ツインビルエピローグ
エピローグ、短いですがお楽しみくださいm(_ _)m
三日月舞
ツインビル編エピローグ
たまらなく悲しい目をした〈ヴァンパイア〉がビルの屋上にじっと佇んでいた。
何をする訳でもなくただ悲しげにその髪が風に揺られていた。
ヴァンパイア化した結は、意識はあるが全てを真っ赤な衝動に意識を侵食され、自分を遠くから見ているような感覚しか残ってなかった。
たまらなく寂しい目をした〈鬼〉が向かいのビルの八十八階から外を見ていた。
夜が静まり風の吹く音だけが聞こえた。
鬼の中にも、舞の意識は残っていた。
しかしそれは、巨大な炎のような衝動に呑み込まれかけていた。
ビルとビルを隔てて、お互いを見つけた。
しばらく無言で見つめあっていた。
突然ヴァンパイアが背中の翼を広げる。
バサリ、バサリと飛び反対側のビルに向かって飛んだ。
八十八階の壊れた窓から室内に降り立ち、鬼の前に立った。
息を感じるほど近くで見つめ合う。
昨日まで一番近くでその瞳を見ていた。
鬼の瞳にヴァンパイアが映る。
ヴァンパイアの瞳に鬼が映る。
――舞?なの?
「ガルオーガ!!」
――結?なの?
「ウゴゴガガアーー」
――私を守るために?
「ギエーウオーガー」
――私が泣かないように?
「ガゴゴガゴカー」
――バカね……
「ガルルル」
――バカぁ……
「グオオオ」
――ありがとう……
「ゲオオオン」
――ありがとうね……
「グリルルル」
——愛してる……
突然――二人の首にかかっているネックレスが互いに共鳴し光り始めた。
眩い光が二人を包み込んで、鬼とヴァンパイアの、どす黒いエナジーをネックレスが吸収し光に変換していった。
竜巻のように荒れたエナジーが凪のように静かになっていく。
二人のネックレスがひび割れて、音を立てて崩れた。
ゆっくりと——本当にゆっくりと二人は人の姿に戻っていった。
結の翼が黒い粒子となり消えた。
舞の角が淡い光と共に額に吸い込まれた。
そこに一人の女性が近づいてきた。
その女性は何も言わず、何も迷わず、二人の間に入る。
二人を抱き寄せ震える声で
「御守り……効いた?」
とだけ聞いた。
今まで聞いた事のないようなマユリの優しい声だった。
「舞。結。おかえり」
三人の目から涙が溢れた。
いつまでも——いつまでも泣いていた……
結が先程まで佇んでいた、ビルの屋上からその三人の温かな光景を女が見ていた。
真っ赤な血の色のようなドレスを着た女がその光景を潤んだ目で三人を見つめていた。
やがて女の端正な口元が空に見える上弦の月よりも鋭く吊り上がった。
「やっと見つけた!我らの、気高き王よ!」
ニヤリと笑う。
女の唇の隙間から月光を反射して、鋭く伸びた二本の牙が白く光っていた。
読んでくださりありがとうございました。
次回更新は明日19時です。
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