって」
モカ自身も何が起こっているのか分からなかったが、棒を構えて立ち向かっていく。
洞窟の入口近く。
結が途中の露店で買ったY字型のスリングショットを撃っていた。
モカの振るう棒に合わせて次々と棒の打点に正確にパチンコを重ねていく。
モカの聖剣が面白いように男達を打った。
モカも何が起こってるのか分からないようだったが必死さがそんな疑問を吹き飛ばしていた。
カリンは目を輝かせて叫んだ。
「妖精さんだよ!モカに妖精さんがついてるんだ!妖精さん!助けてー」
カリンのその声を聞いて、結の手が止まった。
舞がすぐに飛び込める位置に居るのを確認して
結は静かにパチンコを下ろした。
(モカ……カリン……頑張れ……)
モカの聖剣が本当の木の棒に戻り、叩いても男になんのダメージも与えない。
「やっぱり普通の木の棒じゃねえか」
男達がモカの棒を取り上げてモカを蹴った。
吹っ飛ばされた。
それでも、すぐに立ち上がった。
「コノヤロウ!負けるもんか!カリン!!聞けぇ!!」
カリンの身体が、ビクン!と激しく震えた。
「カリン!違う!妖精なんて待ってても来ない!!戦うのは自分自身なんだよー妖精なんて助けてくれないんだ!立って!立って戦えーーーー」
カリンがガクガクと震えていた。
「た……戦う?」
モカが地面の石を拾い男達に投げつけた。
「こいつ!」
男がモカの髪を掴んで振り回して壁に投げつけた。
モカの髪がブチブチと切れ壁に激突した。
モカは壁に叩きつけられながらも、震える足で立ち上がる。
涙で視界が滲む。痛い。怖い。逃げ出したい。
しかしもっと痛くて怖いのはカリンが酷い目にあうことだった。
モカの魂が叫ぶ!
「私は戦う!こんなヤツらに屈したりしない!」
力一杯叫ぶ!
「カリン!!!来い!!!私と来い!!!!」
――カリンの顔から怯えの色が消え、震えが止まった。
カリンの瞳の奥に猛烈な意志の炎が宿る。
男の手を振り払い体当たりする。
「モカーーーーー!!」
カリンの魂が叫んだ。
結はモカとカリンの様子を見て静かに頷く。
——もう十分だ。あの子たちは二人で立ち上がった。
そして結は舞に袋を渡した。
「仕上げはこれでお願い」
とウインクした。
舞は袋の中身を見て
「う、、嘘でしょ?」
と頭を抱えた…………
モカとカリンがどれだけ暴れても男達には通用しなかった。
「ちくしょう〜」
「諦めるな!」
二人が隅に追い詰められ、最後の最後に手を繋いで祈りをこめる。
男たちの手が二人に届く寸前!
洞窟の入口が、突然真昼のように眩い光で輝いた。
逆光の中、羽のような影がふわりと揺れる。
全員の目が洞窟の入口に向く
「はぁあ?」
チンピラ共の口がだらしなく開いたままだった。
キラキラと光を放ちながら妖精が立っていた。
黄緑色のミニのワンピースに、プラスチックの羽。頭には黄緑色のウィッグに触覚が付いたカチューシャをしていた。
これも結が道中、露店で買った妖精さんのコスプレ衣装だった。
光の向こうに、影が凛と佇んでいた。羽ばたくように揺れるシルエットが、洞窟の壁面に幻想的な影を落とす。
舞は少し照れながら
「二人の勇気に誘われてやって来ました」
と裏声で喋った。
結が吹き出しそうになっているのを見てほっぺたを膨らませた。
フェアリーサインで(結!後で覚えときなさいよ)と伝えた。
舞は自分自身にエナジーを注ぎ体から燐光を放ち本当の妖精のようだった。
安っぽいプラスチックの羽根の飾りが、舞の放つ燐光を反射して、まるで本物の神域の翼のように見えた。
モカとカリンは目を輝かせていた。
妖精が手を振る度に手から光り輝く球が飛んでいく。
男達がバッタバタと倒れていった。
――舞の手の振りに合わせて、タイミング良く結が物陰からパチンコ玉にエナジーを込めて男達に当てていった。
「ひぃぃー」
舞にゴリラと言ったチンピラは特に念入りにぶちのめした。
あっという間に全員倒した。
舞はエナジーを強くして顔がバレないように光を強くした。
「モカ、カリンよく頑張りましたね!
これからも二人で支え合って生きていくのですよ。
そして本当に困った時は――わたくしの友達、舞さんと結さんを頼りなさい」
一際、明るく輝きを放ち、妖精が消えた。
ひらひらと、光の粒子と共に一枚の紙きれが地面へと落ちてきた。
二人がそっとそれを拾い上げて描いてある絵を見ると、顔を見合わせ、思わず吹き出した。
「この絵!酷い!!」
そこには、無惨なほど下手くそに描かれた妖精のイラストと、『舞&結』という名前、そして日本の国番号がついた電話番号が記されていた。
かつて自分たちが差し伸べられた手を、今度はこの二人へ――。
――翌日。
モルディブの美しい青空へ、白いラインを描いて飛び去っていく飛行機を、二人の少女は見上げていた。
「……ありがとう、お姉ちゃんたち」
モカとカリンはそっと手を繋ぎ、まっすぐに前を向いて立ち上がった。
その瞳に宿る光は、もう庇護を待つだけの弱き少女のものではない。
過酷な明日を見据え、自らの力で運命を切り拓く『立ち向かう者』の顔だった。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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