賞金首
〜賞金首〜お楽しみくださいね
三日月
妖精狩り編〜賞金首〜
舞は収容所に侵入し捕らえられたと思われるふたなりを捜索した。
情報の確実性は薄いが諦めるわけにはいかなかった。
最奥の独房らしき部屋を覗いた瞬間、舞の目が見開いた。
「居た!」
うつ伏せでうずくまりピクリとも動かなかった。
舞はナイフを抜きドアのロックを切り、静かにドアを開け部屋に入りゆっくりと近づいた。
倒れている女性を観察する。同じ年齢ぐらいだろうか……
呼吸は?
舞が驚かせないように、静かに口元に手を当てようとした。
――その時
うつ伏せだった女性がゴロンと寝返りをうった。
舞を見るなり信じられないぐらい口角を吊り上げ笑う。
その手にはニードルガンを持っていて、振り向いた瞬間に舞の顔めがけて撃った。
舞の全細胞が脳の認知よりも早く反応した。
舞は思い切り身体を仰け反らせて避けた!
狙われたのが心臓なら避けられなかっただろう。
「くっ!」
自分の迂闊さに腹が立つ。
しかしこれ程、撃つ瞬間まで完全に殺気を隠していた敵には驚かされた。
(只者じゃないわね)
「ざーーーんねん!その綺麗な顔を穴だらけにしてあげようと思ったのに」
「趣味悪いわね、変態さん?!」
「変態!!このクイーン様に変態だと」
逆上し
「殺す!」
とニードルガンを構え撃った。
(姿さえ見えていればニードルガンは避けられる!接近して……)
ニードルガンに集中しながら部屋を飛び出た。
外に出た瞬間――炎が襲ってきた。
咄嗟に避けながら伏せた、チリチリと髪の焼けた匂いが鼻についた。
もう一人の敵が気配を消し、火炎放射器を構えて待ち伏せしていた。
「いいコンビネーションね」
「その余裕がいつまで続く?泣き叫んで助けを乞えばあっさりと殺してあげる!」
「妖精さんよ!クイーンは残酷だぜ!」
伏せた地面にニードルガンが撃ち込まれる!
「チッ」
「ジャック!トドメは私よ!」
火炎放射器とニードルガンの波状攻撃に防戦一方だった。
「なぜ私達を?!」
「邪魔なんだってさ」
ニードルガンのマガジンを装填しながら叫んだ。
その隙をカバーするように火炎放射器が唸りを上げて炎を噴射した。
「あんたらかなりの賞金首なのさ」
「勝手に!!」
舞がエナジースラッシュを撃った。
クイーンがギリギリでかわしながらスリルを楽しむ子供のように言った。
「いいよ!いいよ!あんたら最高だよ!滾るわぁー」
後ろから炎が――
エナジーを全開し防御フィールドを展開してなんとか防いだ。
次はない。
結も戦闘中だった。
舞は結を見た。
結もまた、舞を見た。
結と目が合う――
何も言わなくても通じた。
「舞!!」
「結!!」
二人が同時に地を蹴る。
舞はキングの進路へ。
結はクイーンとジャックの射線へ。
交差する一瞬で、互いの敵を入れ替えた。
砂煙が爆ぜ、陽炎の中に二人のフェアリーがそれぞれ別の戦闘領域へ飛び込んでいった。
舞と結が交差する瞬間を狙われ、キングの腕からグレネードが発射された。
二人の姿が砂塵で見えなくなる。
クイーンが叫ぶ
「砂塵で敵が目視出来ないじゃない!」
砂塵に向けてクイーンがニードルを撃ち、ジャックが炎を噴射させた。
刹那、砂塵の中からライフルの銃身が姿を現した。
「エナジーバースト!!」
数十発分のエナジー弾が、光の奔流となって銃口から解き放たれる。
ニードルも炎も呑み込みながらながら螺旋状に広がっていく!
クイーンはかろうじて横に避けようとしたが右手を吹き飛ばされた。
そのまま光が広がりジャックの全身が光の渦に包まれ言葉を発する間もなく蒸発した。
キングは砂塵からの攻撃に備えて防御を固めた。
しかし砂塵を切り裂き斬撃が飛び、キングのグレネードを装着した右腕が宙を舞い落ちた。
「エナジースラッシュ!」
舞の鋭い声が響く。
「思ったより柔らかいのね」
「俺の腕が!腕が……」
キングが逆上して大振りする。
刹那、舞は大振りの腕をかいくぐり、雷光のごとき速度でキングの懐へ潜り込む。
二振りのナイフが強化スーツを貫いた。
「あの世でもっといい技術者に出会うのね!」
交差する刃が、そのまま腹部を断ち切る。
装甲の内部機構が火花を散らして砕け散る。
身体のほとんどを機械化していたキングの身体が二つに別れ生命維持が止まった。
キングは自身の破滅を認識する暇もなく、驚愕の表情を浮かべたまま砂の上に崩れ落ちた。
灼熱の砂漠に金属の断末魔音だけが鈍く響き渡った。
「一人逃げたわね」
辺りを見渡す。クイーンは不気味なぐらいあっさりと逃げ出していた。
舞は結に視線を送った。
結の様子がおかしかった。
苦しそうに胸を押さえて、四つん這いでハァハァと息が荒かった。
舞が急いで駆け寄る。
「結!肩も撃たれてるじゃない!」
「はぁ、はぁ……エナジーバースト……連発は無理……エナジーが乱れて動けない。肩はマユリの戦闘服のおかげで痛みは軽減されてるわ」
舞もエナジースラッシュのせいでエナジーが乱れてはいた。
「本当に諸刃の剣ね」
マユリなら対処できるかしら?とあの笑顔を思い出した。不思議とエナジーが静まっていく。
◇
この様子をクイーンは憎悪の目で睨むようにはるか遠方から見ていた。
目が血走っていた。
腕の付け根をベルトで締め上げ、必死に止血している。
痛みで、美しかった顔が醜く歪んでいた。
「私の腕をよくも――よくも……」
脳内であの結の愛くるしい顔にニードルを打ち込み、踏みつけ殺す!その妄想が痛みをやわらげる。
「ふふふっ!こんなに簡単な弱点があった!!思い知らせてあげるわ!三人の仇ー!」
——いや、違う。もうクイーンの脳裏には死んだ仲間のことなど微塵も残ってなかった。
「いや!私の……私の仇!!」
その粘液質な思念が熱砂の風に乗って舞と結に絡みつく……
◇
「それにしても私達が賞金首って」
「やってられないわね」
結の顔に迷いが見える
「また人を殺した……」
そっと結の肩を抱き寄せる。
「彼等は傭兵……ここで殺さないと、もっとたくさんの人が殺される。私たちが連鎖を止めたのよ」
「そうね……でもこの痛みまで無くしたくはないわ」
「うん、それでいいと思う」
「私もまだ死にたくないしね」
二人の間に短い沈黙が落ちた。
やがて舞が、重い空気を振り払うように
地面に転がっているキングの腕からグレネードガンを拾い調べる。
グリップに『カンパニー』の刻印があった。
「結、見て!あのカンパニーが私達を《賞金首》として狙ってきたみたいよ」
「私達の顔写真でWANTEDって紙が出回ってるのかしら?」
「それも悪くないわね、全部蹴散らすのみよ!」
舞がグレネードガンをポイっと捨てた。
砂漠の砂が落下音を飲み込んだ。
「結、帰ろう」
「うん」
舞は深くため息をつき、灼熱の太陽を恨めしそうに見た。
「もう暑いのはうんざりだわ」
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次回更新は明日19時です




